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「賃上げETF」は世界の笑い物か?

日本銀行が近く「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業に投資するETF」の購入を開始するそうです。

巷では、すでに「賃上げETF」というあだ名がついているようで、そこからも日本のマスコミでのウケが悪いことが察せられます。

でも僕は、「ま、別にいいんじゃない?」という意見を持っています。

説明します。

今回、企画されているタイプのETFは、アメリカではスマート・ベータ型ETFと呼ばれています。なおETFとは上場型投信を指します。

普通、ETFは日経平均とかS&P500指数のような株価指数をなぞるように設計されています。つまりインデックス運用、ないしはパッシブ運用です。

しかしスマート・ベータ型ETFは、かならずしも最もポピュラーな株価指数に連動しません。

むしろ独自の基準により、わざとポートフォリオにティルト(傾斜)をかけるわけです。今回企画されているのは「設備・人材投資に積極的に取り組んでいる企業」という切り口で、ティルトをかけます。

実は、このようにポートフォリオにファンドマネージャー独自の「色を付ける」行為は、昔からアクティブ型のファンドマネージャーがやってきたことで、別に新しい試みではありません。いや、ある意味、古風なほどトラディショナルであるとすら言えます。

このようなスマート・ベータ型ETFは、近年、マーケットシェアを伸ばしています。現在、アメリカには400を超えるスマート・ベータ型ETFが出回っており、運用資産は47兆円にものぼっています。これはETF全体の残高の21%に相当します。

2009年にはスマート・ベータ型ETFがETF全体に占める割合は12%だったので、かなり急ピッチに普及していることがわかります。

この「スマート・ベータ」という名前を思いついたのはコンサル会社のタワーズ・ワトソンであり、これはマーケティング上の快挙だったと思います。

なぜならアクティブ運用の大半がパッシブ運用に負けることは昔からよく知られた事実であり、その「アクティブ」というダーティー・ワードを使うことを避け、「スマート」という、いかにも利発そうな言葉に置き換え、「不都合な事実」をウヤムヤにしたわけですから。

これは言ってみればファッション業界が太めのモデルさんを「カーヴィなモデル」と呼ぶのと似ているわけで……ボカァ大賛成だなぁ、こういう地道な努力は(笑)

プラス・サイズのモデルさんがはいているパンティーを、普通のモデルさんがはくとブカブカで、ずり落ちるのと同じように、この「賃上げETF」を一般の投資家が買うと「衣服の誤動作(wardrobe malfunction)」を起こしかねません。

注目されるのは、日銀の呼びかけに応えて「賃上げETF」を設計する日本の投信会社が、どんなフィーをチャージしてくるか? です。

因みに米国の一般のETFの平均費用比率は0.30%、スマート・ベータ型ETFの平均費用比率は0.34%です。

これらは従来型の投資信託の費用比率(米国では0.66%)より遥かに安いです。

つまりこの手のスマート・ベータ型ETFが日本でも普及しはじめると、それはアクティブ運用のマネージャー達にとって歓迎せざる運用フィーの価格破壊につながる可能性があるということです。もしそうなれば、これは一般投資家目線では歓迎すべきコトです。

折から日銀はマイナス金利の導入が「逆噴射」になってしまったばかりであり、手詰まり感は否めません。

それならいっそのことバーナンキ前議長がかつて主張したように「トマトケチャップだろうが何だろうが、中央銀行が直接、買えばいい」わけです。

そもそも日銀は勝手に輪転機を回すことが出来るので、フツーの機関投資家のようなフィデューシアリー・デューティー(受託者責任)は問われません。

だから「パフォがどうだ」とか、そういう面倒臭い議論は、全くスルーしてオッケーなのです。

大事なことは、救世主の登場を、今かいまか? と待ち望んでいる国民に対し、「いま、そちらへ向かってマス!」という、ソバ屋の出前的な慈愛に満ちた受け答えをすることで、日本経済を元気にするぅ! という点にあるわけです。

それにつけても惜しまれるのは「なぜ日銀はこんな重大発表をする前に、電通のようなコミュニケーションのプロを起用しなかったのか?」ということです。

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