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中国の成長鈍化 改革の試練これからだ

 中国の経済成長が昨年、一段と鈍化した。国内総生産(GDP)の伸びが実質6・9%というのは、天安門事件の翌年、1990年以来の低さである。

     とはいえ、開発、輸出主導の高い成長をいつまでも持続できるものではない。経済の発展段階が成熟期に向かうにつれて、成長が鈍化するのは、むしろ自然なことといえる。

     課題は、経済構造の転換をスムーズに成し遂げられるか、だ。

     中国政府が発表した統計によれば、産業に占めるサービスの比率が今回初めて50%を超えた。他方、製造業は40・5%まで低下している。依然として過剰設備を抱えた鉄鋼など素材産業で、生産の減少が続いていることを思えば、驚きはない。

     消費主導の経済成長へと移行する上で必然の過程だ。今後もこの流れを着実なものへと変える努力が大事である。消費者のニーズにかなったモノやサービスが、民間企業から次々と提供されるよう、規制緩和や行政手続きの迅速化などを進めていかねばならない。

     気がかりなのは、歯止めがかかりそうにない資本の国外流出と人民元安だ。かつて高い利回りを求め流入していた投機資金が、米国の利上げも相まって国外へ退避を続けている。中国人民銀行の利上げで対抗しようにも、利上げには国内の景気を冷ます作用がある。

     逆に、景気を刺激しようと利下げをすれば、一段の人民元安、資本逃避を招きかねない。どちらの方向にも金融政策が動きづらい状況だ。

     そんな中、人民元の国際化、金融市場の自由化も着実に実行していかねばならない。だが、国家への信用が低いまま、通貨や市場の改革を急げば、大きな混乱を招く恐れがある。

     中国共産党は、2020年までの10年間で所得を倍増させる目標を掲げている。体制維持を最優先するあまり、成長目標達成に固執して、旧来型の景気刺激策に走るようではいけない。必要な改革が遅れるばかりか、肝心の信用を失うことになるからだ。

     さらに、統計の信頼性向上を含め、積極的な情報開示やルールに基づく統治など、市場や国外からの信用を高める努力も不可欠である。

     中国主導で設立された国際金融機関、アジアインフラ投資銀行(AIIB)は一つの試金石となるだろう。自国の利益最優先でAIIBを利用するようなことがあれば、国際的な信用に傷が付く中国こそ最も打撃を受けることを忘れてはならない。

     経済構造を転換し、安定した豊かな大国になるための試練はこれからである。日本も、中国の成長鈍化を前提にした意識の変革が必要だ。

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