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 東京電力福島第一原発事故後、原発から出る使用済み核燃料に対して立地自治体が独自の課税を強め、原発や関連施設がある全国の8市町村に2017年度以降、少なくとも毎年計約29億円が入るようになることが朝日新聞の調べで分かった。この税金分は大手電力会社の電気料金に影響する。

 原発の使用済み核燃料を再処理して再び燃料に使う核燃料サイクルが進まない中、再処理できずにたまり続ける使用済み燃料を新たな収入源にする動きが広がったことになる。原発再稼働も進まず、減少する電源三法交付金などの穴埋めの意味が強く、新たな原発マネー依存との指摘もある。

 使用済み燃料への課税では、立地の市町村が課す場合と、立地の道県が課税して税収の一部を立地市町村に交付する場合がある。いずれも自治体が条例をつくって課す法定外税。設置には総務相の同意が必要だが、不同意となったのはこれまで1件だけだ。

 使用済み核燃料税は、使用済み燃料の重量などにかかる税金で、03年、東電柏崎刈羽原発がある新潟県柏崎市と九州電力川内原発がある鹿児島県薩摩川内市が始めた。税収は14年度実績でそれぞれ5億7千万円、3億9千万円だった。

 朝日新聞は、原発や再処理施設が立地する全12道県、全20市町村の検討状況を調べた(福島県内を除く)。

 九電玄海原発がある佐賀県玄海町の岸本英雄町長は3月10日、使用済み核燃料税を17年度から導入することを町議会で表明した。九電には1月に正式に伝えており、税収は年間約4億円を想定しているという。東北電力女川原発がある宮城県女川町は取材に「検討中」と答えた。

 茨城県は14年4月、日本原子力研究開発機構の再処理施設(茨城県東海村)に関し、使用済み燃料の保管への課税を始めた。年間約6千万円を東海村に交付する。

 青森県は12年4月、日本原燃再処理工場(青森県六ケ所村)などへの課税で得た一部を立地周辺の市町村に配る交付金制度を始めた。青森県大間町、むつ市、東通村、六ケ所村の立地4市町村へは最大で計10億円だったが、14年4月には計15億円に引き上げた。

 全国最多の原発11基を抱える福井県の西川一誠知事は今年3月11日、11月から使用済み燃料への課税を始める方針を表明した。