【温泉好き大歓喜】別府温泉の魅力を全国民に伝えるついでに別府市長に文句言って来た
3月某日
それは、日課の「椅子舐め」の最中に起こった……
「ぺちょん!ぴちょぴちょぺっちょんぴちょぺちょん!ちょちょりちょりろりろん!ブボッ!ブボボボッ!」
「オラーーー―!このクソハゲーーー!椅子舐めてる場合かコラーーーー!」

「なんなんですか急に……」
「うるさい!コレを見んかいボケカスー!」
「別府市の観光動態……?」
「観光動態、つまり別府市の観光客とか宿泊者の増減がまとめられたレポートがコレじゃい!」
「おお。なるほど。これを見ると別府の観光客はすこーし増えてるみたいですね。温泉メインの観光地って一時期は落ち込みが激しかったみたいですけど良かったじゃないですか」
「良いことあるかこの屁こき豚がーーーー!殺すぞーーーー!」
「もう……、なんなんですか……」
「あのね、その1%増とか2%増とか、そんなもん全然足りてないのよ。ぜーーーんぜん足りてない!」
「でも、増えてるんでしょ?」
「カァーッ!なーんもわかってない!あのね、山口くん。君は温泉が好きかね?」
「はい。好きですよ。温泉嫌いな日本人なんてあんまり居ないと思いますけど」
「じゃあ聞くけど、別府には行った事ある?」
「いや、別府は無いですね」
「別府に行った事無いやつが温泉好きを名乗るなーーーーーーーーーー!」
「理不尽すぎる」
「僕ね、温泉大好きだし温泉神を名乗ってるレベルじゃないですか。だから【実は僕も温泉好きで……】みたいな事言って来る人がちょくちょく居るんやけど、その時に僕は必ず聞いてるんよ。【別府に行った事はありますか?】って。相手が【いや、無いです】って言うたらもう温泉の話はそこで打ち切りや。別府に行った事無いくせに温泉好きを自称するやつとは口もききたくないし貰った名刺もすぐ捨てる」
「極端すぎる。別府の温泉ってそんなに良いんですか?」
「おっ。良い質問やね。じゃあ今から教えるから耳かっぽじって聞いてね。ここから本題に入るから」
「本題に入るまでが異常に長いな」
「まずね山口くん。地球上で一番、温泉が湧いてる地域ってどこだと思いますか」
「全然検討もつかない。やっぱり火山の国だし日本のどこかじゃないですか?」
「あのね、正解はアメリカのイエローストーン国立公園なんよ」
「ふむ。間欠泉とかばんばん噴き出してますもんねあそこ」
イエローストーン国立公園
「ただね、イエローストーン国立公園って四国くらいの大きさがあるし、温泉が湧いてるとは言え整備されてない大自然やから「あちこちで温泉を楽しめる!」みたいな状態ではないんよね。立ち入り禁止区域も多いし。温泉は湧いてるけど、アレは入るための温泉では無いっちゅうこっちゃ」
「なるほど」
「でね、2位が別府市なんよ。地球上ではイエローストーン国立公園に次いで別府が2位。もちろん別府の温泉は普通に入れるように整備されてるから【入って楽しめる温泉】っていう意味では実質、別府が地球上で一番温泉が湧いてる地域ってことなんよ。何せ日本にある源泉の内10分の1が別府に集中しとる。ちなみに別府市って、大田区と世田谷区を合わせたくらいの面積しかないからね。その狭い街に日本全国の10分の1の温泉が集中しとるんよ?異常やろ?」
「ほほう。温泉の量では別府が地球一であると」
「そうそう。ちなみに2位の湯布院も別府の隣にあるからね。更に別府ってね、量だけじゃなくて質もすごいんよ」
「泉質も良い、と?」
「泉質ももちろん良いんやけど、圧倒的なのはそのバラエティの豊かさやね。あのね、温泉って基本的には同じような地域には同じような温泉が湧くんよ。例えば東京23区って意外にも温泉がたくさんある地域でもあって、街の銭湯の中には天然温泉使ってる所も多いんやけど、その多くは黒湯って言って黒いお湯なんよね。昔から東京は黒湯で有名やねん。もしくは古い海水のしょっぱい温泉ね。だいたいはどちらかなんよ」
「ふむふむ」
「他にも、草津温泉にもいくつか源泉はあるけど、どれも成分は似ていて酸性の白く濁ったお湯やし、箱根やとアルカリ性の透明なお湯や。有馬温泉には金泉と銀泉っていう二種類のお湯があるけど、つまり、基本的には同じ地域では同じような泉質の温泉になるんよ。でも、ちょっと考えてみて欲しいねん。別府には地獄めぐりがあるよね?」
別府名物、血の池地獄
「あれって要は温泉やねん。例えば血の池地獄は赤い色の温泉で、海地獄は青色の温泉って感じでね。白池地獄っていう白い温泉もあるわけよ。歩いて行ける距離感やのに、それぞれの温泉の色が違う、つまりは違う泉質の温泉がボコボコ湧いてるわけ。要するに、それだけ別府の温泉は種類が豊富、バラエティに富んでて、別府にさえ行けば色んな種類の温泉が楽しめるっちゅう寸法や!温泉分析法指針で定義されている10種類の温泉の内、大分県には8種類、別府市には7種類もの温泉があるんよ」
「でも、そんなに色んな種類の温泉に入ったら効果が薄れちゃうんじゃ無いですか?」
「このクソハゲはほんまに何もわかってないな……。女性が温泉入る時って、お肌をすべすべにしたいってまあ思うやんか。でね、その【お肌をすべすべにする】っていう温泉の効果って、ふたつのアプローチがあるんよ」
「ひとつめは、角質を溶かすっちゅうやつや。酸性の草津温泉なんかはこのタイプやね。角質を溶かす事で皮膚を滑らかにしよるんよ」
「でね、ふたつめが皮膚をコーティングするっていうやつ。メタケイ酸が代表的な成分やけど、例えばこのメタケイ酸は皮膚の表面にくっついて保湿してくれるんよ。栃木県の鹿の湯なんかが有名やね」
「つまり……」
「この二つの効果を合わせる、つまり、角質を溶かす温泉に入ってから、皮膚をコーティングする温泉に入るとより美肌効果が増すって事は猿でもわかるやろ?大丈夫?義務教育ちゃんと終えた?飛行機からジャングルに落ちてトラに育てられたとかじゃないよね?」
「なるほど。全体的に話が長すぎる気がしますけど、それを聞くとめちゃくちゃ別府に行きたくなってきました」
「更には、温泉の量も種類も豊富な上に入浴法まで豊富っていうね。全国的にも泥湯は珍しいし、砂湯もあちこちにあって蒸し湯もある、と。温泉がたくさん湧いてて、泉質も豊富で、入浴方法も豊富って地域、別府の他にはないからね」
「つまり、それだけすごい別府の温泉を抱えてるのに、観光客がちょっと増えただけで喜んでるってどういうことだ、って怒ってるんですね」
「そうそう。アピールが全然足りてない!こういう話って東京の人も大阪の人もあちこちで話したけどみんな知らんからね、。こりゃあもう別府まで行ってガツンと言わないかんと思うわけよ。PRが全然足りてない、と。よし、電話してみよ」
「あ、もしもし?私、フリーライターをしておりますヨッピーと申しますが……。ええ。ちょっと市長に一言物申したくてですね……」
「はい。別府市長とアポが取れたのでこれから別府に行きます」
「マジかよ」









