韓国の行政の中で最も退行的なケースが「道路名住所」ではないかと思う。2011年に公示されて以来、膨大な宣伝費と公務員を投入したものの、いまだ混乱の渦中にある。町役場を含む行政機関の書類の住所欄は、「地番住所」(旧住所体系、日本と同様の表記)で書くと公務員が道路名に切り替えて処理しているのが実情だ。登記簿や建築物台帳などは道路名と地番を並行して使う。道路名住所の体系が「科学的」なのかもしれないが、韓国の道路体系そのものが科学的ではないため、むしろ複雑になった。例えばソウル市内を走る南部循環路は、江西区金浦空港から松坡区芳夷洞まで36キロにわたっており、陽川、九老、衿川、冠岳、瑞草、江南区を経て実に9552本の道路とつながっている。「瑞草区方背洞」を「瑞草区南部循環路」と表記するため、区と洞のつながりまで壊してしまった。それに道路名住所は長くて複雑だ。「ソウル市永登浦区楊坪洞5街 ○○番地 ○○アパート ○○棟 ○○○号」と表記していたものを、「ソウル市永登浦区楊坪路22ラ道1、○○棟 ○○号(楊坪洞5街、○○アパート)」と書く。最も重要な認識単位であるアパートの名前をかっこの中に入れてしまった。
政府も改善策を検討中だという。しかし、ありとあらゆる理由からその場しのぎの改善策にとどまるなら、混乱と不便さだけが増える恐れが大きい。道路名住所を廃棄して地番住所に戻すのが最善策だ。