堀江貴文氏を弁護する
本日、数名の知人から、堀江貴文氏が私について「バカか」とコメントしていることについて懸念するお知らせをいただきました。詳細がわかりませんが、こちらの記事に書かれていることのようです。
当ブログでも昨年11月30日の記事で言及しておりますとおり、私はライブドア事件におきまして、
堀江氏は無罪であるか、そうでないとしても実刑判決は不当である
とする意見書を最高裁判所に提出しています。
弁護団の推薦によるものではありますが、私が意見書を提出することについてご本人は了承された旨、うかがっております。
この見解は現在でも変わっておらず、ちょうど、この4月8日に発売される予定の岩波「世界」5月号におきましても、同趣旨の意見を論説の中で発表させていただいているところです。
つまり堀江氏は、ご自身の刑事裁判で最高裁判所への意見書の提出を依頼した相手を「バカか」と評したのです。
しかし、このことが意図的であったとは考えにくいように思います。
堀江氏は、上告審での意見書の執筆者と、今般の評価の対象者とが同一人物であることを認識していなかった可能性があるのではないでしょうか。
自身が刑事裁判の当事者になる機会は珍しいです。
そして、堀江氏の記憶力が悪いということはないはずです。
それにもかかわらず、人物の同一性に気付かなかったということは、学術研究のあり方や大学の最新の状況といった問題について堀江氏が特別に詳しい知見や問題意識を持っていたわけではないことを示しているように推測します。
当該ツイートは、必ずしも周到な事実関係の確認や検討に基づいたものではない、カジュアルな書き込みだったのではないでしょうか。
そうだとすると、このこと(いわば「うっかりミス」)について堀江氏を非難するのは生産的でないと思います。
それよりも、これを機に、従来ほとんど知られていなかったことが判明した、2004年以降の国立大学の状況や、学術研究における国際競争について、広く社会の関心を集めることが望ましいと考えます。
何しろ、大学法人を相手に裁判を起こしてもほとんど報道されてきませんでしたので、良いチャンスです。
残念ながら、堀江氏のツイートを紹介した記事は、関心を集めた点はよかったのですが、ミスリーディングなところがあります。
これをそのまま鵜呑みにしている方がいらっしゃいますが、この記事は、あくまで執筆者の評価を述べたものであって、堀江氏の見解を正しく伝えるものでもありませんし、私の立場についても誤解を与えるおそれのある部分を含んでいます。
たとえば、記事の中には堀江氏が
「学者というものは理屈をこねくり回しているだけの頭でっかちな連中で実際に行動を起こして社会を良くすることができない」と考えている
とする記述がありますが、これは堀江氏自身の言葉ではないのではないでしょうか。
「 」付きだと引用と紛らわしくなるように思います。
また、記事のタイトルは「給与明細を公開して年収アップを要求」となっていますが、私の給与明細の公開は、給与の引上げを求めて行われたものではありません。
私のブログ中の賃金訴訟に関する記事を確認していただければわかりますが、給与明細の公開は、賃金訴訟の過程で行われたものです。
この賃金訴訟における請求は、簡単に言うと、
東日本大震災復興財源確保のために必要だとして60数万円の賃金を一方的にカットされたが、嘘だったから返してほしい。
というものです。
(実際には被災地と関係のないところに財源が流れていた。仮に本当に被災地復興のためだったとしても、京大には200億円の定期預金を始め給与をカットせずにその資金を拠出できる財源が蓄積していた。)
理由もなく自分の財産を数十万円も取られたら、誰だって返してほしいと思いませんか?
犯罪の被害に遭ったも同然です。
ブログの新しい書き込みの中では、私は確かに給与の引上げを求めていますが、その理由は、現に東大・京大からの人材流出が顕著に起こっているのを食い止める必要があると考えるためです。教育環境を最も重視している私自身は他大学に転出するつもりはありません。
(ちなみに、私は貧乏性なのでお金をあまり使いません。写真に映っている着物は5000円です。)
幸い、今月、産経デジタルさんから、「iRONNA」というサイトでこの件について意見を発表する機会を与えていただきました。
詳しい情報はそちらで紹介させていただきたいと思っていますので、公表されましたら、ぜひご覧いただきたく、お願いします。
なお、堀江氏個人については、思想・信条や政治・経済的立場が私と相当に異なるのだろうと思っていますが、「出る杭は打たれる」という日本の悪い風習と闘い、バッシングを跳ね返して活躍なさっているところは、そうした立場の相違にかかわらず尊敬されるべきだと考えます。
それから、本件について心配や応援の言葉をくださった方々、どうもありがとうございました
