バラ色にみえた台湾・鴻海(ホンハイ)精密工業によるシャープ支援策は、交渉終盤の1カ月あまりで色あせた。官民ファンド、産業革新機構とのシャープ争奪戦を制した鴻海は、次々と条件変更を要求。出資額を約1千億円引き下げ、シャープ解体の選択肢も残した。シャープの高橋興三社長は「出資金を下げるなど理屈に合わないようなことがあれば提携しない」と強気だったが、押し切られた。
鴻海は当初、4890億円の出資を提案していた。3千億円規模を提示した革新機構に勝つためだ。両者の競争はシャープを優位な立場に祭り上げ、高橋氏に「『(金額を)つり上げたろか』という気持ちはまったくない」と釈明させるほどだった。
流れを変えたのが、シャープが取引先と訴訟になり負けた場合などに発生し得る「偶発債務」の存在だった。シャープが鴻海側に100項目、計3千億円規模のリストを提出したのは2月24日。鴻海の郭台銘会長は不信感をあらわにしたという。
ただ高橋氏はリスト提出を知らされていなかったといい、「シャープ内の革新機構支持者が鴻海案をつぶすために仕掛けたとの憶測が出た」(関係者)。
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