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ニューズ&コメンタリー
(2016/04/04)
▽この記事は2016年4月4日の朝日新聞に掲載された原稿に加筆したものです。
▽関連リンク: 国際調査報道ジャーナリスト連合のウェブサイト
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タックスヘイブンは、法人税や所得税の税率がゼロか極めて低い国や地域。低税率や秘密保持を売りにして、国外資本の会社の設立を促し、資金を呼び込んでいる。脱税や資金洗浄(マネーロンダリング)の温床になっているとの批判も根強い。近年、多国籍企業や富裕層がタックスヘイブンを使って合法的に租税を回避することで各国財政が悪化しているとして問題化。乱用を防ぐためのルール作りが国際社会で検討されている。
今回ICIJが入手したのは、タックスヘイブンの会社設立などを手がけるパナマの法律事務所「Mossack Fonseca & Co.」の内部のメールやワード文書、HTML、PDFなどの電子ファイル。その数は1150万で、ファイルサイズは2.6テラバイトに上り、これほどの流出は過去に例がない。1977年から2015年にかけて作られたもので、バージン諸島やインド洋のセーシェル、英仏海峡のガーンジーなど以下の通り各地のタックスヘイブンにある会社など法人の株主や役員などの情報が含まれている。
そのほとんどはこれまで秘匿されていた情報だ。ICIJは、提携先の朝日新聞、共同通信など、76カ国の百以上の報道機関、400人近くのジャーナリストとともに、これらのファイルの分析を進めてきた。
ICIJのまとめによれば、 10カ国の現旧指導者12人を含む公職者140人の関係会社が見つかった。
ファイルの中にあった文書によれば、ウクライナのポロシェンコ大統領は2014年8月にバージン諸島に会社を設立していた。その半年前の同年2月、ウクライナでは、欧州統合を支持し、政権の汚職に反対する市民による大規模デモで親ロシア派の政権が倒れた。親欧州派のポロシェンコ氏は同年5月の選挙で当選し、政権を発足させた。この直後から同国東部で政府軍と親ロシア派武装勢力の紛争が激化し、同年8月には、ロシア軍がウクライナ領内に侵入したとの報道が流れた。そうした混迷が極まる中での会社設立だったが、ポロシェンコ氏の広報担当者は取材に対し、「いかなる政治的、軍事的な出来事とも無関係だ」と説明した。
アイスランドのグンロイグソン首相は夫婦でバージン諸島の「ウィントリス(Wintris Inc.)」という名前の会社の株主に名を連ねていた。ICIJの調べによれば、ウィントリスはアイスランドの3つの大手銀行の債券を保有していたが、2008年秋の金融危機でそれらの銀行は破綻した。グンロイグソン氏は2009年に国会議員になった後、ウィントリスの持ち分を妻に譲り、その後の2013年5月に首相になった。その後、政府は銀行の債務処理に関わった。グンロイグソン首相は取材に「財産を隠したことはない」と述べた。
ICIJによれば、アルゼンチンのマクリ大統領はバハマの会社の役員になっていた。同大統領の広報担当官は取材に対し、それは家族のビジネスの一部であって、個人としては権利を持っていない、と説明した。
ICIJが注目するのは、ロシアのプーチン大統領の友人でチェロ奏者のセルゲイ・ラルドゥーギン氏。同氏はタックスヘイブンの複数の会社の所有者となっており、これら会社に資金が流れ込んでいた。プーチン大統領の周辺で少なくとも20億ドル(2千億円余)が、タックスヘイブンの会社や銀行を行き来したとICIJは結論づけている。
クレムリンの広報担当者はICIJの質問に答えず、ICIJの質問の一部を公表。プーチン氏への「攻撃」を準備しているとしてICIJを非難する声明を出した。
プーチン大統領とその親交者につい
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