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オバマ一般教書 「変化の時」に米国の力を

 「世界の警察官」にはならずに米国の安全をどう守り、いかに国際社会を導くか。オバマ米大統領の最後の一般教書演説は、そんな問題提起から始まった。「誰が次の大統領になろうとも答えるべき問題」の一つとして、それを挙げたのである。

     弱腰、中途半端、紛争からの後ずさり。オバマ政権の外交・防衛政策にはそんな批判がつきまとう。これに対して大統領は軍事力を賢く使うこと、ベトナムやイラクのような泥沼へ踏み込まない「より賢明な取り組み」を強調し、外国への支援は「慈善事業」ではなく、米国の安全に役立てるためだと言い切った。

     「脱・世界の警察官」はオバマ政権に特徴的な路線であり、今回の演説はその路線をより詳しく説明したといえる。オバマ大統領は米国の強大な軍事力を強調し、紛争介入に臆病になる理由はないとしながら、ある問題に米単独で対処するか関係国との共同対処が有益か、選別的に判断する必要性を説いた。

     そんな慎重さが間違っているとは言えない。何もかも頼られては米国の身が持つまい。ブッシュ前政権の「武断路線」を反面教師としたのか、オバマ政権はキューバとの国交回復で冷戦の名残に終止符を打ち、核合意を通じてイランとも関係改善を図っている。その柔軟な外交路線は評価したい。

     だが、演説は、水爆と称する北朝鮮の核実験やサウジアラビアとイランの断交など、最近の重大事件に言及せず、難問を避けた印象が否めなかった。大統領が言うように「途方もない変化」の時代だ。米国の関与が不可欠な問題は多いのである。

     テロへの対処でも疑問が残る。オバマ大統領は過激派組織の「イスラム国」(IS)やアルカイダを「米国民への直接の脅威」とみなし、宗教的な組織というより「殺人者、狂信者」の集団として根絶すべきだと述べた。だが、強い言葉とは裏腹に、どのように壊滅を図るのか、具体的な展望は開けなかった。

     演説は「就任7年間の総括」の色彩が強く、米経済の着実な回復や医療保険制度改革(オバマケア)の導入、気候変動への取り組みなど自画自賛が目立った。内政面では確かに成果が少なくないと言えよう。

     だが、ノーベル平和賞をもたらした「核兵器のない世界」構想、有名な「イスラムとの和解」演説で力説した中東和平に触れなかったのは物足りない。だから軽視しているとも言えないが、核軍縮を担う米露関係の悪化に加え、中東は荒れるに任せる状態だ。世界の前途に不安を覚えざるを得ない。大統領任期はあと1年。「米国の力」でよりよい世界にすべく最後まで努力してほしい。

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