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【社説】

秘密法と国会 制度の欠陥が目に余る

 特定秘密保護法がどう運用されているか。これをチェックする衆参両院の情報監視審査会が初の報告書を出した。そこから浮かび上がるのは、十分な監視機能が果たせていない実態だといえよう。

 「特定秘密指定管理簿の記載事項の一部を不開示としているが、(中略)開示した方が、政府の取り組みや特定秘密の指定や運用がきちんとなされていることが確認できると考えるが、どうか」

 衆院の同審査会のこんな指摘に対して、内閣官房側はこう答えた。

 「開示することでわが国の対処方針等が推認されるおそれがあり、不開示としている」

 「外務省の特定秘密の指定の仕方は概括的すぎて、どのような個別文書が指定されたかわからない」と同審査会が記載方法の変更を求めたが、外務省側は「持ち帰り、検討させていただきたい」という答弁にとどまった。

 報告書はこのようなやりとりばかりが繰り返されている。国家安全保障会議(NSC)の議事録公開の検討などの改善を求めたものの、いずれも「意見」にとどめ、「勧告」はなかった。

 特定秘密保護法によって、防衛省や外務省など十の行政機関が三百八十二件の特定秘密を指定した。この指定が適切かどうかをチェックできるのが、衆参の情報監視審査会である。ともに八人の議員で構成されている。

 政府内には内閣保全監視委員会や独立公文書管理監、情報保全監察室というチェック機関があるが、政府組織が政府の「内」の役所を監視できるか当初から疑問が持たれていた。そこで、国会という政府の「外」に審査会が置かれた経緯がある。

 議員は国民により選ばれているから、審査会のメンバーは国民の代表でもあろう。もともと特定秘密は「何が秘密かも秘密です」といわれる世界だ。行政機関の恣意(しい)的な運用が懸念されていた。少なくとも国民の「知る権利」とは対極的な位置にある制度だ。

 だからこそ、メンバーの国会議員は権限をフルに発揮して目を光らせねばならない。問題なのは、その議員にすら、どうやら十分な情報が開示されていないことだ。「特定秘密指定管理簿」だけでは、どのような情報なのか、まるでつかめないのだろう。

 審査会には運用改善の勧告や秘密の提出要求ができるが、強制力を持たない。国会の権限が弱すぎる。制度の欠陥が目に余る。

 

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