関西空港と大阪(伊丹)空港の運営が1日から、完全な民間会社に託された。仙台空港も7月から民営化され、高松や福岡、広島でも具体的な検討が進む。関空、伊丹が日本の空港民営化のモデルとなれるか。運営側の手腕が問われる。

 新運営会社の中核はオリックスと仏バンシ・エアポートだ。今後44年間で2・2兆円の対価を国側に払う条件を受け入れ、2空港の活性化に乗り出した。思い切った経営判断だ。

 ただ、国や地元の協力なくして成功はおぼつかない。幸い訪日外国人客の増加が続き、経営環境は上げ潮だ。今度こそ両空港を安定軌道に乗せ、関西全体の浮揚へつなげていきたい。

 伊丹空港の騒音問題の解決を目指し、関空が開港したのは94年だった。2本の滑走路を備えた人工島の整備に投じられた金は2兆円を優に超す。

 しかし20年余りを経ても、関空はその能力を発揮しきれていない。年23万回の発着容量があるのに、現状は7割程度。旅客数も年3千万人を超すという開港前の想定に届いていない。

 伊丹空港も地元の強い要望で存続したが、国内線専用で新幹線との競争も激しく、旅客数はこのところ横ばいだ。

 新会社は毎年200億円程度を投じ、両空港内の施設の魅力向上に取り組む方針だ。バンシは昨年までに4カ国の25空港を運営し、カンボジアでは旅客数を大きく伸ばした。そうした経験と大胆な発想で、関空、伊丹の潜在力を引き出してほしい。

 旅客数の変動の波に耐えうる長期戦略も求められる。

 近年は格安航空会社(LCC)の就航が相次ぎ、中国人観光客らも増加の一途だが、この勢いがずっと続く保証はない。一方、日本の人口は減少局面に入った。テロや伝染病、災害といったリスクも常にある。

 新会社が打ち出す経営戦略を、国と地元は尊重し、側面から支援していくべきだ。

 いま空港が直面している課題は、新会社だけで解決できないものが多い。例えば、関空では入国審査の混雑に外国人の不満が相次ぐ。国の審査態勢の強化が急務だ。関空と関西各地のアクセスを良くすることや、宿泊施設不足の改善も、地元の官民挙げた取り組みが欠かせない。

 関空、伊丹に加え、神戸を含めた3空港の役割分担を改めて整理する必要も出てこよう。新会社は「当面は関空、伊丹で精いっぱい」とし、神戸市が望む3空港の一体運営には慎重だ。関西全体の利益を考えながら、じっくり議論していきたい。