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日本銀行による「マイナス金利導入」というサプライズがなければ、円高も1ドル=115円近傍で止まっていたと思う。なまじマイナス金利政策導入の発表直後に121円台まで値が飛んでしまったので、その反動で円高の勢いが激しくなってしまった。これが日銀の最大の誤算であったろう。
外れた「円安狙いの一手」
もちろん、黒田総裁は口が裂けても「マイナス金利による円安期待」など語れるはずがない。しかし、優秀な日銀マンたちが巷間指摘されるマイナス金利政策の弊害を見抜けなかったはずもなく、結局は円安狙いの一手であったことは明らかだ。
にもかかわらず、米国の景気後退懸念に由来するドル売りと「安全通貨」としての円買いの津波に、日銀の願いはあっけなく押し流された。
ヘッジファンドにやられた
結果的に、日銀は「通貨安競争に負けた」というより「ヘッジファンドの円買い攻勢に屈した」とみるべきだろう。
さすれば投機主導型の円高に持続性はない。1ドル=110円近傍の円高ターゲットを達成すれば、流れが変わる可能性が高い。
流れが変われば円安回帰
なお、日本では、円が「安全通貨」といわれるが、ニューヨーク市場ではドルが「安全通貨」と語られる場合も多い。グローバルな視点では、円とドルが「安全通貨」の座を巡り拮抗しているのだ。
ゆえに、一旦流れが変われば、「リスクオフのドル買い=円安」の展開も十分に考えられる。為替の世界は通貨価値の相対評価で動くのだ。
さらに、ドル・円相場を中期的に見れば、やはり、日本は緩和、米国は引き締めという「金融政策の非対称性」によるドル買い・円売り圧力がジワリと効く。
先述のごとく、ヘッジファンドのポジションも、一夜にして円買いから円売りにひっくり返る可能性を秘めている。〝ちゃぶ台返し〟は、彼らの得意技だ。
米国はドル安に心境複雑
ただし、米連邦準備理事会(FRB)の思いは複雑だ。ドル高がもたらす低インフレリスクと、米国製品の国際競争力が弱体化することに懸念を表明していたので、時ならぬドル売り・円買いに一抹の安堵を覚えたかもしれない。
とはいえ、ドル売りの背景には米国の景気後退懸念や外部環境の悪化がちらつくので、単に「円高歓迎」と喜べる心境ではない。