増える個別指導塾と非常勤講師。ブラックバイトにもつながる学習塾業界の事情を分析した

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増える個別指導塾と非常勤講師。ブラックバイトにもつながる学習塾業界の事情とは?



ここ数年、名古屋市営地下鉄の駅を出ると、どこの駅においても個別指導塾の看板を見るようになりました。

これは個別指導塾が急激に増え始めた2000年頃から名古屋に限らず全国どのエリアでも同様に言えることだと思います。


一斉指導塾と比べ、個別指導塾は

◆大教室や複数の教室は必要なく、ある程度の広さの教室に机と簡単なパーテーションがあれば開校可能

◆正社員講師でなく学生アルバイトを中心とした非常勤講師で運営が可能

◆個々のカリキュラムのため、受け入れ可能な対象生徒が多い

と言った参入障壁の低さから、大手学習塾から個人の塾まで簡単に開校ができるという背景も理由にあげられると思います。



しかし一方で近年、学習塾業界で講師不足が深刻だとも言われています。

著者自身、以前学習塾業界にいたこともあり講師不足には常に頭を抱えていました。


急増した個別指導塾同士での学生アルバイトの取り合いが激しくなっていることに加え、近年いくつかの学習塾でのブラックバイト事情が取り上げられることもあり業界全体のイメージが低迷していることも追い打ちをかけていると言えるでしょう。



そういった学習塾業界事情の裏付けとも言える調査データが経済産業省から発表されていましたので、興味深いと思い調査データと学習塾業界の情勢を関連付けながらまとめてみました。




引用調査データ


経済産業省『特定サービス産業動態統計調査 長期データ《学習塾》』

【選定】有意抽出

【抽出方法】売上高の概ね7割程度をカバーするように抽出

http://www.meti.go.jp/




〇売上高の推移と受講生数の推移



年間の売上高と受講生数の推移を見ると概ね右肩上がりで増加しています。

少子化とは言われていますが、

◆個別指導塾の併設により、従来は受け入れられなかった対象学区外の生徒や低学力層のニーズに対応


◆衛星授業や個別指導のような柔軟なカリキュラムにより、ハードな部活動のため塾に通えなかった層を拾い上げた


◆高まる教育ニーズにより低学年層の需要が増えた



など、もともと塾に通っていなかった層を取り込むことに成功したことが生徒数増加の背景にある、というのが業界経験者の著者の体感としてあります。

とはいえここ数年で個別指導塾が爆発的に増えているので校舎内での塾生数の伸びに頭打ちしている学習塾も増えているのかと思います。したがって近年は生徒単価を伸ばすことが学習塾業界の流れになっているようにも感じます。

現在の親御さん世代では、『学習塾といえば一斉授業一本』というイメージが強いかと思うのですが、今の中高生は一斉指導や個別指導に加え、衛星授業の受講、パソコンやタブレットを使った通信講座も併用というケースも少なくないのではないでしょうか?

つまり生徒単価増のカギは衛星授業などの導入が握っているといえるかもしれません。



そういった複数の講座の併用により生徒単価は上昇傾向にありますので、大学受験に向けた高校3年生が学習塾に使う年間の授業料が100万円を超えるというのも珍しくありません。

上記のデータではここ10年間での生徒単価の変化は32,589円から33,500円と微増という印象ですが、比較的単価の低い低学年層も増えているからということかもしれません。


しかし、衛星授業などを導入する塾では設備にある程度のコストがかかるということと、契約する衛星予備校に対してロイヤリティも発生するので、単価が上がっても利益率が落ちるということもよくあります。



売上高と受講生の推移についてのまとめとしては

◆10年間で右肩上がりに増加


◆学習塾全体の生徒単価は微増だが、個別指導が増加する一方で衛生授業のヒットもあるため純粋な個別指導の単価は落ちていると予想できる




〇講師数の推移(増える非常勤講師)



まず全体の講師数の推移としても、売上高同様右肩上がりになっています。売上高が10年間で1.4倍になっているのに対し講師数も1.4倍になっているので数字だけを見れば塾講師一人あたりの負担が大きくなっているようには感じません。


しかし、専任講師と非常勤講師の内訳を見てみるとどうでしょうか。



専任講師数は概ね横ばいなのに対し、非常勤講師が増えていることがわかります。(10年で約1.5倍)

したがってほんのわずかではありますが非常勤講師一人あたりの受け持つ生徒数は減っているということです。

尚、非常勤講師というのは大半が学生アルバイトであり、またその多くが個別指導講師であると考えられます。



次に一斉指導講師の授業の負担と個別指導講師の授業の負担を比較してみたいと思います。

例えば一斉指導の場合、60分の授業に対し60分の準備が必要だったとすると仮にクラスの生徒に人数が30人であれば生徒ひとりあたりに2分の負担となります。

一方で個別指導の場合、60分の授業に対し30分の準備であったとしても、生徒一人あたりにそのまま30分の負担となります。

つまり講師一人あたりの受け持つ生徒数がわずかながら減っているとは言え、もともと一斉授業よりも負担の大きい個別指導講師が10年前と比べ1.5倍に増えているので、『塾講師=ハード』と感じている学生が増えていると考えらます。


また上記でも触れた通り、個別指導の占める生徒単価は減少していると予想されるため、そのしわ寄せが人件費、つまりいわゆる塾講師のコマ給問題として指摘される授業時間外の賃金未払などにつながっていくのではないかと考えられます。



まとめ


◆個別指導塾の増加とともに個別指導講師は増加している


◆個別指導講師一人あたりの生徒数はわずかながら減っている


◆さらに併用という形で衛星授業にシェアを取られた分、個別指導での生徒単価が減少している


◆これらのしわ寄せが個別指導講師のコマ給問題の一因にもなっている




もちろん一斉指導のみの塾や個別指導のみの塾、衛星授業のみの塾など、複数の指導形態を併設していない塾もありますので、個々の塾ごとでは当てはまらない塾もあるかもしれませんが、学習塾全体の中ではこういった事情があるのではないかと考えられるのではないでしょうか。




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