ブラック企業は絶対に潰すんだ!!!!
新年度になりました。
新しく働き始める方も多いことでしょう。
労働者たるもの、労基法を知らなければ、あれやこれや違法労働を押しつけようとしてくる会社に勝つことができません。
今回は労基法で定められている、
「賃金」
について、覚えていきましょう。
労働基準法では第二十四条に賃金の支払い方法についての記載があります。
これはいわゆる「賃金支払五原則」と呼ばれているものです。
まず前提として労基法による「労働者」「使用者」「賃金」を確認します。
第九条 この法律で「労働者」とは、職業の種類を問わず、事業又は事務所(以下「事業」という。)に使用される者で、賃金を支払われる者をいう。
第十条 この法律で使用者とは、事業主又は事業の経営担当者その他その事業の労働者に関する事項について、事業主のために行為をするすべての者をいう。
第十一条 この法律で賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称の如何を問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのものをいう。
どの条文も深く追っていくとそれだけで長くなってしまうので、そういうものであると思ってください。
ポイントは「賃金は労働の対償である」という点です。
さて、それでは本題です。
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金 について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の 労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
2 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(\第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
これを分解すると、以下の五つの原則になります。
1.賃金は「通貨」で支払わなければならない。(通貨払いの原則)
2.賃金は「直接」労働者に支払わなければならない。(直接払いの原則)
3.賃金は「全額」支払わなければならない。(全額払いの原則)
4.賃金は「毎月一回以上」支払わなければならない。(毎月一回以上支払いの原則)
5.賃金は「一定の期日を定めて」支払わなければならない。(一定期日払いの原則)
個別に解説、および例外について見ていきましょう。
(通貨払いの原則)
賃金は「通貨」で払わなければなりません。
ここでいう「通貨」とは「貨幣及び日本銀行法が発行する銀行券」を指し、他国の通貨(ドルなど)は原則では認められていません。
また「通貨」ですから、「労働者の持つ銀行口座への振込」も原則では認められていません。
原則上は「現金手渡し」ということになっています。
ただ、現在、口座振込でない会社の方が少数派だと思われます。
そこで、ただし書きがあり
法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合において
通貨以外での支払いが三点認められています。
・法令に別段の定めがある場合
現在そのような法令はありません。将来的に政府紙幣が発行された場合、通貨として認めないまま賃金の支払いに使われる場合には法令で指定されるかもしれません。
・労働協約に別段の定めがある場合
「労働協約」とは労働組合法第三章(第十四条~第十八条)に規定され、労働組合と使用者(又はその団体)が労働条件その他に関して書面にて結ぶ約束事です。
現実的には「通勤定期券を現物給付で直接渡したい」ときに利用されるケースが主でしょう。(通勤手当も賃金の一つです)
つまり、労働協約に定めがない限りにおいて、上記のような現物給付も認められていません。
定期券のような明確に金額がわかるものであればよいのですが、そうでないものもあります。
その点については、
労働基準法施行規則第二条第二項及び第三項にて
2 前項の通貨以外のものの評価額は、法令に別段の定がある場合の外、労働協約に定めなければならない。
3 前項の規定により労働協約に定められた評価額が不適当と認められる場合又は前項の評価額が法令若しくは労働協約に定められていない場合においては、都道府県労働局長は、第一項の通貨以外のものの評価額を定めることができる。
とあり、評価額を決め、労働協約に定めなければいけません。
・厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合
これは労働基準法施行規則第七条の二第一項及び第二項において
第七条の二 使用者は、労働者の同意を得た場合には、賃金の支払について次の方法によることができる。
一 当該労働者が指定する銀行その他の金融機関に対する当該労働者の預金又は貯金への振込み
二 当該労働者が指定する金融商品取引業者に対する当該労働者の預り金への払込み
とあり、ここでようやく「銀行口座への振込」の可否が記載されています。
しかし気をつけたいのは「労働者の同意を得た場合には」という箇所であり、労働者が拒否をすれば、使用者は原則通り「通貨」で支払わなければなりません。
また「当該労働者が指定する銀行その他の金融機関」ですから、使用者側が銀行、支店を指定することは認められていません。
(直接払いの原則)
賃金は労働者本人に支払うものであり、代理人、債権者に支払うことはできません。
前者により、銀行口座への振込である場合は本人名義口座でなければなりません。
配偶者や親の名義に振り込むことは認められていません。
ただし労働者本人が事情により直接受け取れない場合は、妻子等の使者に支払うことはできます。
これはまさに「通貨」で支払っている場合にのみ適用されるケースでしょう。
(全額払いの原則)
賃金は全額を支払わなければなりません。
これも当然給与明細を見るとわかるとおり、実際には色々なものが引かれています。
ただし書き
法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる
・法令に別段の定めがある場合
所得税、住民税、健康保険料、年金掛金、介護保険料、雇用保険料などの法定控除。
その他法に基づく給与の差押え。(上限あり。こうならないことを願いますが……)
この書面をいわゆる「労使協定」と呼び、その他の寮費や組合費、旅行積立金などといった控除をするときに結びます。
(毎月一回以上支払いの原則)
賃金は毎月一回以上払わなければなりません。
たとえ年俸制であっても、月に一度以上は支払わなければなりません。
・毎月一回以上支払の原則の例外(非常時払)
とはいえ、緊急時にお金が必要になり、次の支払期日まで待てない、という事態も生じる可能性があります。
労働基準法25条
使用者は、労働者が出産、疾病、災害その他厚生労働省令で定める非常の場合の費用に充てるために請求する場合においては、支払期日前であつても、既往の労働に対する賃金を支払わなければならない。
労働基準法施行規則9条に具体的な例示があり、
一 労働者の収入によつて生計を維持する者が出産し、疾病にかかり、又は災害をうけた場合
二 労働者又はその収入によつて生計を維持する者が結婚し、又は死亡した場合三 労働者又はその収入によつて生計を維持する者がやむを得ない事由により一週間以上にわたつて帰郷する場合
労働基準法は「働いた分はもらう権利がある」という立場ですので、「既往の労働分」は労働者が必要としていて申し出があれば使用者は払うべきという、ということになっています。
(一定期日払いの原則)
賃金は一定の期日を定めて払わなければなりません。
「一定期日」とは月給であれば「日にち」若しくは「月初」「月末」など日が特定されるものを言います。
ただし、「第三週目の金曜日」といった場合は月によっては前後七日の差が生じるため認められません。
また「毎月一回以上支払いの原則」「一定期日払いの原則」についてのただし書きは
ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。
となります。
ここでいう「賞与」とはその支給額が予め確定されていないものを指します。
そのため、単に年俸制で年額を16で割り、夏冬に2/16ずつを支払う契約をしている場合は「毎月一回以上支払いの原則」「一定期日払いの原則」の適用を受けることになります。
「厚生労働省令で定める賃金」とは、労基法施行規則第八条に記載され
第八条 法第二十四条第二項 但書の規定による臨時に支払われる賃金、賞与に準ずるものは次に掲げるものとする。
一 一箇月を超える期間の出勤成績によつて支給される精勤手当
二 一箇月を超える一定期間の継続勤務に対して支給される勤続手当
三 一箇月を超える期間にわたる事由によつて算定される奨励加給又は能率手当
となります。
以上が労働基準法第二十四条に書かれている「賃金支払五原則」です。
※より専門的なお話(補足か蛇足)
・労働協約は、労働者の75%以上が労働組合に入っている場合には、労働組合に入っていない労働者についても適用され、また労働基準法を下回る労働協約を結ぶことはできません。
労働者にとって条件の下限を決めている順は
労働基準法>労働協約>就業規則>労働契約>労働慣行(労働慣習)
となります。
(「労働契約」とは労働者と使用者が個別に結ぶ契約で、「労働慣行(労働慣習)」とは 明文化はされていないが実態として適用されている労働条件を指します。労働慣行のたとえとしては、労働契約までは週休一日であり土曜日が休みとは書いてい ないが、実際は土曜日も休みの週休二日である場合、労働慣行が優先されます)
・退職金については金額が高いためか、労働者の同意を得た場合には「銀行振出小切手」「銀行支払小切手」「郵便為替」の交付も可としています。
・実態は振込手数料がかからない、付き合いがあり融資などが受けやすくなるなどで銀行名、支店名を指定されることも多いでしょう。そういう気質の会社であればご愁傷様です。
・遅刻、欠勤したことによる賃金控除はそもそも労働しておらず賃金債権が発生していな いと解釈されますので、「全額払いの原則」には違反しません。これを「ノーワーク・ノーペイの原則」といいます。ただし、就業規則に欠勤の場合は「こういった計算式で控除する」などと明記をしないとトラブルになるでしょう。
・定められた期日が銀行の定休日等、銀行振込ができないときは、前日若しくは翌日に支払うことは問題ありませんが、就業規則に定めておくとよいでしょう。労働者の間で問題が起きないためには支給日の前日にしておいた方が無難でしょう。年末年始やGWなどの連休の場合、支払日が数日後になってしまうこともありえるためです。
労基法とはそれほど関係がありませんが、マネーに関する情報が盛りだくさんの小説が4/15に出ます。ご支援ください。