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クライフの教えに背いた罪と罰

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(更新 2016/4/ 3 17:30)

クライフを偲んで掲げられたメッセージ。この日のバルサはそのクライフの築いた哲学を体現することができなかった。(写真:Getty Images)

クライフを偲んで掲げられたメッセージ。この日のバルサはそのクライフの築いた哲学を体現することができなかった。(写真:Getty Images)

「バルサと戦うには、苦しむことを知らなければならない」

 主将として敵地カンプ・ノウでの試合を終えたマルセロは、流れ落ちる汗を拭いながら言った。その言葉に象徴されるように、レアル・マドリーは39戦無敗を誇るFCバルセロナの攻撃を受けながらも、とことん耐え、我慢した。その果てに繰り出した鋭いカウンター攻撃によって、ベンゼマ、クリスティアーノ・ロナウドという両エースの得点で1-2の勝利を得ている。

 しかし、クラシコで勝敗を分けたのは本当に忍耐だったのか?

 世界最高峰リーグ、スペインのリーガ・エスパニョーラの雌雄を決する伝統の一戦、クラシコ。バルサとマドリーの決戦は、前者にとっていつも以上に特別だった。現代バルサの「創始者」と言っても過言ではないヨハン・クライフが肺がんにより死去。スタジアムの熱気は試合前から最高潮まで高まった。

 そして試合直後から、王者バルサが下馬評通りイニシアチブを握る。ボール支配率は70%に迫った。

 ところが気持ちが入りすぎたのか、個人でなんとかしようという気持ちが先立ち、粘り強くサイドから崩せない。世界最高のフットボーラー、メッシでさえも気が逸り、中央からの攻撃に固執。TAPON(バックラインの前で攻撃コースをふたする役)に入ったカジミーロに向かって突っ込んでしまう。ブスケッツを除けば、一人一人のボールを持つ時間が長く、ボールが走らない。足が動くだけに走り回るが、無駄に体力を消耗する。

「考えもなしに走るな。ボールは汗を掻かない。それを忘れるな」

 クライフが植え付けた哲学とまるで逆のプレーを、バルサは展開してしまう。後半に入ってピッチに水を撒き、無理矢理に攻撃スピードを上げ、56分にCKからピケが先制した。しかし選手の動きは鈍り始め、距離感は悪くなっていた。

「疲れがあったかもしれない」

 ピケは小さく洩らしたが、62分の失点で破綻は決定的となる。左SBのアルバが敵陣で不用意な横パスをカジミーロに奪われる。モドリッチに二度のワンツーでマークをはがされ、攻め上がったマルセロについていけず中央をブレイクされ、左から侵入したクロースを自由にし、折り返されたクロスをベンゼマに叩き込まれる。人はいても、ポジションが乱れ、制御を失っていた。

「体力的な問題というよりも、単純にポジションが悪く、試合を読み切れなかった」

 イニエスタは心理的混乱を強調したが、失点後に混乱を増したバルサは攻撃を受け続け、簡単に両サイドを崩される。セルヒオ・ラモスを退場で失った相手に対し、なにもできない。そして85分に右から左に大きく振られ、C・ロナウドに決勝点を突き刺された。

「立ち上がりはうまくは入れなかったね。やりたいようにプレッシャーもかけられなかった。でも、始まりが悪くても終わりが良ければ満足だよ」

 マドリーのジダン監督は素直に勝利を喜んだ。彼らは苦しみを知り、辛抱強く勝者となったのだろう。

 しかし、バルサが自ら死地に入ったとも言える。

「前半はとても良かった。ただ、フットボールはときに気まぐれなものさ」

 バルサのルイス・エンリケ監督は不運を悔しがった。しかし、彼らは戦略で敗れていた。それは図らずも、クライフの教えに背いた罪と罰だったのである。

文:小宮良之

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