「黄金伝説」展
2016年4月1日〜5月29日
愛知県美術館
一面年金、5兆円損失の見通し 運用法人、株積極投資が裏目に◆専門家が15年度試算国民が拠出する国民年金や厚生年金の積立金を運用する独立行政法人「GPIF」が二〇一五年度、約五兆一千億円の損失を出す見通しとなったことが、専門家の試算で明らかになった。GPIFは安倍政権の方針に基づき一四年秋以降、運用資産のうち国債の比率を下げる一方、株式投資の比率を倍増させたが、中国経済の減速などに伴う世界的な株安もあり、裏目に出ている。変動の大きい株式を主軸に年金を運用する政策の是非が問われそうだ。 損失はリーマン・ショック直後の〇八年度以来の大規模水準になる見込み。GPIFは運用成績を例年七月前半に公表するが、今年は七月二十九日に発表する。 試算はGPIFの運用に詳しい野村証券の西川昌宏チーフ財政アナリストが実施。損失内訳は、外国株式が三兆六千億円と最大で、国内株は三兆五千億円、外国債券も五千億円の損失だった。一方で国債など国内債券は二兆六千億円の利益を計上した。 約百四十兆円に上る年金積立金を運用するGPIFは、積立金の利回りを改善するとの名目で一四年十月、運用基準を変更。国内債券の比率を60%から35%に下げ、株式投資(外国株を含む)を24%から50%に引き上げた。外国債券も15%に上げた。 だが、一五年度は株式が世界的に下げ、円相場上昇で外国債券価格も下落。一方、日銀のマイナス金利導入で資金運用に困った銀行などが国債購入に殺到、GPIFが減らした国内債券は逆に価格が上がった。 日本総研の西沢和彦上席主任研究員は「日本の年金はスウェーデンなどと違い、損失が出たときすぐに穴埋めをしない。将来世代への影響を防ぐ仕組みをつくらないまま、損益の振れ幅の大きい株式の比率を高めたのは拙速だ」と批判している。 ◆国民へリスク説明を【解説】公的年金を運用する独立行政法人GPIFが二〇一五年度に大幅な運用損失を出す見通しとなり、リスクのある資産で運用することの危険性が浮き彫りになった。国民の老後を保障する年金は最も安全を重視すべきだが、国民への運用リスクの説明は不十分なままだ。 政府は「短期の実績に一喜一憂すべきではない」と繰り返す。だが、少子高齢化で積立金は取り崩し局面に入っており、保険料収入で不足する年金給付を補っている。積立金が損失発生で目減りしても、今の受給者への給付にすぐ影響するわけではないが、市場好転で損失が埋め合わせられなければ、将来世代の支給条件が悪化する。損失をすぐ処理する仕組みを設けていない以上、「将来世代にツケが回る可能性がある」という当然の真実も併せて丁寧に説明せねば公平ではない。 積立金の運用は従来国債が中心だったが、基準変更で、今では全体の65%が株式、外債で運用されている。 政府は、運用基準を変えさせた狙いは、年金財政が厳しくなる中、利回りを向上させることだとしていた。だが、安倍政権の成長戦略にも位置付けられており、年金基金に株を買わせることで「株価の押し上げに利用している」との批判は当初から根強かった。 運用方針の変更を提言した有識者会議で参照された海外事例も、個別の公務員年金が多い。日本は老後の生活の最低保障の役割を担う年金の「基礎部分」まで株式比率を高めているのに対し、米国は基礎部分を債券で手堅く運用している。 GPIFは一五年度の運用成績を七月二十九日に公表するとしている。例年より半月遅く、野党からは「損失が七月の参院選挙に影響するのを恐れて発表を遅らせるのではないか」との批判も強まる。年金の「オーナー」である国民への情報公開を徹底し、意見を広く聞き運用方針を再検討することが必要だろう。 (東京経済部・渥美龍太) <GPIF(Government Pension Investment Fund)> 正式名称は「年金積立金管理運用独立行政法人」。運用資産は2015年末時点で約140兆円と世界最大規模。少子高齢化で積立金は取り崩し局面に入っており、保険料収入で不足する年金給付を補っている。積立金が損失発生で目減りしても、今の受給者への給付にはすぐには影響しないが市場好転で損失が埋め合わせられなければ、将来世代の支給条件が悪化する。 PR情報
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