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 国内の大手電機メーカーがまるごと外資に買収される――。鴻海(ホンハイ)精密工業のシャープ買収は、日本経済を支えてきた電機業界が分岐点を迎えていることを示す。鴻海のもとでシャープは復活できるのか。注目された2日の会見だが、再建の具体策ははっきりとは示されなかった。

 鴻海の郭台銘会長は2日の記者会見で、笑顔を絶やさずシャープへの思い入れを語った。「創業者、早川徳次のイノベーションのDNAがあるから、私はシャープが大好きだ」。シャープ株の66%を取得する買収だが、郭会長は「買収ではなくて投資」と友好的な姿勢を強調した。

 郭会長が最も注目するシャープの技術は、ディスプレー関連だ。3月31日にシャープに振り込んだ保証金の1千億円も、この分野で先行して投資を進めるためだと説明し、「今は新しい技術開発で非常に重要なタイミング。次世代の技術で勝つのは早く動いたところだ」と力を込めた。

 特に郭会長は、シャープが液晶パネルに使っている「IGZO(イグゾー)」と呼ばれる技術の高さを評価した。鴻海は出資金3888億円のうち2千億円を、次世代ディスプレーの有機EL開発に投じる方針だが、「私がエンジニアなら低コストでできるIGZOに力を入れる」とまで言い、シャープの独自技術を持ち上げた。

 液晶への過剰投資で経営が悪化していたシャープにとっても、鴻海の傘下に入ることはメリットがある。韓国や中国勢との価格競争に敗れ、技術力を利益に結びつけられない状況に追い込まれていた。資金を新たな技術開発に投じ、鴻海の販路も活用することで、技術力を生かせる。