安保サミット 核テロ防ぐ連携強めよ
2年に1度の核安全保障サミットが終わった。オバマ米大統領が開催を提唱し、今回のワシントン会合で4回目だ。「オバマ後」の開催形態は流動的だが、核テロへの不安が強まる折、国際的な結束を確認する会合を定期的に開くことは意義深い。
同サミットは2009年、オバマ大統領が「核兵器のない世界」演説の中で言及し、翌10年に初の会合が開かれた。提唱者はオバマ氏だが、01年にブッシュ前政権下で米同時多発テロが起きた時から、核兵器や核物質を使うテロが懸念されていた。
テロ組織が核兵器を入手して爆発させる、あるいは核関連物質で放射能をばらまく「ダーティーボム(汚い爆弾)」を使えば被害は計り知れないからである。先月のベルギーのテロでは実行組織の「イスラム国」(IS)が原発を標的とした形跡があり、核・放射能テロの脅威はいっそう身近になった。
今回サミットで採択されたコミュニケは、核物質と核関連施設の安全確保を国家の基本的な責任とし「各国は核安全保障を永続的な優先課題とすることを誓う」と表明した。今後は国際原子力機関(IAEA)が中心になって協調し、国際刑事警察機構(ICPO)を通じてテロ関連情報を共有することでも合意した。
特に新味がある文言ではないが、参加した50余りの国・機関が「核テロは全ての国の問題」という意識を共有したのは意義深い。今後は具体的な行動計画を順守してほしい。
オバマ大統領が述べたように、4回のサミットを通じて日本など30カ国の核関連施設50カ所余りから、150発以上の核兵器を作れる3・8トン超の高濃縮ウランやプルトニウムを撤去・移送したのは大きな成果である。京都大が保有する実験用高濃縮ウランも新たに米国に引き渡されることになった。
だが、問題も少なくはない。米国と並ぶ核大国のロシアはサミットに参加せず、米露の核軍縮交渉も宙に浮いたままだ。核軍縮と核物質の管理は別とはいえ、核拡散防止条約(NPT)に従って核軍縮を進めるとともに、核物質の管理を徹底するのが筋である。不参加とはいえ、ロシアは核物質の管理や核テロ対策で協調すべきだ。
昨年のNPT再検討会議の決裂が象徴するように、核兵器を持つ国と持たざる国の意見対立が深まっているのも心配である。核軍縮と核物質管理を全体的に論じる国際的な意見交換の必要性が増している。
加えて北朝鮮だ。核やミサイルによる挑発を繰り返す同国は核兵器や核物質、核技術を第三者に流す可能性も指摘されている。さまざまな脅威、複合的な危機に対する国際社会の結束と知恵が問われている。