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31話 今後の活動方針について長々と考える
楽しかった食事会から一夜が明けた。
うーん、頭がガンガンする。
飲みすぎた。
ミティは平然としている。
朝食を食べ終えてもまだ体調は戻らない。
今日の狩りはやめておくか。
一番安全なファイティングドッグを相手にしたとしても、今の体調では危険がある。
ここ最近は休みなしで狩りをしてきた。
休息日としてちょうどいい。
「ごめんミティ。今日は狩りを休んでいい? 体調が悪くてさ」
「もちろんですタカシ様。何かすることがあれば言って下さい。何でもします」
ん?
今何でもするって言ったよね?
「ふふふ。じゃあいっしょにベッドで寝てもらおうかな」
い、いかん。
調子に乗って変なことを言ってしまった。
ただのセクハラ親父じゃないか。
こんなことを言っていてはミティに嫌われてしまう。
取り消そう。
「いや、やっぱり今のは……」
今のはなしで。
そう言おうと思ったが、ミティの行動のほうが早かった。
「で、では失礼しますね……」
ミティが顔を赤らめつつ俺のベッドに入ってきた。
なかなか行動が早い。
せ、せっかく入ってきてくれたんだから、今さら取り消さなくてもいいよな?
ドキドキ。
「タカシ様、好きです……」
「俺もミティが好きだよ」
俺とミティは見つめあう。
世界一可愛い天使のような顔だ。
ドキドキ。
ミティの手の近くに俺の手を置いてみる。
彼女が俺の手を握ってきた。
さっきから心臓のドキドキが止まらない。
結局、その日は一日中そんな感じでイチャイチャして過ごした。
●●●
次の日の朝になった。
昨日一日たっぷりと休んだから、ばっちり体調は戻っている。
昨日に続き、今日の午前中も狩りを休みにした。
いや、別にサボり癖がついたわけではない。
今後の方針を決めるにあたって、いろいろと考察しておきたいのだ。
まずは食事会による忠義度稼ぎについてだ。
一昨日の食事会の開始時と終了時に、みんなの忠義度を確認しておいた。
開始時は、ほとんどの人が15~25ぐらいだった。
終了時は、その人達の忠義度が1~3上昇していた。
食事をおごるだけでもある程度は忠義度を稼げることが判明した。
しかし50までは遠い。
1回の食事会で忠義度を平均2稼げると仮定すれば、あと15回ぐらい食事会を開けば彼らが加護の条件を満たすことになる。
しかしこの理屈には大きな穴が2つある。
まず1つ目として、忠義度は上がれば上がるほど、それ以上は上がりにくくなるという点だ。
具体的に言おう。
忠義度10から20までは数日間行動を共にすれば、割と楽に達成できる。
兄貴達や赤き大牙などが実際に忠義度20に達している。
しかし忠義度20から30まではなかなか困難だ。
現在ミティ以外で30に達しているのはユナしかいない。
2つ目として、一昨日の食事会は特別なものだったということだ。
俺のみんなへの感謝の気持ちと、スメリーモンキーという珍味。
そこに酒のパワーが加わり、いい感じに盛り上がった。
連続で15回も開催すれば、さすがに特別感が薄れてきて盛り上がりに欠けてくるだろう。
食事会を開きまくって忠義度を稼ぐのは現実的ではないな。
まあ、みんなへの感謝の気持ちは行動で示せた。
その結果だけで十分だ。
そうそう、一昨日の食事会による忠義度の上昇について特筆すべき人物が3人いた。
ビリー、ユナ、そしてリーゼロッテだ。
ビリーとは黒色の旋風のリーダーのことである。
俺は彼の名前をすっかり忘れていた。
そこで、食事会のあとにこっそりユナにきこうとした……が、彼女は酔いつぶれていた。
ついでにジークも酔いつぶれている。
結局ドレッドに教えてもらった。
ビリーの忠義度は地味に高く、24にまで達している。
彼との間に特に大きな出来事はなかったんだが。
まあいっしょに夜警をしたことがあるし、旋風の中では一番親しいのは確かだが。
ユナは食事会終了後に忠義度が30を超えた。
遠征終了時には彼女の忠義度は28だった。
その後、パーティを抜けて疎遠になっていたためか、少し忠義度が下がっていた。
しかし食事会によりまた上がり、ミティ以外では初めて忠義度30に達したのである。
リーゼロッテは忠義度が19から26に一気に上がった。
彼女にとって食事というものは大きな存在のようだ。
彼女に限って言えば、食事会による忠義度稼ぎが有効かもしれんな。
食事会による忠義度稼ぎについての考察はこれぐらいでいいだろう。
次に、このまま冒険者として上を目指す方向性が正しいのかどうか、考えてみる。
冷静に見れば、加護付与スキルにはちょっとした読心術のような効果があることに気が付く。
今回のように食事会を開いて、開始時と終了時の参加者の忠義度を調べる。
それにより、参加者の食事会への満足感が分かる。
商人や料理人としての活躍も今後十分狙えると思われる。
村長や町長、貴族を目指すという道もある。
忠義度を常に調べておけば、腹の探り合いに役立ちそうだ。
自分に有利な派閥を形成したり、裏切りそうな奴を確実に切っていったりできる。
しかし、そのように冒険者以外の道を考えたときに気になることがある。
ミッションの存在だ。
今までに出てきたミッションの内容を整理してみる。
30年後の世界滅亡を回避しよう。
ステータスを確認しよう。
魔物を1匹討伐しよう。
街へ行こう。
ゾルフ砦の防衛に加勢しよう。
竜種を1頭討伐しよう。
どれか1つのスキルをレベル5にしよう。
俺がこの世界に転移した原因は分からない。
しかし仮に、神のような存在によって意図的に転移させられたのだと考えると、いろいろと見えてくるものがある。
まず「30年後の世界滅亡を回避しよう」というミッションが目につく。
ミッション内容のスケールが大きい。
一番上に提示されたものである。
期間が30年と長い。
おそらくこのミッションの達成が最終目標だと考えていいだろう。
しかし具体的にどうやって世界滅亡を回避するのか?
世界滅亡を阻止するために何をしていくべきか?
その疑問に対して参考になるのが「ステータスを確認しよう」「魔物を1匹討伐しよう」「ゾルフ砦の防衛に加勢しよう」「竜種を1頭討伐しよう」「どれか1つのスキルをレベル5にしよう」という5つのミッションだ。
商人になったり村長になったり運び屋になったりすることは望まれていない。
冒険者、もしくは兵士や傭兵としての活躍を期待されているように感じる。
加えて忘れてはならないのが「街へ行こう」というミッションだ。
一見、地味で深い意味はないようにも思える。
しかしよく考えると、このミッションにも隠されたメッセージが込められているように思う。
それは、「街へ行って社会に順応しながら生きろ」というメッセージだ。
秘境の地に引きこもったり、山賊として好き勝手生きたりすることは望まれていない。
こうしてミッションからいろいろ考えると、「冒険者として上を目指しつつ、パーティを強化していく」という今の方針は悪くないと思う。
それにしても、世界滅亡についてのヒントがもう少し欲しい。
どういった要因によって世界が滅亡の危機に瀕するのか。
それが分かればより適した対策が取れるようになる。
魔物が異常繁殖して人間を襲ってくるのか?
魔王が誕生し魔物を率いて襲ってくるのか?
邪神が復活して世界を絶望に沈めるのか?
権力にとりつかれた悪の枢機卿が暴走するのか?
地底人が攻めてくるのか?
宇宙から謎の侵略者があらわれるのか?
巨大隕石が衝突するのか?
温暖化により海面が上昇するのか?
チート持ち転移者が大量流入して暴れだすのか?
ワープホールが出現し地球軍が侵略してくるのか?
この世界は実は壊れゆくゲームの世界だったのか?
魔法の使いすぎにより世界にひずみが生じるのか?
正直、候補が多すぎてさっぱり予想できない。
魔物や魔王あたりが要因だと、対処の方向性は分かりやすい。
このまま冒険者として上を目指し、加護付与をできる限り多くの人に付けていけばいい。
逆に、巨大隕石や温暖化あたりが要因だと、お手上げだ。
たとえレベル5のスキルを使えるようになったとしても、それでどうにかなるとは思えない。
そんなの俺じゃなくて科学の出番だろう。
まあ先ほども考察したように、今までのミッションから判断すれば、こんなSFみたいな危機ではないとは思う。
仮にそういった危機が滅亡の原因ならば、「勉強しよう」というミッションが発生しているはずだし。
いや待てよ?
俺1人の能力だと、いくらスキルレベルを上げても確かにどうしようもない。
しかし加護付与を活かしてスキルレベル5持ちの人を大量に仲間にすればどうだ?
スキルレベル5持ちが10人100人と集まれば、ちょっとした天変地異すら防げそうな気がする。
俺やパーティメンバーの武力を活かして、要人を保護することが使命である可能性もあるな。
人族と魔族の和平を訴える人物とか。
天変地異への画期的な対抗策を思い付くような人物とか。
ダメだ、可能性を絞りきれない。
思考がまとまらない。
今の情報量でこれ以上考察しても意味はなさそうだ。
ミッションが追加されれば、世界滅亡の危機について多少のヒントにはなるかもしれない。
前回ミッションが追加されたのは、災害指定生物第3種のホワイトタイガーを討伐し、レベルが10になったときだった。
単純に考えれば、危険指定生物第2種を討伐するかレベル20になるかで新たなミッションが解放されそうだ。
そうなると、ミッション追加は当分先のことになりそうだな。
災害指定生物第2種は、第3種よりも危険度が高い。
ホワイトタイガーより強い生物と戦うのはまだ避けたい。
そして俺がレベル20になるのはまだまだ先のことだ。
今の俺のレベルは11だからな。
こうしてその日の午前中は長々と考え続けた。
今後の方針についての結論を出す。
やはり当初の予定通り、期間限定ミッションに従って東のゾルフ砦に向かうのが良さそうだ。
「長々と考えたくせに結論は今まで通りかよ!」とか言ってはいけない。
砦編に向けて次話から動き始めます。
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