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 シャープは2日、台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業から3888億円の出資を受け入れる契約を正式に結んだ。鴻海は10月までに支払って議決権の66%を握り、シャープを買収する。日本の大手電機メーカーとしてシャープは初めて外資の傘下に入る。

 電機は日本を代表する産業だったが、韓国や中国、台湾勢に押されてきた。今回の買収は、電機産業が大きな変わり目に来ていることを示す。

 鴻海の郭台銘会長は会見で、シャープの新しいディスプレー技術の開発に力を入れ、短期で黒字化する考えを明らかにした。堺市の工場であった会見では、「さらに100年、イノベーション(技術革新)を続けられるように全面的に支援する」と語った。

 高橋興三社長は「事業の拡大や財務体質の改善につながる。大きな相乗効果が見込まれる」としている。

 鴻海は3月30日の取締役会で出資を決議し、シャープも受け入れを決めた。鴻海はシャープの企業価値が低下しているとして、当初の案より出資額を1千億円減らした。シャープの責任で買収が実現しなかった場合、鴻海が欲しがっていた「液晶事業」だけを取得できるという有利な条件も加わった。鴻海は3月31日、保証金としてシャープ側に1千億円を支払った。破談については決してないとして、契約実現は「99・99%の確率だ」としている。

 シャープはここ数年業績が悪化したため、技術開発にお金をかけられなかった。鴻海からの資金を使って、優れた製品の開発をめざす。スマートフォンの画面として将来主流になるとされる有機ELパネルの開発・生産のため、2千億円をかける。電力消費が少ない「IGZO(イグゾー)」と呼ばれる液晶関連の技術を伸ばす。

 家電をすべてネットでつなぐことで生活を便利にする「モノのインターネット(IoT)」にも力を入れる。郭会長は新たなIoTシステムを提供することで、「家電に劇的な変化をもたらしたい」と語った。

 シャープはブランドや雇用を守ることなど、これまで主張してきたことを鴻海が受け入れてくれたとしている。郭会長は「なるべく全員残ってもらえるようにしたい」と述べ、雇用の維持に努める姿勢を示した。

 高橋社長ら経営陣の一部は、鴻海が出資するのに合わせ退任する見通し。鴻海は経営陣に幹部を送り込む。

 また鴻海の戴正呉副総裁は、3月に売却されたシャープ本社(大阪市阿倍野区)の土地や建物について、買い戻すか近くに新本社を建てたいとの意向を示した。新しい建物には、シャープ創業者の早川徳次氏の博物館を作る計画もあるという。(新宅あゆみ、西村宏治)

■記者会見での両社首脳の主な発言

【シャープ】

・ブランドは維持

・雇用と事業の一体性は、原則として維持

・鴻海からの支援で財務体質を改善し、成長への投資をする

・販売量の拡大、新たな製造能力の活用で競争力を強化

【鴻海】

・世界的なブランドになるようサポートする

・適材適所に配置し、最善を尽くしている人は全員残ってもらいたい・再建への意志を示すため1千億円をシャープに支払い

・次世代IGZOや有機EL、カメラなどの先進技術に投資

・インターネットで家電などをつなぐ「IoT」開発を加速

・出資額3888億円のさらなる減額はしない

・シャープ本社ビルを買い戻し、創業者の記念館をつくる

■シャープと鴻海精密工業を巡る主な動き

2011年7月 テレビ用液晶パネルの相互供給などで合意

  12年3月 シャープ本体と堺工場の運営会社に出資で合意

     7月 鴻海が堺工場運営会社に660億円を出資

     8月 鴻海が「シャープ本体への出資見直しで合意」と発表

  13年3月 シャープ本体への出資契約が期限切れ

  15年10月 シャープが液晶事業の切り離しで「複数の相手と交渉」と表明

  16年1月30日 郭台銘会長がシャープ本社で出資などの支援案を説明

     2月4日 鴻海との優先的な交渉を決める

     2月25日 シャープが出資受け入れを決める。鴻海は契約を保留

     3月30日 シャープと鴻海が出資をそれぞれ決定

     4月2日 正式に契約し会見

     6月23日 シャープの株主総会で出資を承認予定