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多くの人が勘違いしてる『ケフィアとヨーグルト』を専門家が解説するよ!

グルメ・食品科学
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一時期『ケフィア』って流行りましたよね。

 

『いいえ、ケフィアです』

 

のコピペ僕もよく使いました。

今はブームは去り、根強いファンが食べ続けてる感じでしょうか。

一時の流行食品にしては根付いた方だと思います。

 

実は僕が乳業メーカーにいた頃、『ケフィアの商品開発』に少しだけ携わったんです。結局頓挫したんですけど。

飲むヨーグルトの開発がメイン業務だったので、ケフィアに関するマーケティングは初めてでしたが、結構いろんな商品あるんですよね!

本場純正のものも、怪しいものも…

 

今回は、『菌活』の一部として定着した(?)ケフィアヨーグルトについて、僕の『開発記録』も添えて解説していきます!

※もちろん社外秘の内容は含みません。基礎知識に近い部分に関して、実体験を元に説明します。

 

【目次】 

 

ケフィアとヨーグルトって違うの?

【参考】国際食品規格(Codex)消費者庁カルピス一般社団法人日本乳業協会株式会社明治日本ケフィア協会など

ヨーグルトの定義

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日本には『ヨーグルト』単独の規格はありません。

あるのは『発酵乳』という分類。

 

『発酵乳』の定義は…

『乳、又はこれと同等以上の無脂乳固形分を含む乳等を乳酸菌又は酵母で発酵させ、糊状又は液状にしたもの、又はこれらを凍結したもの』と定義されています。

成分規格は無脂乳固形分8.0%以上、乳酸菌数又は酵母数1000万/ml以上と定められています。

 出典:発酵乳とは|一般社団法人日本乳業協会

 

…簡単に言うと、

 

『牛乳を乳酸菌酵母で発酵させて、菌数が1mLあたり1000万個含まれるもの』

 

『発酵乳』です。乳酸菌じゃなくても良いのです。

 

無脂乳固形分*18.0%以上とありますが、新鮮な牛乳ならこの範囲を満たします。

『ヨーグルト』の定義はありませんが、日本では『発酵乳』以外にヨーグルトと表示することは厳禁!

発酵乳の中にヨーグルトという種類があるイメージですね。

また、乳成分を低めて飲みやすくした『乳酸菌飲料』という分類もあります。

ヤクルトやカゴメの『ラブレ』は、この分類なので、どこにもヨーグルトとは書かれていませんよ!

 

ただ、日本ではなく、世界の基準(codex)では…

・ブルガリア菌(Lactobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus)等の乳酸桿菌

・サーモフィラス菌(Streptococcus thermophilus

の2種の菌で発酵させた乳製品がヨーグルトと定義されています。

 

基本的には、『発酵乳』『codexのヨーグルト規格』の両者を満たすものがヨーグルトと呼ばれています。

 

例えば、ダノンビオ『BE-80』と言う菌を推してますが、実際は『BE-80とブルガリア菌、サーモフィラス菌など5種類』で発酵させてます。

人気の明治『プロビオヨーグルトR−1』ですが、そもそもR-1菌はブルガリア菌の一種*2ですしね。

 

しっかり、Codex規格を満たしています。

 

ケフィアの定義 

ヨーグルトとの違いを簡単に言うと、

  • 乳酸菌の種類が指定されている
  • 酵母が必須である

の2点。

 

ケフィアはヨーグルトの1種ではなく、『発酵乳』という分類の中に、『ヨーグルト』と『ケフィア』という、それぞれ独立した種類の発酵食品がある。

 

と考えてください。

だからタイトルは『ケフィアヨーグルト』

 

国際食品規格(Codex)によると…

 

【ケフィア】

  • ケフィアグレインを構成するL. kefiri や(中略)Lactococcus属などの細菌と、K. marxianus などの酵母を含む。
  • 乳酸菌または酵母の数が、1mLあたり1000万個、かつ酵母を1000個以上含む。

参考: Codex Alimentarius『Milk and Milk products』の一部を和訳

 

とあります。

他に乳成分も関係しますが、さして重要ではないので割愛します。

 

ところが、このケフィアの定義には、少し『穴』があるのです。

この点について、次の項では、ケフィアの起源を踏まえて解説します。

 

本場のケフィアと日本のケフィア

【参考文献】

Chemical and microbiological characterisation of kefir grains(2001)など

日本のケフィアの『問題点』と本場との違い

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さて、日本ではケフィアのサプリや種菌*3がたくさん売ってますね…

 

ここで本場のケフィアについて少し解説します。

 

ケフィアは元々、ロシア、グルジア、アゼルバイジャンのコーカサス山脈周辺…コーカサス地方の一部で伝統食とされていた発酵乳です。

『ヨーグルトきのこ』と表現されるように、ツブツブの『グレイン(塊の意味)』が特徴です。

 

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こんな感じ。wikiの写真ですけど。

 

そのユニークさや健康効果が注目されちゃって、欧州を始め世界に広がってったのですな。

 

元々少ない民族が自家製に作っていた発酵乳。

 

本場では…

  • 乳酸菌、酢酸菌、酵母など20種類以上含まれる。
  • 乳酸菌が出すネバネバの『多糖』によるグレインの形成。
  • 加えて、酵母によるアルコール酢酸菌による酢酸(要はお酢)…
  • 多数の菌が発酵させるケフィアは、作る度に違ったグレイン、違った味*4になる。

こんな『特徴』があります。

 

しかし、商品化する上では『規格』が必要ですね。

ただ、コイツを”質が一定な”商品として量産化することは非常に難しい…。

 

『規格』だけ見れば、特定の乳酸菌と酵母が一定数含まれていれば『ケフィア』ということも可能です。

そのため、規格は満たしても、本場のケフィアにはほど遠い『ただの発酵乳』(由来のサプリ等も)がケフィアとして売られることも少なくないのです…。

 

そもそも、『発酵食品の歴史』は『菌による汚染の歴史』です。

ランダムな食品汚染が、たまたま人間に合う変化を起こしただけ…

発酵食品の『規格化』は、実はとても難しい…。

 

次の項は、規格化された『市販ケフィア』を少し掘り下げます。

 

市販ケフィアに注意!それって本当にケフィア?

既述の通り、特定の乳酸菌と酵母を適当に混ぜて発酵させれば、『ケフィアだよ!』っていうことはできます。

 

ただ微生物には、種類(S・セレビシエとか)の下に株(S・セレビシエ  YNN140とか)という分類があります。

例えば、同じ酵母でも、パンとお酒では違う『株』を使いますね。

 

乳酸菌も、例えば、クレモリスという種類だと、ケフィア用の株もあれば、チーズなど他の発酵食品に使う株もいます。

しかし、色んなケフィア関連商品では、クレモリスと書いてあっても、どんな株とは書いてないものも多かったり…

そもそも菌名を書いてない商品が多いが…

 

『それ本当にケフィアの菌?』って商品も多いっすね。

 

やずやさんなんかは、純正の菌(らしい)を使って、グレインの形成も指標にしてますね。

個人的にはケフィア関連で、一番『まとも』に感じます。

 

 

なぜ日本では『サプリ』か『種菌』しか売らないの?

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上記で紹介した、『やずやの千年ケフィア』ですけど、これもケフィアを乾燥、粉末にした『サプリ』です。

 

あるいは『種菌』を使って自分で育てろや!って商品もあります。ホームメイドケフィア。

 

ちなみに僕は関係者ルートで本場の種菌持ってたんで、ガチのケフィアを冷蔵庫で植え継いでたお(^p^) もう死んだけど。

本場のはマジで『酸っぱすぎワロタww』レベルっすからね…。

 

ヨーロッパやアメリカでは店頭にケフィアが並んでるんですけど、日本では売ってない理由は1つ。

『密閉』が問題なのです。

 

ヨーグルトと違い、ケフィアには『酵母』が含まれます。

パンの膨張でわかるように、酵母は二酸化炭素の『ガス』をモリモリ出します。

容器の蓋に穴を開けないと『破裂』しちゃうんですな。

欧米はこのへん甘いから、フタに穴を開けた商品が普通に売ってます。それだけ。

 

密閉性の容器に充填すれば販売できるかもしれないけど、関係者視点で言えば、そもそも容器に金かけてペイできる商品ではないっす!!

100mLサイズ300円で買ってくれるなら良いけどさ…。

 

この『密閉』が後に悲劇を…後述します。

 

ケフィアの健康効果、効能

【参考文献】

Milk kefir: composition, microbial cultures, biological activities, and related products(2015)

The interaction between yeasts and bacteria in dairy environments.(2001)など

ケフィア乳酸菌と健康効果

ケフィアも『発酵乳』なので、様々な健康効果があります。

 

主に、乳酸菌が出すネバネバの『多糖』の研究が盛んですね。ケフィランとも言います。

免疫の活性化や、抗炎症作用血圧の上昇抑制など…様々な効果が解明されています。

酵母が共生していると、乳酸菌が多糖をいっぱい出すようになる…なんて研究報告も。

発酵食品の奥は深いのです!

 

乳酸菌の多糖を精製して『保湿剤』の原料に使う試みもありますね。

実用レベルかどうかは化粧品会社さんに聞いてください。

すげぇ高価だから量産化は難しいと思うが…。

 

ただ、これはあくまでも本場のケフィアの乳酸菌株を用いた研究結果。

日本の色んなケフィア商品だとどうかなぁ…?

 

基本的なヨーグルトの効能は期待できる

とはいえ、そもそも乳酸菌の発酵乳ですから、基本的なヨーグルトと同じ効果は期待できます。

ヨーグルトについては、この記事でよろしく!!

 

ケフィアだから特別な効果があるとは思わないほうが良い

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ケフィアでアピールされてる健康効果がウソと言うわけではありません。

ただ、ケフィアで一般的に謳われる『腸内環境を整える』とか『免疫を強くする』とか『アレルギー低減』とかって…

 

ケフィアに限ったことじゃないですからね。

 

色んな発酵乳で、わりとメジャーな効果です。

 

『ヨーグルトは微妙だったけど、ケフィア飲んだら胃腸の調子がすごく良くなった!花粉症も軽くなった!』

 

みたいな評判もありますけど、そりゃケフィアがその人にたまたま合ってただけでしょ。それか誇大広告。

 

発酵乳は相性があるので、色んなやつを試して良い感じのヤツを続けましょ。

 

おまけ:みるおかケフィア開発記録

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僕は、サプリでも種菌でもないケフィアを商品化できませんでした…

  • 色んな菌を組み合わせたけど、グレインができない。
  • 発酵が安定しない(作るたびに違う味…)
  • 容器選定が難しい (耐圧性など)

などなど。

 

そして、耐圧の密閉容器を用いてケフィアを試作した日に悲劇が。

ガスでパンパンになった容器内は、僕が開封すると同時に暴発し、僕の顔と実験室にに大量のケフィアが降り注ぎました。

 

その日の午後、

『一般家庭でこの悲劇を起こしてはいけない』

と、ケフィアの商品化はペンディングになったのです。

……

………ぐすん。

 

 

つべこべ言わずに…

 

ヨーグルト食えば良いんだよっ!!!

 

まっ、ケフィアが合う人もいるだろうし、自分で作る楽しみもありますからね!

色んな発酵食品食べよう食べよう!

 

 

 

【こんな記事もおすすめ】

みるおか

*1:脂肪と水以外の成分

*2:種より細かい『株』という分類

*3:生菌を牛乳に加えて自分で発酵乳を作る

*4:酸味やアルコール濃度、その他の香りなど