住宅ローンの金利の決まり方
どうも千日です。住宅ローンの金利の話題です。
どれだけ下がるか注目された2016年4月の住宅ローンの金利ですが、全期間固定のフラット35の金利は少し下がりましたが、10年固定金利は少し上がりにましたね。
どちらも劇的な変動はありませんでしたが、逆方向に動くのはちょっと意外でした。
そこで、今日は住宅ローンの金利タイプ別にどうやって金利が決まるのかを分かりやすく説明したいと思います。
では始めますね。
目次
銀行は調達したお金を貸して、差額の利ざやで儲けている
まずは大前提なんですけど、資金を外部から調達して貸しているんですよ。資金を調達するには、コストがかかります。分かりやすく言えば銀行もお金を借りたら利息を払わないといけないということです。
- 銀行が借りる時の金利が安ければ、貸すときも安く貸せます。
- 銀行が借りる時の金利が高ければ、その分高い金利で貸さないと儲けがありません。
案外、単純な話でしょ?
ですから、銀行が住宅ローンを貸す時の金利というのは、以下の要素で決まります。
- どうやって調達した資金を貸すのか
- その資金の調達コスト(利息)はいくらか
それを理解すれば、誰でも来月の住宅ローンの金利の動向をマクロでざっくり予測することが出来るんです。
変動金利は政策金利と連動する
まずは最もシェアの多い変動金利からです。 変動金利は借入期間の途中で、金利の動向によって銀行が金利を上げたり下げたり出来る金利タイプですね。
つまり、こういう事です。
- 銀行が借りてくる時の金利が上昇したら、それに連動して住宅ローンの金利を上げます。
- 銀行が借りてくる時の金利が下落したらそれに連動して住宅ローンの金利を下げます。
フラット35などの全期間固定金利は国債金利と連動する
- 銀行が借りてくる時の金利が上昇しても、住宅ローンの金利は上げられない。
- 銀行が借りてくる時の金利が下がっても、住宅ローンの金利を下げなくて良い。
一定期間固定金利の本質は変動金利
一定期間固定金利は固定期間の円金利スワップレートに連動する
- 円金利スワップレート(10年)0.46%
- 6カ月TIBOR 0.25727%
言い換えるとこうなります。
『借入期間10年で変動金利の0.25727%で借りているけど、今後は金利が上がりそうだ。これから10年間金利を固定できるなら、0.46%だったら借り換えてもいいかな。』
『貸付期間10年で変動金利の0.25727%で貸しているけど、今後は金利が上がりそうだ。もし、債務者が金利を固定したいといって来たら、利率を0.46%に上げないと割に合わないな。』
つまり、一定期間固定金利の金利の決め方は、その時点での変動金利と固定金利の均衡するところの金利で決定されるというわけですね。
円金利スワップレートと変動金利(TIBOR)をグラフにしてみると、以下のようになります。
2016年の1月はまだ円金利スワップレートの方がかなり高かったですね。これは近いうちに金利が上がるだろうという予想がマーケットで支配的だったということです。
しかし、2月にガクッと落ちて、その後はほぼ変動金利と同じ水準で推移していますよね。これは日銀のマイナス金利政策が発端で長期金利が大幅に下がったことによるものです。
当分の間、金利は上がらないという予想がマーケットで支配的になったということです。分かりやすい動きですよね、もちろんこれは現時点での円金利スワップレートでしかありません。
今後10年、金利が上がらないことを保証するものではありませんので、その点はご注意ください。
2016年4月の住宅ローン金利でフラット35が下がったのに10年固定金利が上がった理由
すこしややこしい所もありましたけど、以上がマクロな視点での住宅ローンの決まり方です。
フラット35の金利は10年国債金利、10年固定金利は円金利スワップレートと連動するという話でした。10年国債金利と円金利スワップレートを並べてみると以下のようになります。
コピーしたかのように同じ動きをしてますね!
それなのに2016年3月から4月にかけて全く逆の動きになったのはなぜでしょうか?
- フラット35の借入期間21年〜35年の金利は1.25%から1.19%に下がった。
- 三井住友信託銀行の10年固定の金利は0.5%から0.55%に上った。
ここから先は千日の想像によるところが大きいです。
借り換えが増えただけで、トータルでプラスにならなかった
まず、銀行間の住宅ローンの利下げ競争が何をもたらしたかについて書いておこうと思います。銀行間の住宅ローン争奪戦がもたらしたのは『借り換え』の増加でした。
三井住友銀行など主要8行の2016年2月の借り換え申込件数は約2万8千件で前年比の約2.5倍でした。
つまり10年位前に住宅ローンを借りた人たちが、今の低金利の機会を捉えて金利の負担を軽くする為に今の金利水準でローンを借り換えたということです。
たとえば、三井住友銀行から住宅ローンを借りていた人が三井住友信託銀行の10年固定に借り換えたとしたら?
- 今後は三井住友銀行は高い金利が受け取れなくなる
- その代わりに三井住友信託銀行が安い金利で住宅ローンを貸す
借り換えが増えれば増えるほど、トータルで銀行グループの収入は減ってしまうということです。
他行に奪われるよりはマシですけどね。がんばって金利を下げたところでさほど報われなかったという結果だったんです。
金利が下がり毎月の返済額が減ったことで住宅ローンを申し込む人の属性も下がった
こういうことを書くと嫌われそうなんで、気が進まないんですけど。あえて率直に書きます。
- 住宅ローンの金利が下がる
- 毎月の元利均等返済額が下がる
- 今まで住宅ローンを借りれなかった年収でも返済可能になる
- 従来よりも低い年収の人による住宅ローンの申し込みが増える
- 従来よりも銀行にとって貸し倒れのリスクが増える
- 貸し倒れのリスク=デフォルトリスクは金利に上乗せされる
要するに銀行なんて言ったって、住宅ローンの場面では金貸しとなんら変わらないんですよ。
そして、これがフラット35と10年固定で全く逆の動きになった、一番の理由でもあります。
フラット35では住宅金融支援機構=国が住宅ローンを保証し、10年固定は銀行グループの保証会社が保証する
フラット35は、住宅ローン住宅金融支援機構は国が運営する団体になりますので、全て税金で運営されています。
という事は、当然、利用者が債務不履行になった際には、税金で銀行に代位弁済されることになります。
巡り巡って負担は国民全体が被ることになってしまうのですが、さしあたって銀行のサイフは痛まないということです。
これに対して10年固定などのその他の一般的な住宅ローンは銀行のグループの保証会社が債務を保証します。利用者が債務不履行になった際には保証会社が代位弁済しますので、銀行グループのサイフは痛みます。
各金融機関の立場から見てみると、保証会社の保証であっても、住宅金融支援機構の保証であっても、取引の中身自体に大きな差異はありません。
あくまでも銀行単体が最終的な被害を受けることはない。
しかし各保証会社というのは、無尽蔵に資金を持っている訳ではありませんので、やはり耐久性という問題がありますし、同じ銀行グループです。
こうした違いが金利の決め方に作用したのでしょうね。つまりこういうことです。
- フラット35は申込者の属性が低くても住宅金融支援機構さえOKなら何の問題もない⇒国債金利の下降を住宅ローンの金利に素直に反映させよう。
- 10年固定は申込者の属性が低くなると、銀行グループ全体のコストが増えてしまう⇒返済できなくなる人が出ることを見越して金利を上げよう。
まとめ
いかがでしたでしょうか。こうして考えてみると、銀行間の住宅ローンの金利競争は早くも飽和状態になってきているような感じですね。
しかし、ネットバンクについては、まだ余裕がありそうですので、今後もさらに金利を下げてくるかもしれません。
以上、千日のブログでした。
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