安倍晋三官房副長官の話

この1月14日「安倍晋三先生を囲む会」という催し物がありました。地元企業の有力者を集めて親睦を図る、という趣旨で23名ほどの経営者が集まりました。政治家は参加できない、ということだったのですが、中学、高校の同級生の口利きにより、UCLAの同窓ということで、(安倍さんはUCLAに2年間ほど在籍したそうなんですが、私もUCLAで授業を受けたことありましたもので、同窓ということにしてもらったわけです)そのメンバーに入れてもらい、色々とレクチャーを受けました。まあ、市議会議員なんてのは政治家というほどのモノでもないですしね。

安倍晋三先生のレクチャーは、実に中身が濃いものでした。
「小泉さんは、実際、経済通でない」という話からはじまり、竹中さんの話になり、「竹中さんは、話を整理するのが上手で、政治家的な人の動かし方にも長けている」というような噺も出て、イギリスでは国会議員でないと大臣になれないという話や、また、エリツィンが莫大な予算をつぎ込んでクレムリンの内装をエカテリーナ王朝時代のようにリホームした話も聞きました。ロシアとしては、不況その他で国民がロシア人としてのプライドを失いつつあり、クレムリンのリホームは、そのプライドを回復するための事業だったそうです。

そんな話の他に、北朝鮮の今後の展開に関する予測やら国内事情やら、興味深い話が盛りだくさんでした。

「日本人は、北朝鮮は時間の問題で、そのうち必ず崩壊すると思ってるようですが、これは米国がそうしたいと思っているだけのことであり、そうなるかどうかは、周辺国の態度を見なければわからない。ロシアや中国はキム・ジョンイルの政権こそ支持しないかもしれないが、北朝鮮が崩壊することを望んではいないし、そうならないための援助も続けるはずであり、北朝鮮はそう簡単にはなくならないと思います」というような予測も出てました。
拉致被害者の話になり、地村さんたちには、最初、「とにかく一度北朝鮮に戻って、子供を連れて帰国するべきだ」という話をしたそうです。しかし、地村さんたちは、この申し入れを断固拒否したそうです。「一度、戻ったら、二度と帰国はできない」ということだったそうです。「私(安倍)他、政府の人間がたくさん同行すれば、変なことにはならないでしょう」と言うと、「みんなで一緒に行っても、突然銃をもった者が部屋に入って来て、我々を引き離そうとしたら、どうしますか? 安倍さんたちは、その場で何ができますか?自衛隊も一緒に行ってくれるなら話は別ですが、」と言われ、結局、彼らの言うとおりにしたそうです。
子供が残されてしまった件については、「どうして連れてこなかったのか?」ということを聞いてみたそうです。すると、「むこうでも、子供を連れて行きたいかどうか、何度も尋ねられましたが、連れて行きたいと答えると、帰国できないと思った」そうです。彼らは、拉致されて以来、何度も、その手の誘い水を向けられ、その度に、「日本になど帰りたくない。私は、北朝鮮に永住したいし、日本などは大嫌いだ」と言い続けていたそうです。それを言い続けたから今日まで生き延びられたそうで、一度北朝鮮に戻ったら、「日本になど戻りたくない」と言い続け、日本の悪口を言い続けなくてはならないそうです。むこうでは、家族単位で処刑された拉致被害者は数え切れないほどたくさんいるそうです。(北朝鮮では、処刑というのは、常に家族単位で行われるそうです。親だけ殺すと、その子供は反政府意識をもつから、という理由だと思われます。)
ちなにみ、北朝鮮では、子供は6歳になると親元を離されるそうで、地村さんたちも、子供と会うのは、年に1度か2度くらいだったそうです。そういう事情があるなら、彼らの子供たちは、すでに、あの国の洗脳を受けているうえに、日本語もしゃべれないし、親子の情も通い合わないような状況なのかと思われます。だから「子供と会いたい」とか「連れて帰って欲しい」というよぅなことは口には出してますが、そのために自分の命をかけるつもりにはなれないのでしょう。
もっとも、曽我さんだけは、アメリカ人とのハーフの子をもっていたためか、ずっと子供と一緒に暮らしていたそうです。

質問の時間になり、私も一点だけ質問することができました。

「アメリカ経済は、今年の末から来年にかけて本格的に崩壊する、という説があるが、日本政府としては、どう予測しているのか? 日本への影響をどの程度に見積もっているのか? 被害を食い止める防御策は考えているのか?」

という質問をしてみました。回答は、

「アメリカは、破格の景気対策なんかをやっているし、政府としては、米国経済が破綻するとは見ていない。ただ、イラク戦がはじまったら大変なことになるだろう。実際にアメリカ経済が破綻してしまったら、その影響を防ぐのは無理であり、その防御策はない」

というものでした。
安倍さん自身、「アメリカは必ずイラクを攻撃するだろう」という予測を語っていたのですが、それらのことを考え合わせると、米国の経済破綻や、そのことによる株価の急落や、その余波の日本上陸については、すでに、ある程度予測しているのではないかと思われます。が、そういう話は官房副長官としてはできなかったのだろうと思います。

少子化対策についての質問も出て、

「乳幼児保育には反対である。それをやったスウェーデンは、一時は出生率が上がったが、今は急落している。その上、保育所で育った子供たちによる少年犯罪が激増していて、ストックホルムは、今や犯罪発生数では、ダントツの世界一である」

というような話が出ました。
私は、以前、ある友人のBBSで、「少子化を根本的に是正するには、子育てしている女性を優遇するだけでは意味がない。女性に対する良妻賢母教育が必要だ」、という趣旨の質問原稿を公開しまして、総スカンを食ったことがあります。

「女性ばかりを責めるとはなんだ!男がだらしないから子を産む気になれないんだ!」

「現実問題として、働く女性には、行政の援助が必要なんだ!」

というようなのが皆のリアクションでした。
教育委員会の方も、

「男女共同参画社会というお題目が世の流行なのに、それに真っ向から敵対するような良妻賢母教育なんて話には、とても答弁できません」

と言ってました。
男女共同参画社会と良妻賢母教育とは別の話であり、敵対する話でもなんでもないわけですが、確かに、頭の中がガンガラガンに凝り固まっている女性運動家なんかは、とにかく味噌も糞も一緒に煮込んでしまう傾向があり、そういう傾向の人には良妻賢母なんて言葉自体が社会の敵のようなイメージがあるみたいでして、そういう運動家やそれらの尻馬に乗りたがるマスコミなんかに美味しい思いをさせても困まるので、とりあえず、その質問はお蔵入りになってます。

でも、いつかやってやろうとは思ってます。

話が脱線しましたが、安倍さんの話は、大きなステージで活躍する高邁な政治家というのがどういうものかのイメージを彷彿させてくれて、ちょっぴり羨ましい気分にもなりましたが、とにかく新鮮な情報が盛りだくさんで、それらの話を淡々と語る穏和な姿勢には深い感銘を受けました。


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