古舘キャスター「報ステ」最後のあいさつ全文…その1

2016年4月1日0時50分  スポーツ報知

  テレビ朝日系ニュース番組「報道ステーション」(月~金曜・後9時54分~)のメインキャスターを12年間にわたって務めた古舘伊知郎さん(61)が31日、最後の出演を終えた。以下は最後のあいさつ。

 私が気に入っているセットとも今日でお別れということになってしまうわけです。

 2004年の4月5日に「報道ステーション」という番組は産声を上げました。それから12年の歳月があっという間に流れました。なんとか私のテレビ局の古巣である、学舎である、このテレビ朝日に貢献できればという思いも強くあって、この大任を引き受けさせていただきました。

 おかげ様を持ちまして、風邪ひとつひくことなく、無遅刻無欠勤で12年やらせていただくことができました。これもひとえに、テレビの前で今、ご覧になっていただいている皆様の支え合ってあればこそだなと、本当に痛感をしております。ありがとうございました。

 私はこの12年間、毎日毎日、テレビ局に送られてくる皆様方からの感想、電話、メールなどをまとめたものをずっと読ませていただきました。

 お褒めの言葉に喜び、徹底的な罵倒に傷付いたこともありました。でも、全部ひっくるめて有り難いなと今、思っております。

 ふとある時、気付くんですね。いろんなことを言ってくるけれども、考えてみたら、私もこの電波という公器を使って、善かれかしとはいえ、いろんなことをしゃべらせていただいている。絶対、どこかで誰かが傷付いているんですよね。因果はまた巡って、自分がまた傷付けられて当然だと、だんだん素直に思えるようになりました。こういうふうに言えるようになったのも、やはり皆さん方に育てていただいたおかげなんだなと、強く思います。

 そして、私がこんなに元気なのになんで辞めるのかと決意したのかということも、簡単にお話させていただきますとすれば、そもそも私が12年前に、どんな報道番組をやりたかったのか、というところにつながるんです。それは、実は言葉にすると簡単なんです。

 もっともっと普段着で、もっともっとネクタイなどせず、言葉遣いも普段着で、司法言葉とかじゃなくて、普通の言葉でざっくばらんなニュース番組をつくりたいと真剣に思ってきたんです。ところが、現実はそんなに甘くありませんでした。例えば「いわゆる事実上の解散宣言とみられています」。いわゆる、を付けなくてはならない。事実上、を付けなくてはいけない。みられている、と言わなくてはいけない。これはどうしたって必要なことなんです。テレビ局としても、放送する側としても、誰かを傷付けちゃいけないということで、二重三重の言葉の損害保険を掛けなくてはいけないんですよね。そして裁判でも「自白の任意性が焦点となっております」。任意性。普段そういう言葉は使わないですよね。「本当にそういうふうに語ったのか、強制されたのか」でいいわけです。本当は。例えば、これから夕食だという時に「これは接待ですか? 任意ですか?」とは言わないわけです。そういうことをガチッと固めて、ニュースはやらないといけない。そういう中で、正直申しますと窮屈になってきました。

 もうちょっと私は、自分なりのしゃべりで、自分なりの言葉で皆様を楽しませたい、というワガママな欲求が募って参りました。

 12年、苦労してやらせていただいたというささやかな自負もありましたので、テレビ朝日にお願いをして、退かせて下さいとお願いをしました。これが真相であります。ですから、世間、巷の一部で、何らかの直接のプレッシャー、圧力が掛かって私は辞めさせられるとか辞めるとか、そういうことでは一切ございません。

 そういう意味では、私のしゃべりや番組を支持して下さっている方にとって、私が急に辞めるというのは、裏切りに繋がります。本当にお許し下さい。申し訳ありません。私のワガママです。

 その2に続く。

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