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 少子化や晩婚化が進むなか、カップルの6~10組に1組が悩みを抱えているとされる不妊。治療には多額の費用がかかり、深まらない周囲の理解に苦しむ人も少なくない。社会は不妊とどう向き合っていけばいいのか。

 2013年 33万円

 2014年 257万円

 2015年 135万円

 関東北部で暮らす37歳の女性は自らつけてきた記録の表を見つめ、深いため息をついた。生活に重くのしかかる不妊症の治療費。6年ほど前から体外受精と顕微授精を10回繰り返してきたが、子どもはできていない。「こんなにお金を使っているんだ」。ときどき、怖くなる。

 妊娠しても流産を繰り返す「不育症」。体外受精、顕微授精は1回に30万~80万円かかる。保険は適用されず、1回で最大15万円が助成される国の当時の制度を利用したが、とても足りない。2年前からは、大阪市内の診療所に2~3カ月に1回通う。「最先端の技術と設備」があるという評判を聞いたからだ。

 この6年で500万円以上を費やした。一方で、会社勤めの夫(38)の年収は手取り約300万円。独身のころのお互いの貯金を取り崩したり、夫の両親に資金を融通してもらったり……。女性は2カ月に1回の割合で行っていた美容院を4カ月に1回に。夫は読みたい本を買わず、立ち読みで済ます。「もし子どもができても、育てるお金がないね」。ふと、夫がつぶやいた言葉に胸がうずく。