軍事的な挑発をやめない北朝鮮にどう対処するか。

 ワシントンに集まった日米韓の首脳が会談し、安全保障分野での緊密な連携を続けることを確かめあった。

 3カ国会合に続き、日米と日韓の二国間でも首脳らが会った。北朝鮮はきのう、そうした動きに抗(あらが)うかのように短距離ミサイルを日本海に発射した。

 北朝鮮は来月、36年ぶりの朝鮮労働党大会という大行事を控えている。最近の暴挙は大会に向けた示威行動といえる。

 そのため行動をすぐ改めるとは考えにくいが、日米韓は振り回されることなく、堅固な協調を崩さないことが肝要だ。

 北朝鮮はこれまで同様に、日米韓に中国やロシアを加えた5カ国の結びつきに、くさびを打とうと躍起になっている。

 朝鮮半島の緊張を背景に、もし各国が自分の国内事情だけを考えた行動に走れば、北朝鮮の思うつぼになりかねない。

 日本政府は韓国との間で、軍事情報を融通し合うための協定を早く結ぶよう求めている。昨年末の慰安婦問題の合意で関係がかなり改善したことを受け、数年来の懸案の解決を急ぐ。

 協定の必要性を認める声は韓国政府でもあるが、最大の支障は、いまだに歴史認識問題をはじめとする対日不信感だ。

 日本で安保関連法が施行された先月末、韓国外交省は「平和憲法の精神を堅持しながら透明に推進されるべきだ」と、日本での改憲の動きを牽制(けんせい)した。

 韓国で間近に迫る総選挙が終われば、慰安婦合意の具体的な実行が焦点になろう。日韓双方が合意を守り、信頼を高めてこそ防衛協力を含めた課題の解決にも道筋が見えるはずだ。

 関係国の中で韓国は北朝鮮に最も強硬な姿勢をとっている。朴槿恵大統領は先月、韓国軍の将兵あてに「(みなさんを)北は恐れている」と手紙を送り、異例の警戒体制を示した。

 韓国国防相は、北朝鮮が直接的な挑発にでれば、即時報復するよう指示している。こうした前のめりな姿勢は選挙を意識したものとも受け取れるが、偶発的な衝突にもなりかねない。

 日米韓は冷静に、かつ強靱(きょうじん)に北朝鮮への国連制裁を実行しつつ、朝鮮半島問題をめぐる新たな環境づくりを探るべきだ。

 いま進行中の米韓合同軍事演習と韓国総選挙が今月中に終わり、北朝鮮が核実験などせずに党大会を終えれば、情勢は対話基調へ変化する可能性もある。

 日米韓は引き続き結束を固めつつ、北朝鮮との交渉にも備える構想を共有すべきだろう。