電力の自由化とは、私たち消費者にも、家庭で使う電気を選べるようになるということです。新しい仕組みは、まだまだ不十分。ただ、きょうから電気は普通の商品に、二歩も三歩も近づきます。
「選べる」ということは、電気もようやく、一応は普通の商品になるということだ。
誰もが毎日、電気を使って暮らしている。電気は目に見えないし、においも味も、色もない。お店の棚に並んでいるわけでもない。
地域を独占する電力会社から、日々送られる電気を消費し、決められた料金を支払ってきただけだった。電気が商品であるとの実感は、まだしばらくは、わいてこないに違いない。
しかし、自分自身で電気を選んでみることで、これまで見えなかったもの、見てこなかったものなどが、少しずつ見えるようになるはずだ。
たとえばスーパーで食材を選ぶとき、私たち消費者はまず料金を見比べる。安心安全に敏感な人ならば、消費期限を見極め、添加物や原産地を確かめるはずである。
電気も同じ。十電力の寡占状態、地域独占の枠が払われ、競争が始まれば、サービスや電源などの種類も増えていく。使用済み核燃料の処分など、隠されたコストも明らかになってくる。
電源を選べるということは、電気の原材料や原産地も選べるということだ。たとえば原発の電気はいやだ。風力や太陽光、地熱など再生可能エネルギーだけでつくられた電気がほしいという意思表示ができるようになる。
今のところ、電源の表示は欧州連合(EU)などのように義務付けられてはおらず、本紙の調査によれば、電力小売りの名乗りをあげた約二百六十の事業者のうち、調達する電力の電源構成を公表しているのは、約三割にとどまっている。
だが、食材などの表示も、消費者が商品に関心を持ち、知識を養い、安全安心の視点から行政や売り手に要望を積み重ねたことにより、義務化が進んできたのではなかったか。電気も同じ。
商品を選ぶということは、商品に対する監視を強め、要望の声を上げる、ということだ。
電気という商品を磨き上げ、使いこなすのも、再生可能エネルギーの普及に結び付けるのも、結局は、それを選ぶ人なのだ。
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