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 東日本の鉄道事業者37社で1日、混雑時を除いて優先席やその付近でも携帯電話を使えるようになった。JR東日本では車内放送やポスターで乗客に周知し、混乱は見られなかった。

 1日午前9時前のJR山手線。体が触れあうほどだったり、空席が出来たり。駅ごとに混雑状況はまちまちだったが、優先席付近では常に誰かが携帯をいじっていた。

 ゲームをしていた東京都港区の会社員須藤優美さん(21)は「『携帯を使うな』と怒鳴られたことがあり、これからは気兼ねせずに済む」。ニュースを見ていた江東区の田山圭さん(66)は「すでに電源オフは形骸化していた。新しいルールもどれだけの人が守るのだろうか」と話した。

 鉄道37社は、携帯の電波が心臓ペースメーカーに与える影響は非常に低いとする総務省の指針を受け、優先席での携帯利用マナーの見直しを9月17日に発表。JR東日本によると、ルール変更に対し、ペースメーカー利用者からは不安の声もあったが、9月末までに寄せられた苦情は数件。JR東は「混雑時のみオフに」と呼びかけている。

 葛飾区の無職男性(75)は狭心症のためペースメーカーを装着。携帯は持っておらず、列車の混雑時はタクシーを使う。「制限が残るからには危ないのだろう。心持ちは何も変わらない」と話す。

 一方、優先席を使う利用者に歓迎の声もある。「乗り換えの確認やメールなどで携帯を使いたかった。変更はうれしい」。左足に障害があり、杖が手放せない東京都中央区の杉田敬介さん(54)は言う。

 ペースメーカーに詳しい東京女子医大の庄田守男臨床教授は「携帯による誤作動の報告は世界で1件もなく、安全」としたうえで、「『やっぱり危ない』との認識が残ると緩和した意味がない。鉄道各社は機器への影響などをしばらく丁寧に説明すべきだ」と話す。(東郷隆)