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セブンスターズの印刻使い 作者:白河黒船/涼暮皐

短編章 2

196/196

AF-3『エイプリル・パラレル』

※注意※
 ここから先はメタネタ・キャラ崩壊・寒いノリなど、本編をブチ壊すような描写が数多く存在します。
 ので、苦手な方はあらかじめ避難をお願いします。これを読まなくても本編はそのままお楽しみいただけます。読んで何が起きても知りません。

 では、ハッピー・エイプリルフール。
『学園せぶすた!』


     ※


 問一。元から学園じゃないんですか。
 解一。違います。学院です。
 注釈。エイプリルフールネタなので細かいことは気にしないでください。


     ※


 という夢から、一ノ瀬明日多は目を覚ました。
 という、の前には適当な夢を当て嵌めてくれればよい。

「うーん、いい朝だーっ!」

 ベッドの上で上体を起こすと、伸びをしながら明日多は言う。そんなこと普通言わないのだが、小説の主人公は割と独り言が多いので、その一環だと思えばよい。
 一ノ瀬明日多は大学生だ。取り立てて目立つところのない学生である。そういう設定である。
 しいて変わっているところを挙げるとするのなら、その家族構成くらいだろうか。

「――起っきろぉ、明日多ぁー! あっさだぞぉーっ!!」

 そんな元気のいい声とともに、自室の扉が開け放たれる。
 ばちこん、と大きな音を立てて跳ね返る扉。その奥から姿を現したのは、ひとりの幼女だった。
 幼女は異彩構わず、ベッドにいる明日多へと飛び込んでくる。それはもう獲物を前にした獣の如く、あるいは据え膳を前にした男の如くと言えよう。
 言えないかな。

「とーうっ!」

 胸元に飛び込んできた幼女を、明日多は抱き留めて微笑む。

「おはよう、アイリス」
「ん! おはよっ、おにいちゃんっ! 朝だよっ!!」
「そうだね。もう聞いた」
「なんと! おにいちゃんは早起きで偉いねっ! 頭撫でてあげるっ!!」

 深い藍色の髪に金色の瞳、そして褐色の肌を持つ幼女が、満足そうに頷きながら呟く。
 幼女は名を一ノ瀬アイリスといった。
 明日多にとっては義理の妹で、いろいろ複雑な過程を経て家族になった大事な大事な幼女である。なお、その《いろいろ複雑な過程》については特に決めていないので、各々で補完していただけると助かる。
 別にしなくてもよい。

「えーっへへーっ」

 明日多の髪を撫でるアイリスは、心から楽しくてしょうがないという笑顔で表情を緩めている。
 いったい何がそんなに楽しいというのか、明日多にはよくわからない。わからないが、明るくて元気のいい義妹いもうとのためならば、頭くらいいくらでも提供できるというものだ。

「ふへ。ふぇへへへへへへへ……ひひ、うっひへへへひひははははははははっ」

 笑いすぎだと思うけれど。

「くくく……ふふ、はは――あーっはっはっはっはっはっはっはっはっ!!」

 なんかもはや魔王みたいになっているけれど。

「世界が我が手にー! 我が手にー! あはははははは――っ!!」

 もう何言ってのかすら定かではないけれど。
 そんなことは些末な問題だった。明日多は訊ねる。

「満足した?」
「した!」
「それじゃあ下に行こうか。先行ってていいよ」
「うんっ!」

 朝から元気なアイリスちゃん。小学校のクラスでも人気者らしい。

「おねえちゃんも下で待ってるから、早く来てよ、おにいちゃんっ!」
「はいはい」

 そんな言葉を最後に、アイリスは全速力で階下に下りていった。早すぎて廊下に焦げ跡がついていた。
 明日多の自宅はごく普通の一軒家で、閑静な住宅街の一角に位置する築十二年の二階建てだ。ローンとかその辺り諸々については、もう知ったことではないので適当に流すとよい。
 明日多の自室は二階にある。
 義妹いもうとのアイリスが、毎朝のように起こしに来るのがふたりにとっての日課だった。

 明日多は寝間着から私服に着替えると、一階の洗面所に向かう。
 身支度を整え、それからリビングルームに向かった。
 テーブルではすでに、アイリスが朝食を食べ始めている。朝のニュース番組の占いを横目に眺めながら。

「蟹座……っ! 蟹座最下位だって……恋愛運だめだめだって……あは、あはははっ。面白ひーっ!」

 ――笑い上戸だなあ。
 いつものことなので流しながら明日多も席に着く。
 台所のほうから、明日多にとってもうひとりの義妹である少女が姿を現した。

「おはようございます、お兄様。今日は早起きですね?」

 たおやかに微笑む、深層のご令嬢のように礼儀正しい少女だった。
 その美貌たるや人智を超越し、まるで天上の芸術家によって製作された彫刻を思わせる。
 明日多は見慣れているので特に気にせず言った。

「――おはよう、シャル。いつもありがとね」

 明日多の義理の妹、一ノ瀬シャルロットは笑顔で答える。
 なんで外国名なんだよとか突っ込む必要はない。気にしてはならない。

「いえ、そんな。恩義あるお兄様のためですから」
「シャルの作るご飯は美味しいからね。そうだろう、アイリス?」
「蟹座ーっ!」
「ほら、アイリスも美味しいと言っている」

 言っていない。
 いないがシャルは気にしなかった。

「そう言ってくださると嬉しいですね。ありがとうございます、お兄様」

 ぐっ、と小さくシャルはガッツポーズを作る。
 慣れていないその動作が実に可愛らしいと近所では評判だった。
 近所とは。

「わたし、家事くらいしか取り柄はありませんけれど。お兄様のお役に立てて光栄です」
「そんなことないよ。シャルにはいつも助けてもらってるさ☆」

 明日多は白く輝く歯を見せながら、爽やかな笑みでそう答えた。
 明日多は白く輝く歯を見せながら、爽やかな笑みでそう答えた(笑)。
 きらん☆

「――お兄様……っ」
「さあ、シャルも席について。せっかくのシャルのご馳走が、冷めてしまわないうちに食べないとね」
「ぽっ」

 歯の浮くような台詞に頬を染めるシャル。
 透き通る白の髪に、宝石のような蒼い瞳を持つ彼女は、日本人どころか人間離れした美貌を感じさせるが、こうして頬を染めている表情は豊かだった。
 ぽっ(笑)。

「いただきます」
「いただきます」
「蟹座ーっ!」

 三人で食事を開始する。

「お兄様、今日の大学は二限からですよ」
「そうかい。ありがとうシャル」
「ぽっ。いえいえ、授業は私も同じものを取っていますから。最初はマクロ経済学からです」
「そうかい。ありがとうシャル」
「ぽっ。いえいえ、お兄様の参考書とかも全部準備しておきましたから」
「そうかい。ありがとうシャル」
「ぽっ。いえいえ、お兄様の全ては私が管理しますから」
「そうかい。ありがとうシャル」

 ぷっ(笑)。
 ヒト笑いしたところで、さてその後。

「行ってらっしゃい、アイリス。車に気をつけてね」
「あははははははははははははははっ、ひひっひいひひひひひひひひひひひっ――うぇっ、えほっ、むふっ!? うん行ってくるねーっ!!!!!!!!!!!!!!」

 先に小学校へと通学するアイリスを見送った。なんか噎せてた。元気でよろしい。
 これから明日多とシャルも大学へと向かうことになる。通学は徒歩だ。いやまあその辺はどうでもいいか。
 はい大学までワープっと。


     ※


 問二。なんかみんな性格違わないですか。
 解二。性別が違わないだけ自重したほうですね。
 注釈。では続きをどうぞ。


     ※


 ふたりが到着したとき、すでに講堂はいくつかのグループが陣取っていた。
 まばらに空いている席を抜け、ひとつの集団に明日多とシャルは向かっていく。友人たちのグループだ。
 そのうちのひとり――眼鏡をかけた静かな少女に声をかける。

「――おはよう!」
「ひいっ!?」

 亜麻色の髪を持つ丸眼鏡の少女は、驚いたように肩を大きく震わせた。
 読書に集中していたせいで、明日多たちの接近に気がついていなかったようだ。慌てたように周囲へ視線を巡らせていたが、ふたりの姿を認めると、息をついてずり落ちた眼鏡を直す。
 そして言った。

「お、おはようございます、一ノ瀬くん」
「ああ、おはよう――ガードナーさん。隣いいかな?(さわかや)」
「あ、はい、どうぞ……」

 眼鏡の少女――レヴィ=ガードナーちゃんが席を詰める。空いたスペースに明日多とシャルが腰かけた。
 学年一の才女と名高い主席の子だ。そのレヴィちゃんは言う。

「い、一ノ瀬さんも……おはようございます」
「おはようございます、レヴィさん。……まだ苗字なんですね」
「え、えと……はい?」
「お兄様とは同じ苗字ですから、わたし。こんがらがってしまうので、シャルでいいと言っているではないですか」
「あ、え、あ、はい……その、シャル……さん?」
「うふふふ。レヴィさんは恥ずかしがり屋さんですことね」
「ふたりは仲がいいなあ」

 ははは、と笑いながら鈍感主人公みたいなことを平然と宣う一ノ瀬何某。
 両手に花状態だが、それを意識している様子は皆無だった。辺りからは男子学生たちの刺すような視線が明日多に向いている……わけがない。そんなもん見てない。そんな学生いない。美少女やイケメンにファンクラブがあったりとかしない。生徒会は大層な権力なんて持っていない。現実なんてそんなものである。
 まあオーステリア学生会は持ってるんですけどね。その辺の話は五章でどうぞ。
 てか早く書こう?
 四月馬鹿エイプリルフールネタなんてやってる場合ではありませんよ。すみません。

「――おっとお三方、お揃いで」

 と、そんなようなことを考えていたところで声がかかった。明日多が振り向くと、そこには見慣れた学友の姿がふたり分。
 そのうちの一方――小柄ながら巨乳の少女が、微笑みを浮かべながら言う。

「おはようございます、レヴィさん、シャルさん、アスタくん」

 明日多は答えた。

「おはよう、ピトス。今日も可愛いね」
「うわまた平然と歯の浮くようなこと言いますねー。でも似合いませーん」
「え?」
「おっと失敬。なんでもありません♪」

 性格変わってませんねコレ。

「いや、ほら、わたしいわばメインヒロインみたいなところありますしー? ほかのヒロインどもとはかなり水を開けてるっていうか? 格が違うっていうか? そういうトコあるじゃないですかー。ね? だから今さら、こういうところであざとく人気狙っていく必要もないっていうか? 正直眼中にないっていうか? あともう敵になるのなんて、それこそキュオネさんくらいでしょう? ほら、最近なんか短編とか過去編で幅利かせてるっていうじゃないですか。そこんとこちょっと一度ね? ほら、シメておかないといけないかな? みたいな? 感じですハイー。だってわたしメインヒロインですからー。メインヒロインですからー!」

 何言ってんだコイツ。
 意味がわからないので明日多は首を傾げた。
 シャルが言う。

「あらあら何を仰るかと思えば。所詮は四章であなたの出番は終わりですよ。時代はわたし。五章メインキャラことシャルロットの時代です。エイジ・オブ・シャルロットです」
「エイジ・オブ・シャルロット」
「繰り返すのやめて」
「はっ。所詮はセブスタ最地味シャルドットちゃん如きがわたしに敵うとお思いですか? ちゃんちゃらおかしいですよ」
「地味じゃないしー! 出番多いしー! むしろ三章以外ほとんど出ずっぱりまであるしー!! アンタこそ初登場のときのアレなんなわけ? 何あれ? 『ピトスでしゅ』とか言ってたよね? え? 何? どういう方向目指してたの? ウケるんですけど。ハッ」
「計算ですー。あざとい感じで出てきて一気に持っていたんですー、手腕ですぅー。シャルさんこそメッチャ重要キャラ風に出てきて何? 何あの感じ? 設定に胡坐を掻くから持ってかれるんですー。ざーまあー」
「……パンちゃん(笑)」
「あ?」
「パンでしゅ(失笑)」
「なんか文句あんのか表出ろゴルァ!!」
「上ー等ーだー、こんにゃろー、見てろよオイ! わたしの設定見せてやんぞコルァ!!」

 ふたりはどっか消えました。
 ピトスちゃんといっしょに来たもうひとり――金髪碧眼のイケメンが笑います。

「いやあ、モテモテだなあアスタくんは。羨ましい」
「ウェリウスくん」

 コイツも性格変わってねえな?

「いや、ピトスさんとはこれでも仲がいいからね僕は。僕もほら、のっけから主人公に噛みつくイケメン貴族として登場したから。いやあ、噛ませっぽかったよねえ」

 お前は完全に計算だろうが。

「はっはっは」

 笑うウェリウス。明日多の隣に座り眼鏡っ子が小さく呟いた。

「……また、私の出番が……」

 アナタは締めるところ締めてるから大丈夫大丈夫。


     ※


 問三。ピトスとウェリウスは……。
 解三。こいつらやりたい放題ですからね。仕方ないですね。
 注釈。どうしてここまで読んでしまったんですか。


     ※


 時間ないので展開の都合上、残りはフェオとメロなんで会いに行きましょうね。
 まずフェオから行きます。メロはなんかオチとして尻から煙でも出してればいいんじゃないっすかね適当。

「というわけでフェオだよ! 今からメタ発言するよ!」

 ――はい。

「実のところ、わたしの活躍ってこれからも結構あるんだよね、えへへっ!」

 ――そうなんですか?

「うん。わたしほら吸血鬼で、覚醒イベントもあったってことで、むしろこれからが本番だよ! 三章四章に劣らない活躍があるから、期待しててねっ!」

 ――恋愛面はどうでしょう?

「そ、そういうプライベートな質問は答えないしっ!!」

 ――はっ。

「え、なんで今、鼻で笑ったの?」

 ――まあフェオさんは最終章まできっちり出番のある恵まれ系愛され型ガールですからね。

「あ……えと、どうも……」

 ――押しに弱いところ人気みたいですよ(笑)。

「馬鹿にしてるでしょ!?」

 以上、インタビューでした。続きます。


     ※


 問四。学園とは。
 解四。概念。細かいことは気にしないでください。
 注釈。そろそろ終わります。


     ※


 この日の授業を全て終えた明日多は、所属しているサークル《オカルト研究会》の部室を訪れていた。
 中に入ると、飛び級天才大学生童女のメロ=メテオヴェルヌちゃんがひとりで本を読んでいた。

「あ、おはようアスタ」
「おはようメロ。なんか静かだね?」
「あたしは短編でははっちゃけないと決めている」

 なぜなら尻を狙われるからだ、とメロは言う。
 かわいそうに。

「なんであたしがあんな目に遭わなくちゃいけないのさ……レヴィとかがやればいいよ、実は本編でいちばん地味なのレヴィなんだから」
「おい。よくわからんがやめてやれ。かわいそうだろ」
「せっかく学園編だと思ったのに……あたし学生としてのシーンほとんどないし……なんのために飛び級したのかわかんないよ、もう……」

 落ち込んでいらっしゃった。

「なんだかなあ。やさぐれるよなあ。みんな、あたしがいちばん好き勝手やってるみたいに言うけどさー、絶対そんなことないと思うんだよね。どっちかっていうとピトスとかウェリウスのほうが酷いでしょ、明らかに。どう考えてもあたしより自由じゃん。なんならシャルもじゃん。フェオはいい。フェオは仲間」
「どうした。キャラ壊れてんぞ」
「今さらすぎる」
「それは確かに」
「四章も実のとこほとんど出番なかったしさー。あたしの主役回は六章だしさー。まだまだだしさー。いや、そりゃあたしだって恵まれてるほうってことはわかってるよ? でもさあ、なんかちょっと納得いかないよねー……過去編だって出番削られてるじゃん? あの頃はアスタとも仲よくなかったしさ。ていうかキュオ姉が全部持ってってるまであるしさ。いや、いいよ? いいんだよ? 文句はないよ? でももうちょっとあたしも気を使ってほしいっていうか、もうちょっと構ってくれてもいいんじゃないの? みたいな。舐めんなよ的な。メインヒロインの座はあたしが貰っていくぞ風な。そう言いたい。そういうこと言いたい。ピトスやキュオネがなんぼのもんじゃい、と。そういうことに言っていきたい。フェオはいい。フェオは仲間」
「お前実はフェオのこと好きなの?」
「好きだよ」

 好きだそうだ。
 本編で接点ないのにね。

「やれやれ。天災あたしとしたことが、ずいぶんと丸くなったもんだよ、まったく……」

 メロはポテチをばりばりと齧りながらそんな風に呟いた。
 まあ、どうせ出番多いんだけどね、メロは。


     ※


 問五。え、終わり?
 解五。はい、終わりです。
 注釈。引き続き『セブンスターズの印刻使い』をよろしくお願いします。
※ここから先は普通にあとがきです※

 というわけでエイプリルフール短編でした。
 本編でシリアスを書くために、ここで頭の悪い話を書いておいたという感じです。バランス。
 思い出していただきたいのは、エイプリルフールは「嘘をつける日」だということで、決して妙な短編を書く日ではないということです。
 というわけで。

 次回更新から五章『学院都市陥落』編に入ります。
 よろしくお願いします。

 あ、この話は4/2には別のお話に切り替わるかと思われます。

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