首都直下地震 帰宅控える施設確保を
首都直下地震が起きた際の救助や救援物資の輸送など応急対策のための活動計画を政府がまとめた。
首都直下地震は「今後30年間で発生確率70%」とされ、最悪の場合、マグニチュード7級、死者約2万3000人の被害が想定されている。
生存率が急激に下がる「発生から72時間」の救助を本格化させるため、主要道路を緊急輸送ルートに設定し、がれきや放置車両の撤去を行う。計画のスムーズな実行には、行政の対応以外に、企業や地域、住民一人一人の減災への取り組みが不可欠だ。一丸となって備えを急ぎたい。
計画では、東西南北の8ルートから都心への輸送路確保を目指す。荒川河川敷のサイクリングロードなども活用する予定だ。輸送路が確保できれば、自衛隊や警察など約14万人の応援部隊や、医療チームの移動を迅速に行うことができる。
どうすれば、この生命線を守れるか。帰宅を控えてもらうことが鍵となる。首都直下地震では、最大800万人の帰宅困難者が生まれると推計される。こうした人たちが帰宅しようと道路に出れば、救助の妨げになるだけでなく、火災などに巻き込まれて2次被害を生みかねない。
企業や学校だけでなく、行き場のない人が一時的に避難できる場所が必要だ。だが、そうした施設の確保が進まず、東京都では目標の3割にとどまる。公共施設だけでは限界がある。オフィスビルなどの活用が望まれるが、受け入れた人がけがをした場合に責任を負うことを恐れて二の足を踏む企業があるようだ。免責を含め、適切な仕組みづくりを政府は急ぎ検討してもらいたい。
首都直下地震では、木造住宅密集地での家屋の倒壊や、火災の拡大が被害を広げるとみられている。住宅の耐震化を進め、火災防止のための感震ブレーカーを普及させることが被害を大幅に軽減させる。3日分程度の飲料水や食料の備蓄と併せ、自らの命を守る取り組みを進めたい。
一方、昨年9月の茨城県常総市の鬼怒川の堤防決壊を受け、中央防災会議は水害対策の見直しを政府に提言した。
昨年の堤防決壊の際は、地域によって避難勧告を発表するタイミングが遅れ、浸水域で孤立し自宅で救助を待つ住民が相次いだ。
こうした教訓を踏まえ、どういった防災地図(ハザードマップ)を作れば、住民の適切な避難につながるのか政府に表示方法のモデルを作成するよう求めた。また、市町村を超えた広域避難の仕組み作りを自治体に促した。梅雨の時期になれば、集中豪雨の発生が予測される。提言を生かす道筋を、地域特性に応じ迅速につけてもらいたい。