【社説】韓国都心の大気汚染、中国の責任を問う前にすべきこと

 ここ数日、首都圏を中心にPM(粒子状物質)2.5など大気汚染物質の濃度が大きく上昇している。ソウルの場合、30日午前の汚染物質の濃度は1平方メートル当たり150マイクログラム(24時間平均値)を超えた。国が定めた基準値は1平方メートル当たり100マイクログラムだから、この日の数値は基準値を大きく上回るものだった。京畿道安山市や富川市に至っては、200マイクログラム以上を記録する地点もあった。

 最近の首都圏における大気汚染は、中国から飛来する汚染物質と実はあまり関係がない。北京における30日午後のPM2.5濃度は55マイクログラムで、これは70マイクログラム以上を記録したソウルよりも低かった。韓国政府は国内で観測されるPM2.5のうち、中国から飛来したものは全体の30-50%で、残りは国内で発生したものと推測している。

 その大きな原因となっているのはディーゼル車だ。韓国国内におけるディーゼル車の数は2005年には565万台、全車両の36.6%だったが、15年には862万台へと297万台も増加し、全体に占める割合も41%にまで高まった。とりわけ14年以降は新規の登録車のうち、ディーゼル車の数がガソリン車を上回る状況が続いている。ディーゼル車の排ガス浄化技術が画期的に改善されたことを理由に、韓国政府が05年からディーゼル乗用車を認可したからだ。ところが昨年フォルクスワーゲンやアウディがディーゼル車の排ガスデータを捏造(ねつぞう)していたことが発覚。また韓国メーカーが製造したディーゼル車の走行中の窒素酸化物排出量も、やはり基準値の2.2-10倍に達していた。

 世界保健機関(WHO)は2012年と13年、ディーゼル車の排ガスに含まれる汚染物質を人間への発がん性が立証されたグループ1に指定した。つまりディーゼルエンジンの排ガスはたばこの煙やアスベストと同じく、人間の健康や生命にとって脅威となる非常に危険な物質だったのだ。英国ロンドンでは08年以降、ディーゼルエンジンが搭載されたトラックやバスが市内を走行した場合、500-1000ユーロ(約6万4000円-13万円)の罰金を徴収している。20年からはディーゼル乗用車に対しても130ユーロ(約1万7000円)の罰金を科すという。東京でもディーゼルトラックの都内での走行を禁止している。

 韓国国内で大気汚染により視界が悪くなると、環境部(省に相当)は「中国から汚染物質が飛来した」として注意報を発令し、マスクの使用を呼び掛けている。しかしそれ以前にまずは韓国国内で厳しい大気汚染対策を実行しなければ、中国に対して何も文句は言えないのではないか。老朽化したディーゼル車を廃棄し、排ガス浄化装置を設置しないディーゼル車への取り締まりに加え、ディーゼル車の都心走行を禁止するといった厳しい対策も講じなければならない。またディーゼルエンジンを使用する建設機器など重機に対する取り締まりも必要だろう。

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