李克強首相が演説の中で、最も汗だくになっていたのが、次のくだりを読んだ時だった。
〈生産過剰の問題を解消していく。鉄鋼、石炭などの業種は、新規参入を食い止め、淘汰を推進する。そして「僵屍企業」(ゾンビ企業)を積極的に処理していく。そのために、中央政府は1000億元(約1兆7300億円)の補助金予算を取って、労働者の適切な移転を促す〉
中国経済の分析が専門のRFSマネジメントのチーフエコノミスト、田代秀敏氏が解説する。
「ゾンビ企業の最たる業種が、石炭と鉄鋼です。これらを1年で処理すれば、約180万人の雇用が失われます。
かつて日本は炭鉱の閉山に、半世紀弱もの長い年月をかけて、約20万人の雇用を切っていきました。それを中国は、たった1年で180万人も切ろうとしている。そのため、暴動など激しい抗議に発展するのも当たり前です。
それで李首相は、演説で述べたように1000億元の予算を出すというわけですが、このうちどれだけ失業者への補償金になるのか不明です。むしろ、さらに激しい反発や抗議となるのではと危惧します」
前出の李記者も語る。
「中国経済がここまで悪化したのは、一言で言えば、基幹産業をすべて牛耳っている1100社あまりの国有企業が、経済発展のお荷物になっているからです。
そこで李首相は、'13年3月に就任した当初、国有企業を市場化し、多元化(民営企業と同待遇)し、民営化していく計画を立てた。それを反故にしたのは習近平主席です。
習主席は昨年8月、国有企業を200社から300社に統合し、それらをすべて『党中央』、すなわち自分が完全に指導するとした。つまり国有企業の利権を独り占めすることで、独裁体制を敷こうとしているのです。21世紀の世にこんなことをやっていて、経済がよくなるはずがない」
借金は300兆円
民主国家ならば、政府がこのような「暴挙」に出れば、メディアが警鐘を鳴らし、国民も政府を支持しなくなるだろう。ところが社会主義国の中国では、そうはならない。
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