モンキー的映画のススメ

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モンキー的映画のススメ

主に新作映画について個人の感想、意見を述べた文才のない男の自己満ブログ

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映画「モヒカン故郷に帰る」感想 評価 レビュー

コメディ

3月31日

モヒカン故郷に帰る

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なんとこの日、アカデミー賞作品「ルーム/ROOMとの試写会とこの作品両方当選してしまうというハプニングに見舞われ、悩みに悩んだ挙句こちらを先に見ようと決断し試写会にて鑑賞して来ました。

 

 

 

 

あらすじ

 

モヒカン頭がトレードマークの売れないバンドマン永吉(松田龍平)。妊娠した恋人・由佳(前田敦子)を連れて、故郷・戸鼻島へ結婚報告をするため7年ぶりに帰る。

永吉たちを待ち構えていたのは、矢沢永吉をこよなく愛す頑固おやじ・治(柄本明)と筋金入りのカープ狂の母・春子(もたいまさこ)、そしてたまたま帰省していた弟・浩二(千葉雄大)の3人。家族がそろったかと思えば、のらりくらりの永吉に治が怒り心頭!

いつもの一家総出でド派手な親子喧嘩が始まる。なんだかんだありつつも、二人の結婚を祝う大宴会が開かれたその夜、永吉は治が倒れているのを発見。病院で受けた検査結果はガンだった―。 動揺を隠せない5人の頭に渦巻く「どうする!?」 何をするのが正しいのかわからないけれど、不器用にぶつかりあいながら、喧嘩したり笑い合って離れた時を埋めていく。家族が集まれば、最高で最強! 現代版究極のホームドラマが、この春日本を熱く盛り上げる!(公式サイトより抜粋)

 

 

 

 

 

監督・キャスト

監督はここ5,6年で一番好きな監督の一人、沖田修一監督。

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 もうね、基本ゆるいんですよ作品の空気が。で、コメディセンスもベタで。ユーモアがベタとでも言うんでしょうか。で、そのユルさの中に少しだけスパイシーになる、おっ!ってのがあって気が付きゃホロッとさせる。抽象的ではありますがこんな作風の監督さんです。

 

2009年に堺雅人を主演に迎え、家族と離れ過酷な環境の中、男8人で共同生活していく中で、南極観測隊の調理担当を中心に繰り広げられる喜怒哀楽を描いた「南極料理人」で商業映画デビュー。

その後も、きこり男とゾンビ映画を撮影するさえない新人若手映画監督が、映画製作などを通じて心を通わせていく様を描いたコメディドラマ「キツツキと雨」、

吉田修一原作の小説を映画化し、田舎から出てきた心優しい青年と周りの人たちとの、なんでもない日常だけどかけがえのない青春だった毎日を描いた青春映画「横道世之介」、

そして、演技経験のないおばちゃんたち7人を主演に迎え、幻の滝を見にツアーに参加した中年女性たちが道中で迷子になっていく様子を、コメディタッチに描いたドラマ「滝を見に行く」があります。

 

 

 

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あの頃出会った人たちが、私のことを懐かしく思い出してくれていたら嬉しいな。その逆で、あいつ今何やってんだろうなぁ。と、そんな風に思わせてくれる作品です。

 

大学進学の為に上京した世之介は、お人よし過ぎるし空気読めない。でも一緒にいるとなぜか憎めない、そんな明るく素直な性格の彼が、友情を育み、恋をしたりと青春を謳歌していくのだが・・・。

 

物語は世之介と過ごした学生時代の過去を中心に構成され、時折切り替わる周りの人たちの「その後」である現在をはさむことで、懐かしさと笑いであふれた世之介との学生時代から一変し、忙しくも充実した毎日を送る彼らに、離れていても思い出すことでゆとりと暖かさ、そして会えない寂しさを映し出し、自分の過去の青春時代とダブりノスタルジックにさせてくれる良作です。

蛇とピアス」で体を張って刺激的なサドとマゾを演じた高良健吾吉高由里子のコンビがここまで真逆の演技ができるのか!?と思わせる、素朴で底抜けに明るい2人を好演しています。特にこの吉高由里子は彼女史上一番かわいい!!トリスのCMよりかわいい!

未見の人は是非。

 

 

 

 

主演のモヒカン頭のバンドマン永吉役に松田龍平。

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ご存知松田優作の息子さんであり、松田翔太の兄。個人的にはお兄ちゃん派です。

最初こそユニセックスで危うい感じの印象でしたが、今では完全に浦沢直樹の漫画の主人公のような、無精で 男くさくてゆるくて頼りなさそうだけど男前な感じ?どんな感じだ!?

とにかくお父さんに似てきてますよね。風貌といいしゃべり方といい。

 

大島渚監督の時代劇「御法度」で衝撃的なデビューを飾った後、

不良たちが屋上で賭けた根性試しでリーダーとなってしまった主人公と仲間たちが描く、めんどくさくて退屈でいらだってばかりの毎日を綴った青春映画「青い春」、

劇団大人計画の松尾スズキが始めて監督し、石で漫画を描くモテない青年とコスプレ好きのOLが織り成すドタバタラブコメ「恋の門」、

小林多喜二原作の小説が突如ブームとなり実写化され、船の中での劣悪で過酷な労働環境と罵声と暴力で権力を誇示していた監督に船員たちが反撃ののろしを上げる「蟹工船」、

日本アカデミー賞最優秀主演男優賞を受賞した作品で、真面目が取り柄の青年が個性あふれる同僚たちと長い年月をかけて新しい辞書を作っていく「舟を編む

などがあり、近年ではTVドラマにも出演するようになり、「あまちゃん」でのマネージャー役だったり、映画からのドラマという流れで作られた「まほろ駅前番外地」などがあります。

オーッと忘れちゃいけない!人気シリーズ「探偵はBARにいる」での大泉洋演じる陽気な探偵と彼演じる助手の高田のヌケっぷりの掛け合いが絶妙です。これもオススメ。あ、1だけねww

 

 

 

モヒカンの恋人・由佳役に前田敦子。

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AKB48としてアイドルのトップとして君臨し、卒業後は女優業に専念してる彼女ですが、スゲー映画見てますよね、この子。最初は映画界に足を踏み入れるためのビジネスホビーなのかと思いましたが、どうやら違うっぽいです。去年の1位マッドマックスって言ってるしwww

あっちゃんの演技は他の女優さんと違って、素なのか演技なのか境界線が見えないところがいい。キムタクみたいな、何演じてもあっちゃんに見える。よくいえばわざとらしくない。だから、名だたる監督が起用したがるのがわかる。あと5年位したら大化けするのかなww褒めすぎかw

 

アイドル時代も何本か出演してますが、一応「女優 前田敦子」wwということで卒業後の出演作品を。

社会の底辺で生きる、金もない友達もいない女もいないロクデナシの青年の恋と友情を描いた「苦役列車」で青年が思いを寄せる古本屋の女性を健気に演じ、

その「苦役列車」の山下敦弘監督の次作で、大学卒業後実家へ帰省したものの、就職もせず、家の手伝いもせず、のらりくらりで食っちゃ寝な毎日を送る主人公が、小さな一歩を踏み出すまでを描いた「もらとりあむタマ子」で主演のタマ子を演じ、かつてアイドルだった人とは思えないほどのギャップに驚かされ、

去年は「さよなら歌舞伎町」で、デビューするために恋人に内緒で枕営業しようとするミュージシャンを演じたり、「イニシエーションラブ」では、80年代ファッションを身に纏い主人公を翻弄させる彼女を熱演したりと、イメージを脱却したいのか、演技の幅を広げたいのか、どんな意図があるかはわかりませんが新境地を切り開いたと思います。

 

 

もらとりあむタマ子 [Blu-ray]

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 頭ボサボサ、ノーメイク、飯をかっ込み練るだけのぐうたら生活を送るタマ子が、仲のいい近所の中学生やアクセサリー教室の先生、そして、父と食卓を囲んで向かい合うことで、町の移り変わる四季とともにゆっくりと前に進もうと決意していくひじょ~にゆるいお話なんですが、

前田敦子史上一番いい演技してます。彼女もいいんですが、お父さんがまたいい。母親が居らず2人の間に入るのがいないので食卓を介さないと話のできない難しい関係なんですが、彼女とともにお父さんもゆっくりと前に進もうとしてるのがまたいいんです。正直ほのぼのしててなんだこの映画?と思う人もいると思いますが、ハマる人はハマると思います。

 

 

 

 

 

他にも、永吉の父・治を演じるのが柄本明、母親役をもたいまさこ、弟・浩二を千葉雄大が演じます。

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このキャストでいったいどんなホームドラマになっているのか。

では、感想です!

 

 

 

 

 

 相変わらずのユルさと笑いと涙が混ざったホームドラマ!

以下、確信に触れずネタバレします。









これが沖田流のコメディだ!

どちらかと言うと監督の作品では「キツツキと雨」に近いものがあったと思います。
小栗旬のヌケた演技と役所広司のギラついた演技の対比を松田龍平と柄本明がやっている。ただ、柄本明演じる治は病に冒され弱っていくからキツツキと雨とは違った流れとほっこりさが生まれてくるわけなんですが。

とにかく5分に一度はクスっと笑えるのが心地いいです。

一場面一場面と切り取れば笑いの波の弱いシュールなコントのようなつくりで、笑わせようとしてないんだけど必然的に笑っちゃうよね、って作り方が監督のいいところで。
日常って実はこんなに笑えるようなことがあるんだなぁと教えてくれているように毎回感じます。

冒頭のライブハウス。ハードコアバンドになぜかテルミン演奏していたり、対バンあるあるでもある前の客だけ盛り上がって後ろは冷めてる、
あーいつもの沖田節がくるよーコレ!と感じさせる演奏シーンから、楽屋で発する永吉の今作での名セリフ!
是非このセリフを覚えておいてください。後でコレが効いてきますw

他にも親父のやりたいことを叶えるべく、昔食べたどの店か思い出せないピザを食べさせるため、パンクな精神なのかオヤジ譲りがはわかりませんがドントシンクフィール!なノリで片っ端から頼み、しかも家のある島までデリバリーさせたり、
矢沢永吉に会いたいという願いを叶えるべくとんでもない行動にでたり。

こんな感じでパンクな衣装と性格とセリフが役柄と松田龍平が持つオトボケな雰囲気を醸し出すギャップが非常にユーモラスなものになってます。

そんな息子の父親である治も、矢沢永吉を愛するばかり、たった10人ばかりの吹奏楽部にアイラブユーOKを演奏させることが生き甲斐のちょっと変わったオヤジであり、この吹奏楽部の生徒たちとの掛け合いも非常に面白い。

他にも体調が悪化しベットでの生活を余儀なくされるんですが、一言言うたびリクライニングを使っては戻し使っては戻しの天丼を取り入れたりと見せ場は尽きないです。


ガンコで意地っ張り、そして家族に辛いところを見せない強がりなオヤジなんだけど時折見せる優しさとデカイ笑い声と愛嬌を兼ね備えた、ザ昭和のオヤジを柄本明が見事に演じていました。
何よりひとつひとつの表情のバリエーションが豊富で全て面白く感じる、ホントに芸達者な方だなぁと感心します。

柄本明なんて小学生の頃「志村けんのバカ殿様」に良く出る志村と仲良い人くらいの印象でした。当時はこんなすごい役者だなんて思いもしなかったなぁ。




親の心子知らず

家族のアットホームな話なんだけど、軸となるのは父と息子の物語
鳴かず飛ばずのバンドマンである永吉と生計を立てる彼女の間に子を宿すことで結婚の報告をすべく6年ぶりに帰郷、そんな生活でやっていけるわけなんかなく頭にくる治。
うん、よくあるパターン。
でも、治は末期ガンと診断され入院するも完治は無理、最初こそ禁煙したにもかかわらずタバコを薦めるような冗談半分な栄吉も徐々に悪くなっていく父を見て、身ごもった彼女とともにしばらく共に過ごすことを決めたわけですが。

まだ独身の自分にとってはやはり永吉目線で見てしまうわけで、いざ自分に置き換えてみれば、やはり同じことをするのだろうな、と。
でもって急に親孝行したくなって何か欲しいものはないか?とか何かしたいことはないか?とか言っちゃうんだろうな、と。

そして、子供はそう思っていても親はその優しさが重荷になっていることを治は吐露します。
お前が優しくしたら明日にでも死んでしまいそうだ…東京に帰れ、と。

ほのぼのな笑いをたくさん詰め込んでいる中にも、ちょびっとシビアなシーンを入れることで、ただ笑える作品ではなく、子としてこれから訪れるであろう親の死をどう受け止めるかを考えさせるものにもなっていました。

もちろんそこは泣かせるように作ってなくてギリギリのところでニヤッとさせてくれるのでこれもまたうまいなぁ、と。




終始ハマっていなかった前田敦子

今回一番ダメだなと思ったのは前田敦子でした。
やはりこの人は無理に役作りしてはいけない人で、単に監督のキャスティングミス、もしくは人物設定を変えるべきだったのかなとも感じました。

ネイルサロンで働く由佳は、ひょんなことから永吉と出会い同棲。由佳曰くバカな自分には永ちゃんくらいしか一緒になってくれる人がいないと思っている、という馴れ初め。

で、想像つくかと思いますが少々偏差値の低そうな、いや現代っ子、ん、もしかしたら10代?レベルな感じの役柄。
これをあっちゃんは頑張って色々とオーバーな演技をし、誰にでもタメ口なギャル気質な口調で喋るという、あまりあっちゃんに似合わないような役柄になってました。
しぐさや言葉が自然に感じないし、アンサンブルをしてても1人だけ浮いてしまっているのが手に取るようにわかってしまう。

序盤、寝ているところを起こされる由佳のしかめっ面の寝顔は一瞬ダウンタウンの浜ちゃんにしか見えず私だけ笑ってしまい、これはあっちゃんそういう役回りで楽しませてくれるのかい?と期待していたのも束の間、「テメー起こすんじゃねーよー!!」というセリフを聞いて、あ、これ、あかんやつや。と早々に彼女に見切りをつけましたww
やっぱり内容で楽しもうと。


基本あっちゃんは当たり外れの多い女優さんだと思います。当たってる時はズバ抜けていい演技するんだけど、ハズレの時は見てられないほどひどい演技をする。今回は後者になってしまったようです。







けっこう褒めた内容ですが、監督の作品を見てきた人にとっては物足りなさの方が多いかもしれません。私もそう感じた1人。
笑い所がこんなになくてもいいからもうちょっと話に深みを入れて欲しかった。親の死を扱うのだから、そこは。
あと少し短くしても良かったかも。

それでも嫌いな作品ではないし、年齢を問わず楽しめる作品だと思います。
色んな世代が参加した試写会での大きな笑い声の連発がそれを物語ってるはずです。

親子で観に行けば最高なんじゃないでしょうか。

満足度 ☆☆☆☆☆★★★★★5/10