2007年2月3日(土)
漫画界に「驚愕の才能」 津野町の古味直志さん
漫画王国高知から新たな才能――。人気漫画雑誌「週刊少年ジャンプ」が募る新人漫画賞で、高岡郡津野町船戸の古味直志さん(20)の作品「island(アイランド)」が見事準入選を果たした。月1回の同賞は40回以上を数えるが、まだ入選作はなく、準入選も2人目。快挙は誌面で「編集部騒然!! 驚愕(きょうがく)の才能現れる!!」と紹介され、作品は1月発売された同誌の増刊号「赤マルジャンプ」に掲載されている。
小さいころから絵が得意で漫画を描くことが大好きだった古味さん。年中漫画のことばかり考えて過ごす子どもだった。
梼原高校時代は美術部の仲間と「ひたすら楽しく漫画を描いた」。そして抱き続けた漫画家への夢をかなえるため、兵庫県の専門学校の漫画学科へ進んだ。専門学校には才能にあふれる級友たちがごろごろ。それでも「ライバルができたのがうれしかった」と、さらに研さんを重ねた。
転機は一昨年の7月。漫画の編集者に作品を見てもらう学校主催の持ち込みツアーに参加し、1年かけた力作を7誌で披露した。「無駄なカットがある」「このキャラクターはいらない」などと指摘を受けたものの、複数の編集者から「次の作品ができたら送って」と勧められた。ジャンプの編集者からは後日、「新作はまだ?」との連絡があった。
以来、編集者と電話で連絡を取りながら新作作りをスタート。何度も書き直しや内容の変更を繰り返して昨年6月、「island」を完成させた。壁に囲まれた世界で暮らす2人の少女が、外の世界に飛び出して行くまでの試行錯誤や葛藤(かっとう)を描写。すがすがしい読後感と筆力に圧倒される。
作品は、同誌が新人作家発掘のために15年から毎月行っている「十二傑新人漫画賞」に応募。「物語をうまく盛り上げまとめる構成力があり、キャラクターの感情をきちんと描けている。丁寧な描写がそれらを引き立てた」と高い評価で、昨年8月に史上2人目の準入選に輝いた。
古味さんを支えるのは家族の応援だ。専門学校卒業後は兵庫に残ることも考えたが、両親の「アルバイトをしながらだと無理がいく。それなら帰ってきて漫画に集中したらどうか」との言葉に甘えた。
自宅で漫画制作に励む姿を、4人の兄や姉、弟たちも見守ってくれた。「家族には本当に感謝しています」と古味さん。漫画賞の賞金60万円はすべて両親に手渡した。
「息子にこんな才能があるとは思わなかったが、今では一番のファン。子どもからお年寄りまで幸せにできるような漫画を描いてほしい」と父の勇一さん(56)と母の美千子さん(52)。担当編集者も「構成力、筆力、演出力など、この年齢でこれだけ描けるのは驚き。可能性は無限大です」と期待を込める。
今の目標はジャンプで連載を持つこと。「複数の構想を持っている。自信はあります」と力を込める古味さん。今日も四万十川源流の町でペンを走らせている。
【写真説明】ペンを走らす古味さん。朝方まで専念することもある(津野町船戸) |