北朝鮮「ソウル攻撃想定し長距離砲の演習」

北朝鮮「ソウル攻撃想定し長距離砲の演習」
k10010456011_201603251556_201603251557.mp4
北朝鮮の国営メディアは25日、韓国の大統領府などへの攻撃を想定した長距離砲による大規模な攻撃演習を実施したと伝え、合同軍事演習を行っているアメリカと韓国への威嚇を続けています。
25日付けの朝鮮労働党の機関紙「労働新聞」は、キム・ジョンウン(金正恩)第1書記の立ち会いのもと、韓国の首都ソウルにある大統領府や政府機関への攻撃を想定して「長距離砲の集中攻撃演習が史上最大規模で行われた」と伝えました。
今回の演習は今月21日に韓国軍が上空から特殊部隊を送り込んで北朝鮮の主要な施設を攻撃する想定で行った訓練に対抗して実施されたもので、新聞に掲載された写真には百数十門に上るとする長距離砲などが海岸から一斉に火を噴いたり、砲撃の目標となった島が黒煙に包まれたりしている様子が写っています。
北朝鮮は今月に入って毎週、日本海に向けて弾道ミサイルやロケット弾を発射しているほか24日も「固体燃料のミサイルエンジンの燃焼実験に成功した」と国営メディアが伝えるなど、ミサイルの開発技術を誇示しています。
北朝鮮はことし5月に開かれる36年ぶりの朝鮮労働党大会に向けて国内の結束を図る一方で、合同軍事演習を行っているアメリカと韓国への威嚇を続けています。

パク大統領「いかなる脅しにも揺らがず」

韓国のパク・クネ(朴槿恵)大統領は、北朝鮮が威嚇を続けるなか25日演説し、「わが国はいかなる脅しにも揺らぐことはない」と述べて、北朝鮮がさらなる挑発行為に出た場合には、断固とした対応をとる考えを強調しました。
韓国政府は、6年前に韓国軍の哨戒艦が沈没して兵士46人が死亡した事件や、民間人を含む4人が犠牲になったヨンピョン(延坪)島砲撃など、北朝鮮による軍事挑発の多くが朝鮮半島西側の黄海で起きていることから、ことしから3月の第4金曜日を「黄海守護の日」と定めました。
この日に当たる25日、パク・クネ大統領は、中部テジョン(大田)の国立墓地で行われた犠牲者を追悼する式典で演説し、「わが国は、いかなる脅しにも揺らぐことはない。北の無謀な挑発は、自滅の道につながるだけだ」と述べ、北朝鮮をけん制しました。
また、南北が共同で運営してきたケソン(開城)工業団地の操業を中断したことに言及し、今後も国際社会と連携して制裁措置を強めていく姿勢を示しました。
さらにパク大統領は「北は今、孤立無援の状態で、無謀な挑発を行う可能性が高まっている」と指摘し、25日も韓国大統領府への攻撃を想定した長距離砲による演習を行ったと伝えるなど、威嚇を続ける北朝鮮が、さらなる挑発行為に出た場合には、断固とした対応をとる考えを強調しました。

北朝鮮の国営メディアが、韓国の大統領府などへの攻撃を想定した大規模な演習を実施したと伝えたことについて、韓国統一省のチョン・ジュンヒ(鄭俊煕)報道官は、25日の記者会見で「北は国際社会の制裁に対して、攻撃的で挑発的な言動をしてはならない。北の住民と南北関係に役に立つ方向に進むことを促す」と述べて非難しました。
そのうえでチョン報道官は、北朝鮮がこのような挑発的な態度をとっているのには2つの理由があるとし、「対外的には、北への国際的な制裁が無力だという認識を広めることであり、内部的には、キム・ジョンウン第1書記の権威を高めることで、体制の結束を狙っている」と説明しました。