「憲法調査会」論戦はじまる。
国会の憲法論議をいかに進めるか。
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大きな一歩
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−先生は、昭和五十一年に初めて立候補されて以来、一貫して自主憲法制定を公約に掲げてこられました。今年、国会に憲法調査会が設置されたわけですが、憲法をめぐる現在の状況をどう思われますか。 |
平沼 私は、小さいころから政治家を志していましたが、政治家になる以上国の基本である憲法はこのままではいけないと考え、一貫して自主憲法制定を公約に掲げてきました。そのせいかは分かりませんが、はじめて立候補したときから二期連続して落選しました。その間、故中川一郎先生とご縁ができ、中川先生が応援してくださることになったのですが、それは、私のパンフレットに「自主憲法制定を期す」と書いてあったからです。私の政治生命がかかった三回目の選挙のとき、中川先生に岡山まで応援に来ていただいたのですが、私が憲法の話ばかりするものですから、さすがの中川先生も「憲法の話ばかりするな」と(笑)、そう言われたのを覚えています。
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−その選挙ではトップ当選を果たされました。 |
平沼 それ以来、国会議員として六期二十年が経ち、私も様々活動してきましたが、党内にも護憲勢力があったり、歴代内閣の判断で具体的な形には結実せず、非常に歯がゆい思いをしてきました。今回、常設の憲法調査会が出来たことは、遅きに失した感はありますが、大きな一歩を踏み出したと思います。ここまでくるのに、ずいぶん長い道のりでした。
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まず憲法の柱を
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−今、各種世論調査では、七割を超える国民が憲法論議の必要を指摘しています。憲法論議では、何をテーマとすべきとお考えですか。 |
平沼 私の基本的な考え方は、日本は聖徳太子の憲法十七条、大宝律令をはじめ、千五百年近くつづく法治国家であり、その歴史の上に立って、国の最高法規としての憲法を定めなければいけないということです。
どこの国の憲法典でも、その前文で歴史、伝統、文化に言及しています。例えばアメリカでもメイフラワー号でアメリカ大陸へ来て、デモクラシーの理想の新天地を築くという、歴史を踏まえた国家のアイデンティティーを明確にしているわけです。ところが、日本国憲法は、それを捨象し、アメリカ人のニューディーラー達が理想とした、ハーグ不戦条約などの精神だけを盛り込んでいる。そういう理想を全面的に否定するものではないけれども、しかし、憲法の柱とすべきは、自分の国の歴史、伝統、文化であると思います。
それと、やはり憲法九条が問題です。今まで解釈で乗り切ってわけですが、今、集団的自衛権の問題に突き当たっています。憲法に自衛権の存在を明記し、国連の平和維持活動にも自衛隊が大手を振って参加できるように、誰が読んでも分かるように九条を改正しなければなりません。
さらに、今の憲法は元首が明確に規定されていません。諸外国は天皇を日本の元首と見ているわけですが、君臨すれど統治せずという君臨の部分ですね。国を代表して国事行為などを行われる、そのような元首規定をつくらなければならないと思います。その他、翻訳調の文章を改め、時代に合わないところは変えなければならない。検討すべき課題は多いと思います。
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真の改憲政党へ
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−今回の憲法論議を前にして、各党、各議員の様子はいかがですか。 |
平沼 各党様々な思惑を持って憲法調査会に参加していますが、残念ながら、自民党の中にも、牢固たる護憲論者がいて、平和憲法代議士などと自称しているのがいるわけです。
憲法改正ができなかったのは、私も含め、政治家の責任だと思っていますが、なぜ、改憲を党是とする自民党が憲法を変えることが出来ず、中には護憲代議士まで存在することになったのか。自民党の歴史を紐解くと、昭和三十年に自由党と民主党が大同団結して、保守合同で自由民主党が出来ましたが、それは、戦後の保守政党の悲願として自主憲法を作ろうと、そのため国会で三分の二を制するために保守合同したわけです。
当然、初代の鳩山一郎総裁は憲法改正を掲げましたが、当時は戦後十年しか経っておらず、戦争の生々しい体験記憶が残っているところに、日教組、労働組合、文化的進歩人、マスコミなどがこぞって、「二度と教え子を戦場に送るな」などと反戦運動を煽り立てた。それで自民党は第一回の選挙で負けました。その次の岸信介総裁も意欲を持っていましたが、そのときは六十年安保の大改定があり、憲法改定をおいてでも安保改定をやったわけです。これも日本中を巻き込む騒動となりました。この経過を経て、その後の歴代内閣は、「羮に懲りて膾を吹く」ということになり、池田勇人総裁は「私の存在中には憲法には一切触れません」と表明し、佐藤栄作総裁の代になると、「憲法は定着しているので経済最優先で行きます」ということになってしまった。それ以来、自民党は経済政策を最優先とし、憲法をタブー視して避けてきました。
ですから、自民党が今の憲法改正を求める声に答え、新しい時代を担う真の改憲政党になるためには、今までの路線を真剣に見直していくことが必要だと思います。
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改憲の必要性を明らかに
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−今後、どのように憲法改正を進めていこうとお考えでしょうか。 |
平沼 ようやく憲法調査会という足がかりができたわけですが、五十年以上にわたって現憲法が続いてきたわけですが、五十年以上にわたって現憲法が続いてきたわけですから、やはり最低五年くらいの議論を重ね、その過程を国民に周知徹底しながら、改憲の必要性を明らかにしていかなければならないと思います。あまりの拙速は駄目だと思います。
そして、憲法調査会での議論の進行にあわせ、政治家は外へ出て訴えていかねばなりません。積極的に行動していかねばならないと考えています。 ( 2000年3月24日「日本の息吹」インタビュー ) |
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