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 障害者差別解消法が4月1日にスタートします。障害のある人もない人も同じように暮らせる社会にするのが目的です。どんな法律なのでしょうか。当事者の思いや企業の動き、課題などを2回にわたって紹介します。

 

■幅広い事業者が対象

 「待ち望んでいた法律がやっとスタートする。感無量です」。東京都の会社社長、中沢信さん(54)は、かろうじて動く左手で電動車いすを操作しながら笑顔で言った。

 これまで、飲食店に入るのを断られる、銀行でATMの操作を手伝ってほしいと伝えても対応してもらえない、などの苦い経験をしてきた。

 この法律は、こうしたことが起きないよう《不当な差別的取り扱い》の禁止、《合理的配慮の提供》を国、自治体、民間事業者に求める。国や自治体が相談窓口を設けることも明確に位置づけた。事業者はお店、交通、不動産、病院、学校など幅広い。

 3月半ば、仕事を終えた中沢さんは、予約したなじみのビアバーに向かった。店のドアは手動で、自分では開けられない。手を振り合図すると、店員がドアを開けて迎えた。テーブルの高さは車いすに合わせて低めに調整され、グラスは中沢さんが持ちやすい脚付きが用意された。

 中沢さんは「これが僕にとっての合理的配慮。ちょっとした気遣いでバリアーは越えられる」と話す。「自動ドアにかえてもらうのは店の負担も重いし現実的ではない。段差があるお店では、車いすを持ち上げてくれる店員もいます。ハードよりハート。対話を重ねて折り合ってきた」

 

■「自分のこととして考えて」

 今月15日、障害者差別解消法に関する企業向けセミナーを開き、パネリストの省庁の担当者を前に、中沢さんは「法律をきっかけに、障害のある人の不自由さを自分のこととして考えてほしい」と呼びかけた。今後、米国への視察ツアーも計画している。

 知的障害のある横浜市の奈良崎真弓さん(38)は仲間のために、法律をわかりやすい表現で発信する準備を進める。「差別」は「つらいこと、悲しいこと」。相談は「わからないことを聞くこと」という具合だ。施行にあたり、「見た目で障害がわかりづらいこともあるし、一人ひとり違う。手助けを迷う時は遠慮せず聞いてほしい」。

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