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「いま、ここ」でテロに遭遇したら…生き残るために知っておきたい5つの基本

ベルギーのブリュッセル国際空港で、3月22日に起きた爆発では14人が犠牲となった
PHOTO:KETEVAN KARDAVA / GEORGIAN PUBLIC BROADCASTER / AP

ベルギーのブリュッセル国際空港で、3月22日に起きた爆発では14人が犠牲となった
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3月22日、ベルギーの首都ブリュッセルの国際空港と地下鉄で同時テロが発生。少なくとも30人が死亡し、180人以上が負傷する大惨事となった。

西側諸国でこうしたテロが相次いていることからわかるように、突然の銃撃や爆発はもはや紛争地だけのものではなく、我々の身近なところで発生する可能性が充分にある。
では、もし実際にテロの現場に遭遇したときに、自分の身を守るためにはどうすればいいのだろうか?
英「BBCニュース」で専門家たちが語った、身を守るための極意を紹介しよう。

1 備えあれば憂いなし

軍事サバイバルインストラクターのジョン・リーチによれば、まず「テロは起きるものだ」と心の準備をしておくことが重要なのだという。

たとえばパリ同時テロ事件では、多くの人が最初の銃声を花火か何かと勘違いしたせいで避難が遅れた。
リーチの行った調査では、テロのような危機的な状況で自分が助かるために何らかの行動を起こせた者は、全体のわずか15%だったという。75%は気が動転するばかりで何もできず、残りの10%はさらに悪いことに自ら生存の可能性を減らすような暴挙に出てしまった。

人間は予想外のことが起きるその状況に即応できず、自らを追い込んでしまう。だが、「テロが起きる」と想定していれば、おのずと普段の行動も変わってくるはずだ。レストランや映画館に入ったときに非常口を確認する癖をつけておけば、自分以外の人命を救うのにも役立つだろう。

また、ある心理学の実験で、部屋に煙を充満させて被験者がどんな行動をとるか観察したところ、誰かと同じ部屋にいる人より個室にいた人のほうが、能動的に避難行動がとれた。緊急時にはつい周囲の人間の行動が気になってしまうものだが、自分の判断を信用することも場合によっては大切だ。

2 “標的”にならないために

元英軍兵士で、現在は警備会社のCEOを務めるイアン・リードは、犯人から攻撃される可能性を減らすため、地面に伏せたり、何かに身を隠したりして、自分が標的になる可能性をできるだけ減らすことが望ましいと話す。

これを実践した例としては、昨年1月にパリで起きたユダヤ系食料品店襲撃事件が挙げられる。店の従業員だったラサナ・バシリーは、地下にある冷蔵庫の電源を切り、そのなかに買い物客を隠した。そして、自分は1人で外に出て警官に助けを求め、多くの人命を救ったのだ。

英紙「デイリー・テレグラフ」に掲載された、英国政府発表の「テロから身を守るための行動指針」によると、隠れる際にはレンガ造りのしっかりした壁や強化壁を選んだほうがいいという。ガラスや木造、車はないよりはましだが、弾丸が通過する可能性が高いのだ。
また、自分から犯人が見える場合は、相手からも見えるということを覚えておこう。携帯の着信音はテロリストを刺激するので、音が出ないように設定することも忘れずに。

もし不幸にも弾に当たった場合、犯人がまだその場にいるのなら動かないほうが賢明だと冒頭のジョン・リーチは言う。何か動くものがあれば、犯人はそれを狙ってくる。事件現場が暗いなら、なおさらじっとしていよう。

3 逃げるときの注意事項

英国政府の行動指針では、安全な道が確保されている場合は逃走することが勧められている。重い荷物は置いて、周囲の人にも「一緒に逃げよう」と声をかけよう。

幸運にも逃走に成功した後は、できるだけ遠くに逃げてから、冷静になり、最寄りの警察機関に助けを求める。警察機関に電話をする場合は、犯人を最後に見た場所、人数や彼らの見た目、武器の特徴、人質や犠牲者の状況をわかる範囲で伝えるとよい。

警備会社のCEOイアン・リードは人が大勢集まる場所や、公共交通機関を使うのは避けるべきだと話す。
「テロが発生した場合、第二、第三の爆破や攻撃がある可能性が高いからです」

4 犯人に立ち向かうべきか?

昨年8月、アムステルダム発パリ行きの国際列車内で、テロ未遂事件が発生。たまたま乗客として乗り合わせた米兵が、隙を見て犯人を取り押さえて大惨事を免れた。

だが、これは特例だ。リードは、「一般人が犯人に立ち向かうのは良策ではありません。さらなる危険に身をさらすようなものですから」と述べる。

確かにパリ同時テロ事件の前日に起きたベイルートでの自爆テロでは、近所に住む自動車整備士のアデル・テルモスが犯人に飛びかかり、被害の拡大を防いだ。だが、テルモス自身は、犯人の自爆用ベストの爆発によって死亡したのだ。

なかには、「たとえ危険であっても、戦わなければならないときもある」と主張する心理学者兼人質交渉人のジェームズ・アルヴァレズのような者もいる。

「ジハード戦士は、『死は名誉』だと考えています。彼らは銃で撃たれることを恐れていないし、静かに死のうとも思っていません。そんな彼らと正攻法で交渉して、テロをやめさせるのは不可能に近い。攻撃の準備をしておくことも必要なのです」

5 “助け合い”が生存率を高める

心理学者で群衆行動の専門家クリス・コッキングによれば、「緊急時、人々が互いに協力して助かろうとすればするほど、生存率が上がる」という。

2005年にロンドンで起きた同時テロ事件後、コッキングは多くの被害者に取材をした。そして、集団が避難するときに最も有効な方法は、「互いに助け合うこと」だという結論に達した。
つまり、非常口に殺到してお互いを押し合うような事態は、絶対に避けるべきなのだ。

またコッキングは、「極限状況に陥ると、人は『集団』としてのアイデンティティを重視するようになり、自然とお互いに支えあおうとする傾向が強まる」と話す。

パリやブリュッセルで起きた同時テロ後も、世界中の人々が犠牲者への哀悼とテロへの怒りを共有した。このようにテロを防ぐための連帯を深めることが、「暴力のない世界」に近づくための第一歩なのかもしれない。

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