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 戦争の発生は人間の本能に根ざしたものではない――。そんな論考を、山口大と岡山大などの研究グループが縄文時代の人骨の分析から導き出した。英科学誌バイオロジー・レターズ電子版に30日発表した。

 研究グループは、狩猟採集によって暮らしていた縄文時代の2582体分の人骨のデータを全国242カ所から収集。うち大人1044体で傷を受けていたのは19体にとどまった。ここから、暴力による死亡率は1・8%だったと結論づけた。

 研究グループの山口大の中尾央(ひさし)助教(科学哲学)によると、先行研究では、欧州や米国、アフリカなどの狩猟採集時代の暴力死亡率は十数%に上り、「戦争は人間の本能によるものだ」とされてきたという。中尾助教は「戦争の発生は人間の本能によるものではなく、環境、文化、社会形態などの要因によって左右される」と説明している。(寺尾佳恵)