会社で新しく中途入社された方がおり、3週間ほど教育係を担当しました。*1
新人教育というのは実際やってみると、意外と「教える側の個性」が出るものなのだなぁと感心したので、今後のメモを兼ねてわたしが伝えたことを記録します。*2
入社する新人さんのメンターになるので「よーし最強のカスタマーサポート育成するぞー」という心持ちでいるけど、私が教育すると確実に会社で浮くことになると思う
— 深町ミネコ (@meymao) February 29, 2016
■メモをとる癖をつける
教えてもらった仕様や感じたこと、疑問点など、こまめにノートにメモを取る癖をつけましょう。短期記憶はすぐに忘れる可能性が高いです。また書く行為自体、学習に向いています。
メモをしたうえで、ナレッジ化したほうがよさそうなものについては、他のひとが読んでも分かるように内容を整理して、情報共有ツールなどにまとめましょう。
知識を溜め込むだけに留まらず、積極的に共有し、知識やノウハウが属人化しないように心がけてください。
■疑問をもつ
疑問や違和感を持てるということは、とてもよいことです。そこに改善の余地や問題解決の糸口があります。
疑問がもてたら、疑問をもてたことを自分でこっそり褒めて、たのしんでください。どこに疑問を抱いたか、違和感をおぼえたかを掘り下げて、どうすれば解消されるのかを考えましょう。
■発言・発信する
疑問を持ち、掘り下げてメモに残したら、それで終わらず発言しましょう。問題提起することで、はじめて改善のスタートに立てるのです。
また、自分が学んだことや気づきのあったことなどについても、社内情報ツールやブログでも結構ですので、発信してください。ひとに読んでもらう文章を作る練習にもなりますし、知見を共有することで誰かの役に立つこともあります。
■質問する
メモを取っても理解できない、なかなか覚えられない、分からないところがある、というときは、気軽に質問してください。遠慮や空気を読むなんてことを覚える必要はありません。わたしは基本的にあなたの質問に答えることを最優先します。
あなたが覚えられずよく聞いてしまう仕様は、わたしの教え方に問題があるかもしれないし、苦手なジャンルとして認識・対策できるかもしれないし、あるいはそもそもの仕様に改善の余地がある場合もあるんです。
■自己アピール
大まかな仕事ぶりは把握できますが、残念ながら会社や上司がすべて正当にあなたの能力や適性を評価できるわけではないんです。みんな人間なので、そこまで万能ではありません。
できること、してみて出した成果、これからしたいことなど、アピールできるところは積極的にアピールしてください。
■世界は思うほど型にはまっていない
意外と世界はゆるやかな総体としてできています。
「下っ端なのでこうしたほうがよい」「自分はここまでしか任されてないからそれ以外はしないほうがよい」だなんて自分から狭い型に入って萎縮、自重せずに、よりよくするためにイメージできることを実践していってください。
■「普通なら〜」や「常識的に考えて〜」は害悪
自分の(無意識に定着している)価値観に注意してください。
「普通なら××すべき」や「常識的に考えて△△だろう」などとオートマティクに物事を捉えないでください。普通や常識(とあなたが考えていること)が適切でないこともありますし、同調圧力になったり、齟齬を生じさせる原因にもなります。
「普通」や「常識」で語らず、自分自身で考えた結果として発言してください。
■他人の評価は自分でする
会社のなかには、他のひとの評価や噂をあなたに吹聴するひともいるかもしれません。
よい評判もあれば悪い評判もあるかもしれませんが、他人の評価を鵜呑みせず、自分自身で直接物事を判断してください。
先入観をもってひとや物事に接することは、コミュニケーションを阻害するだけでなく、不当な基準で評価する悪い癖をつけます。
■「あいさつ」はしたほうがよい
あいさつをしようかなー、でも相手から返ってこなかったり、うざがられたりしないかなーと躊躇ってボソボソっとしたあいさつで終わらせたくなるときが(わたしには)よくあります。
あいさつを「したほうがよいかな?」と迷い、ボソボソっとあいさつするくらいなら、はっきりあいさつしたほうがよいです。あいさつをしてダメなことはないです。
■なりたい自分をイメージする
今後仕事でどんなことをしたいか、あるいは5年後、10年後の自分がなにをしていたいかというイメージは、なかなか湧かないかもしれません。しかし、自動的に理想的な人間(あるいは大人、社会人、等々)になれるわけではありません。
なりたい像がなければ、こうはなりたくない像でもよいかもしれません。できるだけ、自分が今後どうなりたいかをイメージし、それに近づくよう行動してください。*3
■業務を通じて学べることには限界がある
業務から学べることはたくさんありますが、それにも限りがあります。また、そこにいる人たちがあなたに教えられることにも限りがあります。自分の伸ばしたいもの、興味の持てるものは、仕事プライベートかかわらず掘り下げて積極的に身につけ、自分の強みにしてください。
■本を読む
本は手軽に学ぶのに最適な手段です。直接話を聞けないような人物の考えや知識を、本から学ぶことができます。実務から学び、ひとから学び、本から学んでください。
■「したことがある」かは重要ではない
したいことが仮にあったとして、したことがないからといって遠慮しないでください。「自分がしたいか」や「こうしたらよくなるというイメージ」が持てるかが重要です。
興味をもって「したいこと」をすることが、もっとも自発的な学習を促し、自走、成長できる可能性が高いのです。
■専門用語は使わない
難しい言葉や専門用語を使うことに慣れないください。誰にでも伝わりすぐに理解できる語彙を選ぶことが一番です。
■残業はしない
「みんなまだ仕事しているから残ったほうがよいかなぁ」といった惰性で残業をする必要はありません。また、残業し長時間仕事をすることが仕事熱心で優秀な人間であるという勘違いはしないでください。あなたの時間は有限であり、貴重なものです。大事にしてください。
決まった時間内に迅速かつ的確に仕事を収めるのがベストだとわたしは考えます。最高の仕事をしましょう。
メンター自身が行うこと
以上は、新人さんに直接伝えるために意識した項目です。
メンター自身が行ったほうがよいと考え、意識的に取り入れたものもあります。
■なるべく権限を付与し、任せる
仕事が単調で範囲が狭いと、その範囲に慣れてしまいます。そのため、わたしは通常よりかなり早い段階で(わたしの監督付きという限定ではありますが)ちょっとオーバー気味な範囲の権限を付与し、いろんなことをやってもらいました。
これは「できることがたくさんある」ことを示しつつ、「どのようなことが得意なのか」を見るためのものです。どんな範囲のことができるのか、自分にはこれはできそうだ、ということを直接試しながらイメージしてもらいます。
■特性を引き出す
問題に対してどのように解決したらよいかについて質問し、考えてもらいます。どのような視点、考え方、手段で問題を解決するかをみると、得手不得手が浮き出てきます。
得意なものについては、積極的に意見を聞き出し、具体的な解決案をあげてもらうことで、その人自身にある「引き出し」を知ることができます。無意識の知識は、その人自身の特徴を顕著に表出させます。得意なところを引き出しつつ、そこを伸ばすようアドバイスします。
苦手なものについては、どのように苦手なようだと客観的なアドバイスを行ったうえで、克服できるよう繰り返し指摘、修正します。
また多様な質問を行い、メンティー自身の考えや興味、悩みなどに充分耳を傾け、本人の持っている(あるいは求めている)答えを言語化できる手助けをします。
■質問する機会をつくる
相手から質問してもらう機会をつくり、疑問や気づきを発する(質問する、報告する)ことを習慣づけます。質問してもらうことは、とても大事なことです。
とくに、気づいた疑問等の中でも筋のよいものについては「その質問はよい質問である」ことを伝えながら、よい視点をもつことや問題解決に関する能力を養います。
■仕事はおもしろい
基本的に、仕事はおもしろいものです。教える側がたのしく仕事をしていないと、教わる側も割り切った「仕事」として仕事をしてしまいます。
「仕事」としての業務的な知識や技術の育成だけでなく「こういう風に手を加えたらこういう結果になり、よりよくなる」といった納得感のある工程を散りばめながら、改善するたのしさなど、仕事自体にあるおもしろみを伝えます。
おもしろみは勿論仕事そのものだけでなく、職場環境や人間関係にも左右されるものですが、できるだけ純粋に「仕事はおもしろい」ということを伝えたい気持ちがあります。
メンター側の感想
新人教育をやりはじめてすぐに、OJTを通した実務訓練だけでなく、汎用性のある考え方や指針となるものをちゃんと伝えたほうがよさそうと思った以外、これといった経験や用意があったわけではない*4のですが、終わってみると自分が伝えたかったことが結構明確に分かり、おもしろかったです。
仕事自体に興味を持ってもらい、「生活のため」以外の価値を見出し、おもしろがりながら自走できるようになってもらえると最高だなと考えています。
自分がメンターになることで、自分自身の考え方(教える立場としての個性)を再認識できたり、メンティーから教わることも多くありました。わたしが担当した3週間が、少しでも役に立っていることを願っています。
今のところまた誰かのメンターになる予定はないけど、たのしかったのでまたやりたい。
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※担当が終わったあと、遅ればせながら図書館にあったコーチングの本を読んでみました。いい本なのでオススメです。