フィギュアスケートの世界選手権が30日、米ボストンで開幕した。2014年秋に現役を引退後、解説者として初めて現場に戻ってきた、10年世界王者でバンクーバー五輪銅メダルの高橋大輔さん(30)に今大会の見どころ、フィギュアスケートの楽しみ方を聞いた。
■羽生、普通に演技すれば優勝も
14年ソチ五輪後、4回転ジャンプを跳ぶ人が増えると予想していたが、種類が増えるとは思わなかった。1990年代末から2000年代初頭の4回転ジャンプ時代後、採点方式が変わり、ジャンプの技術は少し後退した分、スピンもステップもスケーターのトータルパッケージとして必要という時代が来た。そのパッケージが当たり前になって、次なる進化として4回転ジャンプを再び跳ぶのが当たり前になっている。その先駆けで、定着させたのがパトリック・チャン(カナダ)。彼に勝とうと頑張ってきた選手たちの努力が今、花開いたんだと思う。
羽生結弦(ANA)は普通に演技すれば優勝すると思う。波が少ないから多分、大丈夫。昨年王者のハビエル・フェルナンデス(スペイン)、11年から世界選手権を3連覇したソチ五輪銀メダリストのチャンも力を出し切れば強い。チャンは2月の四大陸選手権がよかった。あれ以上の演技を見せられるのか、と個人的に注目している。シーズン後半に強いソチ五輪銅メダリストのデニス・テン(カザフスタン)も要注意。4月から中京大に進学する初出場の宇野昌磨には、4回転ルッツをはじめ、ショートプログラム(SP)とフリーで合計6度4回転を跳ぶ金博洋(中国)には勝ってほしい。そして表彰台に乗ってくれればいいと思う。
■男子、細かなミスが勝負分ける
昌磨はスケーティング技術が高いので、細かいミスがなければ、演技構成点が伸びるので勝負できると思う。会場の空気をつかむ何かも持っている。僕は彼の体の使い方が好き。腕のしなりは力が抜けているのにだらしなく見えない。こういう選手はなかなかおらず、パッションもある。まだ18歳、「これが宇野の表現」というものが見えない部分があり、ジャンプがもう少しきれいになれば全体がスムーズに見えると思う。今大会では4回転ループを断念したと聞いた。ジャンプに特化してくる選手が出てきている今、昌磨のジャンプは決して悪くなくても劣って見えてしまう可能性があるから、演技で勝負するのも分かる。ジャンプの難度を下げて勝負するというのは、ある程度ジャンプに自信があるからできることでもある。