「イセッタ」の復活を思わせるマイクロEVが登場

1950年代のマイクロカー「イセッタ」を思わせるEV「Microlino」が登場した。最高時速は約100km、1回の充電で約100~120kmの距離を走ることが可能で、2018年の生産開始を目指している。

IMAGE COURTESY OF MICRO MOBILITY SYSTEMS
TEXT BY ALEX DAVIES
TRANSLATION BY MAYUMI HIRAI/GALILEO

WIRED (US)

Micro Mobility Systems社は、3月に開催された「ジュネーヴ・モーターショー」で、「Microlino」のプロトタイプを披露した。

Microlinoは、一見すると、クラシックなマイクロカー「イセッタ」とよく似ているが、完全な電気自動車(EV)だ。

Micro Mobility Systems社は、電気スクーターの生産で有名なスイスのメーカーで、都会での移動をつくり変えることを目指している。

イセッタは、1950年代にイタリアのIso Autoveicoli(イソ・アウトヴェイコーリ)社が生産していたマイクロカーだ。BMWは1955年からライセンス生産を始めた

当時のドイツの製造業全体がそうだったように、BMWも経営状態が悪かったが、12馬力で300kg強のイセッタは人気を集め、1955年から1962年までの間に同社が製造したイセッタは16万台を超えた

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2006年にコーネル大学の駐車場で撮影されたイセッタ。Photo by Ted Fu/Flickr

2008年には、BMWがイセッタをEVとして復活させる計画があるという噂が流れたが、計画は結局中止になった。同社は、プラグイン・ハイブリッドのスポーツカー「i8(日本語版記事)」プロジェクトに向かったからだ。

一方、Micro Mobility Systems社は、i8などの方向性に異議を唱えた。同社はカタログ(PDF)のなかで、BMW i8やポルシェ・パナメーラといったクルマの製造コストは、「資源の完全な無駄を表しています。過剰で、非常に複雑で、高価すぎます」と述べている。

個人の移動を本当の意味で効率的にするには、車体を小さくして資源の消費を減らし、顧客に要求する金額も少なくしなければならない、と同社は主張しているのだ。

Micro Mobility Systems社のヴィム・アウボーターは、2015年はじめに新しいEVのデザインに取りかかった。チューリヒ応用科学大学の学生やデザイン会社Designwerk社と協力した結果、往年のイセッタによく似た、やや大きく丸みの強くなった車が誕生した。

最大の違いは、BMWイセッタの247ccエンジン(燃費はリッターあたり25km)を、15kWの電気モーターに置き換えた点だ。Microlinoの最高時速は約100km、1回の充電で約100~120kmの距離を走ることができる。重量はわずか約400kgだ。

Microlinoはイセッタと同じ「クアドリ・サイクル」(軽四輪車)に分類されており、一般乗用車向けの衝突試験などをパスする必要はない。

Microlinoは2018年の生産開始を目指しており、価格は9,000ドルから1万3,500ドルの間になる予定だ。一般消費者に売るには難しいかもしれないが、都市生活を楽しくしてくれるクルマであることは間違いないだろう。

なお、ルノーは2人乗りの都市用超小型EVとして「Twizy」を販売している(最高速度45kmに抑えたタイプは、フランスでは14歳から運転できる(日本語版記事)。米国では利用が限定され、日産のエンブレムが付いている)。さらに、トヨタの完全にファンキーなEV「i-Road」(日本語版記事)は、パワーがやや劣るとはいえ、Microlinoよりもさらに小さい(生産開始は未定)。