優秀なベテラン社員が会社を去るとき、
その知識と経験をいかに引き継ぐか

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優秀なベテラン社員に去られる時、組織はその専門知識をいかにして留めればよいだろうか。退職予定者の知識を継承しながら、正しく送り出すための要諦を示す。


 貴重な人材から退職の意を告げられた組織は、当然ながら、その人の職務上の知識・経験が自社から失われることを心配する。彼らの専門知識を自社に留めるには、引き継ぎをどう管理すればよいだろうか。誰を関与させ、退職日のどのくらい前から引き継ぎを始めるべきなのか。そして、退職する社員から協力を得るには、いかに動機づければよいのだろうか。

●専門家のアドバイス

 多くの企業では退職管理のプロセス(オフボーディング)は、プロジェクトの仕上げや事務処理、退職面接などで慌ただしくなるものだ。サンフランシスコ州立大学の経営学教授で人事管理の専門家、1000 Ways to Recruit Top Talentの著者でもあるジョン・サリバンは次のように語る。「マネジャーは退職する社員に対し、知識を引き継ぐためのレポートを書くよう求めることがありますが、そのための十分な時間がない場合が多いのです」

 一方、ハーバード・ビジネススクール名誉教授で、コンサルティング会社レナード・バートン・グループのチーフアドバイザーであるドロシー・レナードはこう指摘する。「退職する社員が持つ自組織固有のノウハウを取り逃す、という問題は見過ごされています。特にその社員が“ディープ・スマート”、つまりビジネスに不可欠で、経験に基づいた専門知識の持ち主である場合、問題は深刻です。その人は組織固有の知識をたくさん蓄えており、もはや代わりが利かないほど貴重な存在になっているのです」

 ただし幸いにも、知識継承を最優先に据えて取り組めば、そうしたノウハウの多くを維持できる。「退職する社員をそっくり真似することはできません。でも、その人を優れた意思決定者たらしめている行動、思考パターン、作業プロセスを、明らかにすることは可能です」(レナード)

 その方法は以下のとおりである。

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