○「副作用」の立証ポイント=子宮頸がんワクチン集団訴訟

 子宮頸(けい)がんワクチンによる「副作用」が、法廷で争われる見通しとなった。接種と副作用との因果関係を認めた科学的知見は無く、どの水準までの立証が求められるかが裁判のポイントとなりそうだ。

 子宮頸がんワクチンを販売するメーカー2社によると、両社の製剤はいずれも約130カ国で承認されている。定期接種化した国も多い中、集団提訴に至れば「日本が初めてではないか」(厚生労働省幹部)という。

 女性らが訴える症状は多岐にわたるが、ワクチンが原因となったことを示す研究結果は無い。日本で症状を訴える声が多い要因について、同省研究班は今月、特定の遺伝子を持つ人に影響が出やすい可能性を示唆する結果を発表した。ただ同省幹部は「サンプル数が少なく、データの偏りが排除できない」と指摘する。

 世界保健機関(WHO)は昨年12月、安全面の問題は見つかっていないとした上で、「不十分な証拠に基づく政策決定は真の被害をもたらす」と接種勧奨を控える日本を名指しで批判する声明を出した。日本産科婦人科学会も勧奨再開を求めている。

 放射線と疾病の因果関係が争点となった原爆症訴訟など、厳密な科学的証明まで求めず、「一般人が疑いを差し挟まない程度の証明ができれば良い」とした判例もある。弁護団には医療訴訟に精通したメンバーが名前を連ねており、WHOなど権威による「お墨付き」を前に、どこまで立証のハードルを下げられるかが注目される。 

[時事通信社]

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