「名門」がなぜ?
昨年12月まで東証2部に上場していたLCAホールディングスの上場廃止を巡って、トヨタ創業家に連なる東京の豊田D&Cが、福岡を拠点とするホテル・レジャー運営のアライアンスグループに訴えられるというトラブルが発生している。
アライアンスグループは、昨年5月、豊田D&Cに上場の継続を条件に約3億円を融資したが、LCAは12月1日付けで上場廃止となった。その場合は返済が条件だったので、「豊田D&Cは約束を履行せよ」という訴えである。
当時、豊田D&CはLCAの実質的な経営権を握る筆頭株主だったが、「豊田家」の看板にもかかわらず、経営は厳しく、むしろLCAが重荷になって売却先を探していた。そこに登場したのが、アライアンスグループだった。
両者の争いは、裁判の結果を見届けるしかないが、指摘すべきは「豊田家」を看板に掲げて話を進めた豊田D&Cの社会的責任である。ハイエナやハゲタカが潜むというLCAのような“死に体企業”のマネーゲームの世界に、“名門”の豊田D&Cが突っ込んでいったのはなぜか。
足跡を辿ってみよう。
LCAという社名は一般には馴染みはないが、1964年創業のベンチャーで、コンサルティング会社の草分けだ。02年には上場を果たして隆盛を誇ったものの、経営多角化の失敗、ビジネスモデルの崩壊などを要因に業績を悪化させ、15年5月期決算では、売上高2億800万円、経常損失が4億9600万円と、上場の意味が問われる企業のレベルに落ち込んでいた。
最近、話題になったことといえば、経歴詐称の国際コンサルタント、ショーン・マクアードル川上氏が、その業務をハーバードMBAやパリ第一大などの留学ではなく、高卒の資格で入社したLCAの前身の日本エルシーエーで学んだと告白したことぐらいである。
証券市場で上場していることだけが“取り得”の企業を「ハコ」と呼ぶ。空箱で中身がないという意味では蔑視だが、上場企業オーナーの座を狙う野心家やマネーゲームの道具にしようという証券市場のハイエナにとっては都合がいい。時価総額が10億円以下なら、数億円で支配権を握ることができるし、「ハコ」に業績を向上させる材料を投入することによって、株価を操作できるからだ。
LCAにとって、その材料が豊田家だった。
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