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 女子中学生(15)が約2年間、行方不明になっていた事件で、逮捕状が出ている寺内樺風(かぶ)容疑者(23)が通っていた千葉大学が言及した「卒業取り消しの検討」が波紋を呼んでいる。卒業式の後でも、さかのぼって卒業を取り消すことはできるのか? そもそも、逮捕されてもいない段階で検討していいのだろうか?

 「事案を勘案し、卒業の取り消しの可能性も含めて検討していく予定です」。寺内容疑者の身柄が確保された28日、会見を開いた千葉大の関実・工学部長は、集まった報道陣にこう説明した。

 寺内容疑者は2011年に千葉大工学部情報画像学科に入学し、12年10月から1年間の休学期間を挟んで計5年間、在籍。インターネット上の商品評価の分析を研究し、関学部長によると、成績は「中くらい」で、きちんと大学に通う「礼儀の正しい学生」だったという。

 千葉大は学則で、在籍する学生は重い順に「放学」「停学」「戒告」の3種類の懲戒処分にできると定める。懲戒の規程では「学内外で重大な非違行為を行った場合」は停学にできるとされる。

 そこで突き当たるのが卒業の問題だ。女子中学生が公衆電話から通報して保護され、事件が急展開する4日前の23日、千葉大では卒業式があり、寺内容疑者にも卒業証書が授与されたばかり。会見で大学側は、事件があったとされる約2年前にさかのぼって「停学」にし、卒業に必要な「4年」の修業期間に満たないことなどを理由に卒業を取り消せないか、学内の懲罰委員会で検討するとした。

 ただ、卒業取り消しに関する規定は学則にはなく、卒業後に懲戒処分をした例も過去にはない。関係者によると、学内でも「さかのぼって懲戒するのは無理筋ではないか」との異論が出たという。

 そこで学内で可能性が浮上しているのが、「卒業の認定は、学年の終わりに学長が行う」と定めた別の学則の適用だ。いつをもって「学年の終わり」とするか、学則では「学年は4月1日に始まり、翌年3月31日に終わる」と明記。卒業式の後でも3月31日までは学長の権限で卒業認定を見直せるという理屈だ。

 大学関係者によると、学内には「人材育成機関として勉強ができたからそれで卒業、でいいのか」といった意見があるという。28日以降、大学には「すぐに卒業を取り消せ」「学業はきちんとやったんだから、卒業を取り消すのはおかしい」といった賛否双方の意見が電話やメールで数十件寄せられたという。広報担当者は「どんな対応を取るか様々な観点から慎重に検討している」と話す。