最初のiPadが出たとき以来、「画面サイズ」は重要な問題だった。6年前のあのころのことを覚えている人はどれくらいいるだろうか。
iPadが「iPhoneと同じiOSを搭載し、できることもほぼ同じ」という事実が分かったとき、機能や性能を重視する人々は、iPadを「ただの大きなiPhone」とこきおろしていた。
だが、どんな情報機器もそれを使うのは人間というアナログな存在。表示される写真や文字の大きさ、手に持ったときの重さなど、身体性は無視できない要素であり、2010年に書いた「サイズが異なれば体験も異なる」という論に、今となって異論を挟む人はいないだろう。
6年前に初代iPadが登場し、その後Appleは携帯性が魅力のiPad miniをラインアップに加え、2015年にはイラストを描いたり、写真をレタッチしたり、移動先でムービーを編集するプロフェッショナルたちが、画面サイズでもパフォーマンスでも妥協せずに済む、大画面の12.9型iPad Proをリリースした。
そんなAppleが、2016年の最初に発表したのが、iPadの出発点の画面サイズでもあり、幅広い用途に応え、最も柔軟性に富み、軽さと使いやすさを両立した9.7型のiPad Proだった。
9型クラスの画面は、1984年の初代Macに通じるサイズでもある。iPad Proを縦に構え、FaceTime機能でテレビ電話をすれば、相手の顔がリアルに近い大きさで映し出されたりもする絶妙なサイズだ。
今、iPadは学校やビジネスの現場でもどんどん使われ始めているが、これらの利用で中心となっているのは9.7型の画面サイズだ。通学カバンにも入りやすく、学校で班ごとに分かれたグループワークをしたり、会議室で写真やプレゼン資料を見せるにも、iPad miniだと少し小さいが、このサイズならなんとか使える。それでいて、どんなカバンにでも入るし、A4サイズの資料と一緒に持ち歩くにも適しており、さすがによく考えられたサイズだと改めて思う。
そんな9.7型サイズのiPad Proが登場した。これはまさに今年、本命のiPadになることだろう。
9.7型iPad Proは、形こそiPad Air 2に似ている。しかしまったく別の製品だ。
絶妙なサイズと大まかな外観だけは確かに共通するが、ディスプレイの仕様も異なれば、カメラも、スピーカーも、iPad Airのそれとはかけ離れている。それを象徴するように、新iPad Proでは、iPad Air用のアクセサリーの多くが利用できない。
Lightning端子につなぐ電気的なアクセサリーはほとんどが流用できるのだが、カバーなどのアクセサリーはほぼ互換性がない。
Apple純正のiPad Air用スマートカバーも、内蔵マグネットの位置などが変わっているようでうまく閉じられない(無理矢理閉じてもスリープ状態にならない)。背面カバーは無理矢理押し込めば入らないことはないが、そうするとせっかく4つあるスピーカーをふさいでしまう。
iPhone SEが4年前のiPhone 5のアクセサリーをそのまま使えているように、最近のAppleは意味があれば古いアクセサリーを使い続けられるよう配慮している。しかし、今回はただ大きさが同じというだけで、まったく異なるコンセプトの製品ということで、あえて互換性を完全になくしたのだろう。
もちろん、12.9型のiPad Proともサイズ的に互換性がない。12.9型用iPad Proのスマートキーボードを9.7型iPad Proに無理矢理取り付けてみたところ、使えるには使えたものの、実際にそうした組み合わせで使う人はほとんどいないだろう(不思議なことに9.7型版スマートカバーは12.9型で使えなかった)。
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