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オタク文化と宗教、似ている背景探る(1/2ページ)

2016年3月25日付 中外日報(時事展描)

漫画やアニメなどある種のサブカルチャーに耽溺する「オタク」について、宗教研究の立場から議論するワークショップ「オタクにとって聖なるものとは何か」が先月、東京都文京区の日本女子大で開かれ、若手の研究者4人が登壇した。作品中に宗教性を見いだそうとする従来の研究方法に対して問題点が指摘され、彼らの生き方と信仰を結び付けるなど多様な観点から議論を深める必要性が示唆された。(甲田貴之)

行動や世界観を宗教用語で表現

女子高生が登山を楽しむアニメ『ヤマノススメ』の「聖地」となっている埼玉県飯能市の真言宗智山派観音寺。白い象の像の前にはアニメのパネルと絵馬掛所が設置されている
女子高生が登山を楽しむアニメ『ヤマノススメ』の「聖地」となっている埼玉県飯能市の真言宗智山派観音寺。白い象の像の前にはアニメのパネルと絵馬掛所が設置されている

近藤光博・日本女子大准教授(宗教学)が中心となって活動している研究会が主催。近藤准教授は開催のきっかけについて、アニメや漫画好きの女学生の話を聞いていると作品などに対する情熱に宗教性を感じるとして、「オタク」文化が宗教と似ている背景を探るのがワークショップの目的と説明した。

「オタク」と呼ばれる人々は自らの行動や世界観を宗教用語で表現することがある。ファン同士の会話やインターネット上で、キャラクターや作品に熱狂する人を「信者」と呼び合い、作品を褒める際には「神作品」と評する。また、近藤准教授は「アイドルのコンサートで、ファンが奇抜な衣装をまとい、息を合わせて独特な踊りを披露する姿はまるで宗教儀礼のようだ」という。

今井信治・東京家政大非常勤講師は、アニメ作品のロケ地などをファンが巡る「聖地巡礼」と称する活動をテーマに発表。アニメ『あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。』の舞台となった埼玉県秩父市の事例を分析し、「作品中に登場人物がジュースを飲むシーンがあるが、巡礼者は現地のくずかごの空き缶を見て、そのジュースかもしれないと想起するなど、聖地巡礼の根本にはアニメの世界を現実世界で感じる拡張現実的発想がある」と話した。弘法大師が掘ったとの伝説がある井戸を信仰の対象とする各地の弘法清水をうかがわせる。