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 旧日本軍の細菌戦部隊731部隊に関して市民団体が29日に開いた講演会について、県が後援申請を断っていたことが明らかになった。尾﨑正直知事は30日の定例記者会見で「当該の部署が自分の所管する事業に該当しないと判断した」と説明。その上で「後援しないという判断は果たしてどうだったのかなと思っている」と疑問を呈した。

 尾﨑知事は「(後援申請を判断した)地域福祉部の所管に照らせば当該部署の事業に該当せずということだったのかもしれない。結果としてセクショナリズムに陥ってしまったのではないか」と原因に言及。県の後援申請取り扱い要領では部署ごとに後援申請の可否を判断しているが、県庁全体の視点で判断するよう改めるという。

 また、尾﨑知事は「平和行政の推進は県の職務であり、戦争の歴史に学ぶことが県の施策の推進に寄与しないことはあり得ない。公益に資する議論の場の確保を我々は応援すべき立場にあるのだろう。自由な議論の場が確保されていれば、主催者の見解が中央政府の見解に反するから後援しないとするものではないと考えている」などと述べた。

 尾﨑知事が記者会見で説明したのは、高知新聞が29日付朝刊で「731部隊講演 県が後援拒否」と報じたため。同紙は「県や政府の考え方に合わないから後援しない、というのは問題だ」とする有識者の談話も掲載した。

 講演会は「歴史から学ぶ731部隊と日中戦争」と題し、高知市立自由民権記念館で開催。中国・侵華日軍第731部隊罪証陳列館の館長が現地に残る部隊の建物跡などについて説明した。主催は「平和資料館・草の家」(高知市)や有志の大学生らでつくる「平和のための歴史ゼミナール」。主催者は2月12日付文書で県と高知市へ後援を申請、市は19日付で承認した。

 県によると、県広報広聴課が窓口として申請を受けた。同課は、戦没者遺族への給付金支給などを担う地域福祉部に後援の検討を依頼。同部は「歴史に関する内容のため」として、さらに文化生活部に検討を打診した。文化生活部は昨年末、草の家などが開いた731部隊関連の写真展の後援を決定していた。

 ところが、文化生活部は「写真は芸術の一分野ということで後援したが、平和を考える今回のテーマは所管範囲とずれる」と地域福祉部に返答。地域福祉部は「所管課がなく、県の施策と関係がない」と判断。県の後援申請取り扱い要領にある「県の政策、施策の推進に寄与する」との条件に該当しないとして、26日付で非承認の通知を主催者側へ郵送した。