最新の重力地図で描いたでこぼこの地球

2011.04.07
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ESAのGOCE衛星から送られてきたデータを元に作成した地球の重力場モデル。

Image courtesy ESA/HPF/DLR
 押しつぶされた粘土の塊ように見えるこの色鮮やかな物体は、実は史上最も正確な地球重力場のデジタルモデルなのだという。 先週公表されたこの重力地図はジオイドと呼ばれるもので、欧州宇宙機関(ESA)の観測衛星GOCE(Gravity field and steady-state Ocean Circulation Explorer)により作成された。

 一般に、地球は比較的滑らかな球体だとたいていの人は考えている。しかし地表の物質は均等に分布しているわけではなく、海水も風や海流により常に移動している。

 ジオイドとは、地球の物理的な外見ではなく重力を捉えた姿であり、平均海水面を地球全体に延長したと仮定した場合の形を示すと、コロラド大学の地球物理学者、ジョン・ウォー氏(John Wahr)は説明する。「例えばデンバーが海抜1600メートルだと言うとき、それは基本的にジオイドから1600メートルの高さにあるということを意味する」と、ウォー氏は電子メールで述べた。

 地球物理学や測地学ではジオイドを「重力の等ポテンシャル面」とも呼ぶ。地球の地殻は均一ではないため、地表での重力も地点によって異なり、ジオイドにも画像のような起伏が生じることになる。

 GOCE衛星はESAにより2009年3月に打ち上げられた。高度260キロ付近の低極軌道を周回している。高精度重力センサーを用いて場所による地球の重力場の変化を測定し、打ち上げ以降、軌道を1万回以上周回する間にデータを蓄積してきた。

 こうしてできあがったジオイドを用いれば、地球物理学者は地球の内部構造を詳しく解明できると、カリフォルニア州パサデナにあるNASAのジェット推進研究所(JPL)の測地学者、マイケル・ワトキンズ氏は話す。

 重力地図は海洋学者にとっても大きな意味を持つ。海水は、風や海流によって1つの場所から別の場所へとかき寄せられるからだ。

「何らかの方法で(例えば衛星のレーダー高度計を使って)海洋表面の地図を作れたなら、その海面とジオイドとの差を見れば、海流の方向と大きさを推定できる」とコロラド大学のウォー氏は言う。「ジオイドが正確であればあるほど、精密な推定ができる」。

 ウォー氏とワトキンズ氏はGOCEチームのメンバーではないが、NASAの同様の衛星、GRACE(Gravity Recovery and Climate Experiment)のプロジェクトに参加している。GRACEはGOCEよりも高い軌道を回っており、作成される地球重力地図の精度はGOCEよりも低い。

 だが、解像度が低い代わりに、GRACEは時間の経過を捉えることができる。これによりNASAは、移動する洪水の水や融解する氷河による地球重力の変化を追跡できるのだ。

「GOCEが重力場の高解像度スナップショットだとすれば、GRACEは中解像度の映画だと言える」とJPLのワトキンズ氏は説明する。「スナップショット」をよく知れば知るほど、映画が進む中での変化を正確に見いだすことができるため、2つの衛星は互いに補い合う関係にあるという。

 例えば、先月日本を襲った壊滅的な地震に関係するようなプレートテクトニクスのプロセスを理解するために、ジオイドの研究が役に立つ可能性もあるとワトキンズ氏は指摘する。

「巨大地震は、重力場に変化をもたらすほどの質量の移動を引き起こす。このような重力場の変化は、地震のメカニズムについて多くのことを教えてくれる。また、とくに海底地震では(地殻を)直接観察することが難しいため、ずれや隆起がどの程度起こったかを重力場の変化から知ることができる」。

Image courtesy ESA/HPF/DLR

文=Richard A. Lovett

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